ブックタイトルメカトロニクス5月号2021年

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概要

メカトロニクス5月号2021年

MECHATRONICS 2021.5 43日本の産業構造の変化にともなう電子機器分野の話題商品を追う第35回 <話題商品を支えた日本の標準化活動>して1948年の工業標準化法に基づき制定された日本の国家規格である。 日本での社内標準化はJISの認証制度で促進され、各工業会・協会でJIS規格の原案を作成して標準化が実施されてきた。標準化の主な歩みを体系化すると表1 のようになる。2-2. 互換性の問題 米国で大きな火災事故が発生し、隣の州からも消防自動車が応援で駆けつけた。しかし、折角、駆けつけた消防自動車は残念ながら消火には協力ができなかったという。理由は、消火栓の径が異なり、接続ができず用を足さなかったのである。ここで問題となったのが「互換性」であった。以降、標準化されて州間の「互換性」が解決された。 一方、日本で、互換性で問題となったのはVTRの二つの方式(「VHS対 β」)で始まった互換性競争である。 1975 年にソニーがベータマックス方式のVTRを発売し、その翌年の1976年に日本ビクターがVHS 方式のVTRを発売した。 消費者保護のために通産省が業界標準の一本化を呼びかけたが不調に終わってしまい、1977 年末における双方の色分けは表2のようになった。 結果的には、サイズは大きいものの録画時間でVHSに軍配があがり、以降、VHS 方式に統一される結果となる。このような方式の異なるものが存在すると混乱と二重投資となり、好ましい話しではないと言える。如何に早くから統一化を図るかが重要であるものの、そこには企業の競争原理が働き、熾烈な競争領域となる。 日本企業が絡んだ国際標準を巡る争いで結論の出てないものを含めて主なものをあげると表3に示すような例がある。 方式の異なる製品が存在すると互換性の問題が発生し、消費者は困ることになるので、標準化して統一化を図ることが重要であることを前述した。過去、その統一化に失敗し、後世まで影響している事例の一例を紹介しよう。2-3. 標準化の失敗は後世まで影響 国際標準化は初期段階で統一化に失敗すると、普及してしまった後では容易に統合できず、後世までその利用者に多大の迷惑を与えることになる。2)事例1 <電圧と周波数> 100V、120V、200V、220V、240Vといった家庭用電圧と 50サイクル、60サイクルといった周波数の相違が表4に示すように国によって存在する。 電気の周波数は50Hzと60Hzがあり、日本は、静岡県の富士川を境にして東が50Hz、西は60Hzと異なっている。これは、東が東京電力、西が中部電力となっており、東電の前身の東京電灯が1887年、ドイツAEG製の50Hzの交流発電機を、関西電力の前身の大阪電灯が1889 年、米国GE製の60Hz の発電機を採用したために2つの周波数となった。 電力会社は大正時代には700社以上あり、周波数も様々(25、40、50、60、80、100、125、133Hz)であった。 その後、整理・統合が進み、太平洋戦争が始まる頃までには50、60Hzに統一された。2つの周波数があるのは、日本ぐらいである。 周波数が異なると困るのは主にモータを使う電化製品に影響することであった。(西から東に移転すると企業によっては使用できない電気製品は補償される時代があった) しかし、周波数を制御するインバータの普及により周波数を制御できるようになり、影響は限定的になった。 また、2011年3月11日の東日本大震災の影響による電力不足で電力の融通で足枷になったのが、日本は二分する周波数の違いであった。この大震災で、日本には異なる周波数があることを一般人も広く知ることになった。 早い時期から標準化を配慮した商品開発が重要で、後世に禍根を残さないようにしたいものである。 以上、話題商品を造る上で大事なこととして先ず、社内で標準化をして歩留良く、生産性の高いモノづくりをするとともに新しい電機製品を商品化する場合には互換性があって、消費者に迷惑にならいように配慮するとともに最終的には国際標準化にもち込むことが必要なことを解説した。参考になれば幸いである。<参考資料>1)青木正光、“ 実装技術初心者のための「パスポート」  ?知のインプット/アウトプットのこつ?  第12 回「標準化技法とは?(その1)”  エレクトロニクス実装技術 Vol.31 No.7 pp36?pp41 ( 2015)2)青木正光、“ 実装技術初心者のための「パスポート」  ?知のインプット/アウトプットのこつ?  第13回「標準化技法とは?(その2)”  エレクトロニクス実装技術 Vol.31 No.9 pp34?pp41 ( 2015)年 度標準化の歩み1875年メートル法制定ITU 設立日本、尺・枡・秤三器取締規則制定日本、度量衡取締条例制定日本、度量衡検査規則制定1886年日本、メートル法条約に加盟1890年国際度量局よりメートル原器、キログラム原器を支給1891年国際度量衡制定1906年IEC の準備委員会を開催1908年第1 回 IEC 会議開催(東芝の創業者の一人である藤岡市助が日本を代表して出席)1910年日本電気工芸委員会(現 電子情報通信学会)がIECに加盟1919年日本、度量衡に関する調査会発足1922年日本、日本標準規格(JES)第1 号「金属材料杭張試験片」を制定1924年日本、呉工廠で標準化されたリミットゲージを導入し、高生産性の工場となる1925年日本、メートル法実施1947年ISO 設立1949年工場標準化法施行し、日本工業規格(JIS)の第1 号が制定される1952年日本、計量法公布(尺貫法からメートル法へ)日本、日本工業標準調査会がISOに加盟1953年日本、日本工業標準調査会がIECに再加盟1959年日本、計量法完全実施1973年第1 回 IECQ会議を開催1982年国際電子部品品質認証業務を開始1990年IEC 北京総会でTC91(表面実装技術委員会)の発足が承認され、日本が幹事国となる1995年貿易の技術的障害に関する協定(WTO/TBT)の発効によって、ISOやIECなど国際規格を基礎とすることが義務付けられた2001年中国がWTOに加盟し、巨大マーケット参入により国際標準化の重要性が再認識されるようになった2010年IEC / TC91の中に日本からの提案で、部品内蔵技術を扱うWG6 Device Embedded Substrateを創設2019年日本工業規格(JIS)の名称から日本産業規格(JIS)に変更陣 営 企業名β陣営ソニー、東芝、三洋電機、日本電気 HE、富士通ゼネラル、パイオニア、アイワVHS 陣営 日本ビクター、松下電器、日立製作所、三菱電機、シャープ、赤井電機国住宅用電圧周波数(V) 50 Hz 60 Hz日本 100 / 200 ○ ○米国 120 ー ○カナダ120 ー○ブラジル127 / 220 ー○韓国110 / 220 ー○フィリピン120 / 220/ 230 ー○チリ220 ○ ー欧州イギリス230 / 240○ ードイツ127 / 230フランス127 / 230フィンランド120 / 230アフリカ220 / 230/ 240 ○ ー時 期 製 品統一後の方式1980年代ビデオVHSVHS(JVC) vs ベータマックス(SONY)1990年代携帯電話通信方式GSMPDC(NTT DoCoMo) vs GSM( 欧州メーカー各社)2000年代次世代 DVDBDブルーレイディスク(BD)(ソニー、パナソニック) vs HD DVD(東芝)2010年代スマート家電などの通信方式?エコーネットライト(三菱電機、東芝など) vs SEP 2.0(GE)電気自動車の充電方式?ChaDeMo(日産、三菱など) vs コンボ(General Motors、Volkswagen)表1 標準化活動の歩み表2 VTRを巡る陣営表3 国際標準化を巡る争い表4 各国の電圧と周波数の採用例