ブックタイトルメカトロニクス8月号2021年
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メカトロニクス8月号2021年
MECHATRONICS 2021.8 ????無となった現象は、まさに農作業の機械化へ転換したことを象徴的に示したものでもあった。 1950 年代には、電気洗濯機や電気釡などの家電製品が普及した時代でもある。米国の家電による便利な生活が日本でも実現し始めた頃である。このような時期に、農業でも機械化の機運が高まった。 1961年には、農業従事者と第二次産業従事者の間の所得・生活水準の格差を是正するために「農業基本法」が制定され、農業生産性の向上と農業構造の改善が謳われた。さらに、財政措置として「農業近代化資金助成法」が制定され、長期・低金利の資金導入の道が開かれ、農業機械導入の促進剤となった。 このように農業機械化のための基盤の整備が進むに併せて、歩行型の耕運機やバインダなどから、さらに労働を軽減化する乗用トラクターやコンバインなどが開発・実用化されていくことになった。 関東の都会の中でも機械化された農機具を目にするようになった(写真1)。 クボタは過去の経験則から、「一人当たりの国内総生産(GDP)が2,500ドルを超えると農業の機械化が始まる」と言われる。 マレーシアが1991 年、タイが1995 年、フィリピンが2012 年、ベトナムが2018 年、ラオスが2019 年にそれぞれ2,500ドルのGDPを達成している。そしてカンボジア、ミャンマーなどが2,500ドルを目指して後に続く状態である。当然ながらこれらの国の農業においても機械化が進展していくと推察される。 さて、日本の話しに戻すと、農業機械の成長期とも言われる時期は、日本の高度経済成長により、農村部の労働力は第二次産業、第三次産業に流出し、多くの兼業農家が出現することになった。 そして機械化による合理化・軽作業化が必要不可欠となり、機械化が遅れていた田植機も、1965 年頃には実用化され、耕運、田植え、管理、収穫、乾燥、調製の稲作機械化の一貫体系が完成した。この結果、短い年間労働作業時間での稲作経営が可能となった。兼業農家も大きな助けとなった。 農業従事者の高齢化・女性化に伴い農業機械の多様化が進み、農業機械の改善と普及が促進されたとも言える。 普及してきたトラクター、田植機、コンバインは、高性能化・耐久性向上だけでなく、メカトロニクスを応用した易操作性の向上、居住性の改善、安全対策など、農業機械はめざましい技術発展を遂げた。 また、1984年、租税特別措置法により「中小企業新技術体化投資促進税制(メカトロ税制)」が施行され、税制上の優遇措置がとられたことにより、メカトロ化された農業機械の普及が促進された。 稲作用機械の一層の大型化、高性能化の技術進展とトラクターの輸出増もあって1986年に二度目の生産ピークを迎え、1988 年に2 年連続の生産者米価の引下げと農産品8 品目の輸入自由化などが重なり、農業の規模拡大専業と第二種兼業へと二極化が進展した。 日本人の食生活の変化もあり、米の消費量が低下する一方で、貿易自由化の流れは農産物も例外ではなく、米の輸入自由化に対する外的圧力が強くなった。 大凶作で米緊急輸入の事態となった1993年(平成の米騒動とも言われる)、ガットウルグアイラウンド農業合意による米のミニマムアクセスの受け入れによって、国内の米の生産コストのみならず流通コストの見直しを迫られ、大幅低減と稲作経営規模の拡大が急がれる事態となった。 1999 年には「食料・農業・農村基本法」が制定され、「食料の安定供給の確保」、「農業・農村の多面的機能の十分な発揮」、「農業の持続的発展」、「農村の振興」という基本理念を掲げ、多面的機能を重視して、中山間地農業の維持と農地の有効利用の促進によって食糧自給率の維持から向上をめざす基本方針が定められた。3. 農業機械の市場推移 日本農業機械工業会によると2004年以降の農業機械の推移は図1 のようになる。5,400 億円の市場から現在は4,300億円の市場規模となっており、輸出比率は30~40 %で推移している。 益々、厳しくなる農業経営に対して必要なことと残された道は、農業機械の技術開発である。大型化、高性能化だけでなく、作業の複合化や省略化への対応、さらには小型で単純で、低価格化といった方向の開発も重要と想定される。 稲作をはじめとする土地利用型農業においては、さらなる生産性の向上、立ち後れている野菜・果樹作の作業や生産条件が不利な中山間地域での機械化、農産物の高品質化・高付加価値化は勿論のこと、環境問題・安全問題に対応した技術開発に業界挙げて取り組むことが大きな課題となっている。 定年を迎えた人達の新たな趣味として家庭菜園などを楽しむようになり、家庭菜園を楽しむ層が最大、200 万人に達したとも言われる。家庭菜園用の家庭用小型耕運機の需要が期待されている(写真2)。 オフィスの世界で業務用の日本語ワープロやスキャナが、その後、小型化・軽量化して家庭用として普及したと同じように農業機械も小型化の取り組みも需要を喚起する意味でも重要ではないかと思う。 農業発展の歴史において、農業機械化技術が果たした役割は極めて大きいものであり、さらなる発展することを願っているのは筆者のみならず読者も同様ではないかと思う。写真1 農業の機械化(横浜市泉区) 写真2 小型耕運機図1 日本の農業機械の出荷金額の推移(日本農業機械工業会)