ブックタイトルメカトロニクス7月号2021年
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メカトロニクス7月号2021年
MECHATRONICS 2021.7 452. ねじの産業発展と市場規模推移 生駒山の流水を利用した水車の力を歯車の動力を使い、江戸時代後期ころから伸線業が大阪側の山裾で発達した。太い鉄線を伸線機と呼ぶ機械をいくつも通し、徐々に細く長くする。針金などの線材を造る技術はやがてねじや釘、ボルト、ナットなどの製造へと発展した。 関西はねじの材料となる線材を扱う高炉メーカー、加工メーカーが集積しており、阪神工業地帯の顧客に納入するねじメーカーやねじ商社などが昭和初期から集積し始めた。大阪市西区から東大阪市にかけて約600?700 社が密集するまでになり、供給の一大産地の一つと言われる。これが関西のねじ産業の一端である。 さて、日本ねじ工業協会がねじの生産量・生産金額の推計を公表している。ねじの日本の市場推移は、図1 のようになり、リーマンショック後に落ち込みはあるものの、現在は6,000億円規模と推計されている。具体的なねじの生産量は、323万トン(2019 年)で生産金額は、9,176 億円(2019年)の規模の推計となっている(図2、3)。そして、財務省貿易統計から算出すると日本から輸出されるねじの輸出量比率は、図4に示すように約10%の規模である。3. ねじの日 モノづくりにおいて欠かす事のできない「ねじ」の重要性を多くの方に知ってもらおうと、日本のねじ製造・販売業者で構成する唯一の全国団体である「ねじ商工連盟」が1975年7月に「6月1日」を「ねじの日」として制定した。「ねじの日」が、この日に制定された理由は、1949 年6月1日に工業標準化法が制定され、日本工業規格(JIS)にねじ製品類が指定されたことを記念したことに由来する。表2 代表的な電子機器に使用されるねじ数電子機器の種類ねじの数マウス1?4本携帯電話4?6本ラジオ6?22 本MDプレーヤー20 本ハードディスクドライブ10?26 本電子レンジ66 本ノートパソコン34?95 本家庭用日本語ワープロ22?103本薄型液晶テレビ15?300本4. 安全・環境対策 産業社会で活躍するねじは特に自動車業界、電機業界、建設業界など、安全性が特に重要視される現場で活用されている。安全面が問われる用途先が多いねじにとって腐食対策は必要不可欠となっている。ねじメーカーでは、耐食性を施した表面処理技術や機能性を付与した製品開発に取り組んでいる。表面処理技術には、めっき塗装、化成処理、高周波、ショットピーニングなどの種類がある。 表面処理において注意が必要なのは、「遅れ破壊」である。遅れ破壊は、めっきや化成処理で金属に被膜を形成する過程で、金属結晶の中に水素が混入し、時間経過後にひび割れや破断する現象を言う。化成処理後に金属をベーキング処理して金属内の水素を強制的に放出する作業が必要となる。 また、欧州の電気・電子機器の有害物質使用制限規制(RoHS指令)で六価クロムの使用が禁止され、ねじの表面処理は六価クロムから三価クロムやクロムフリー化が進展した背景がある。 自動車の軽量化により、軽量化材料を用いる異種材料の締結も増加してきている。異種材料の締結の場合に、電位差がある金属材料の締結で、金属材料内に電流が流れ、腐食が発生する電食も課題となっている。これに対して、ねじメーカーはねじ部品の表面に樹脂でコーティングし、絶縁する方法を採用している例もある。5.ねじの数 電子機器に使用されているねじの数を体系化すると表2 のようになる。1)簡単に結合が出来るねじが多用されている。中には接着剤で止める事例も出てきており、ねじレス化も一方で進展している。6. ねじ業界の課題 若年層が少なく、年配者が多いという逆ピラミッド構造で後継者が不足し、指導者数が少ないという課題を抱えている。 以上、ねじ産業の動向について理解して頂ければ幸いである。<参考資料>1)青木正光、“日本の産業構造の変化にともなう電子 機器分野の話題商品を追う 第16 回 <部品点数と ねじの本数>”メカトロニクス Vol.44 No.10 pp44 ?pp45(2019)カクテルの「スクリュードライバー」の由来・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ イスラエルの石油プラント工事に従事していたアメリカ人が、あまりの暑さに作業現場でウオッカを手近かにあったオレンジジュースで割って飲もうとした。が、生憎と混ぜるものがなかった。そこで工事に使っていた「ねじまわし(英語名screwdriver)」で掻き混ぜて飲んだことから、このカクテルを「スクリュードライバー」と呼ぶようになった。図2 ねじの生産量推移 図4 ねじの輸出量比率図1 ねじの国内市場推移 図3 ねじの生産金額推移