ブックタイトルメカトロニクス4月2021年

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概要

メカトロニクス4月2021年

MECHATRONICS 2021.4 43日本の産業構造の変化にともなう電子機器分野の話題商品を追う第34回 <話題商品を支えた日本の品質管理/品質保証>きないという現実に直面し、安全保障の観点からも米国製品の品質向上が国家の重要課題であると結論づけられた。こうして「品質」問題が重視される中で、この「品質」の位置づけを、第三者が決める規定品質ではなく、顧客と競争のあり方で決定される戦略的なものと捉えていった。 このように「品質」を捉えると、品質の高い優れた製品・サービスを生み出すには、製品・サービスそのものの問題対応では不十分であり、最終的にそれを生み出す組織の風土や文化、さらには組織の物の見方や考え方を常に見直していくことが重要、と考えるに至った。 つまり、戦略的に品質を高めるには、「リーダーシップ」、「戦略」、「人材」、「情報」など、経営の全ての要素を顧客とその成果に結びつけて考えること、すなわち全体最適で経営を考えること、が重要である、としたのである。   これまで研究されてきた「リーダーシップ」、「学習組織」、「知覚品質」という考え方に、「事実に基づく判断の重要性」、「改善する文化」、「長期的な視点での戦略」などの日本やドイツでの実践事例を参考に、産学官の識者を集めた徹底的な議論の末、1987年8月20日に制定された連邦法100-107 号に基づいて、大統領が直接表彰する制度として誕生したのが「マルコム・ボルドリッジ賞」である。4) これは、日本で創設した「デミング賞」と似たような賞として位置付けされるのではないかと思う。 いずれにしても日本は、初期の頃は品質に対する知識も少なく、経験が少なかったにも拘わらず、米国に学び、品質に対してたゆまない改善を実施し、高い品質の製品を世界に向けて供給した。そして各国で日本製品の品質の良さが認知された。これは「話題商品」を世界に向けて供給する上で「品質管理/品質保証」は、下支えをしたと言えよう。<参考資料>1)マーク・ピータセン、“日本人の英語” p2 岩波新書 ISBN4-00-430018-5(1988)2)日本能率協会コンサルティング ZD 運動 & NEC Facebook https://www.jmac.co.jp/glossary/2016/09/ tpm-zd.html https://www.facebook.com/necjapan/photos/3)唐津 一、“ 空洞化するアメリカ産業の直言” pp51~pp52 PHP 研究所 ISBN4-569-21889-X(1986)4)経営品質協議会 http://member.jqac.com/contents/ ndex.asp?patten_cd=12&page_no=15年 度内 容1945年日本規格協会設立1946年連合国軍司令部(GHQ)から日本の通信施設での故障が頻発したため改善要求があるとともにウエスタンエレクトリックの Mr.H.M.Sarasohnが通信機器メーカーに対して統計的品質管理(SQC=Statistical Quality Control)の指導を実施日本科学技術連盟(日科技連)設立NECが品質管理を導入1948年統計的品質管理(SQC)の普及活動を日本科学技術連盟(日科技連)にて5 人の研究グループで開始1949年工業標準化法を制定(JIS 施行)トヨタで統計的品質管理(SQC)がはじまる1950年1950 年代初期まで、メイド・イン・ジャパンは安かろう・悪かろうという粗悪品の代名詞であり、製品の品質向上が多くの企業にとって課題となる日科技連が「品質管理」誌を創刊デミング(Deming)博士が7月に来日。朝鮮戦争の勃発で米軍からの特需で日本の産業界は米軍が指定する品質を守る必要があり、真剣に品質管理を取り組むことになる1951年日本科学技術連盟の中堅技術者達が品質管理に関して産業界全体に広めるためにデミング博士の講義録を販売して作った基金で日科技連に「デミング賞」を創設するトヨタで品質管理の考え方の普及をするため、検査関係者を対象にQC教育が導入フォード社の「サジェッションプラン」を参考として「創意工夫提案制度」がトヨタで発足第1 回品質管理大会、第1 回デミング賞受賞式を9月に大阪で挙行1953年トヨタ「かんばん方式」JISCがIEC加盟JISマークの表示制度、抜取り検査のJISが制定される1954年ジュラン博士来日し、「社長重役特別講座」と「部課長コース」の講演を実施1956年日本短波放送で「品質管理講座」の放送を開始OR、IE、VAを導入1958年渡米した日本のQCチームが、ファイゲンハウム博士(A.V.Feigenbaum)によって提唱された「全社的品質管理(TQC=Total QualityControl)」を持ち帰る標準化全国大会(毎年10月)開催1960年「品質月間」運動開始(毎年11月)1962年米国マーチン社フロリダ・オーランド事業部が、国防省からの要請で陸軍のミサイルの納期を2ヵ月から1ヵ月半に2 週間短縮するために、ミサイル製造に携わる全従業員に「はじめから正しく仕事をすること」を呼びかけたのがZD(Zero Defect)のはじまりである日科技連が「現場とQC」を4月に創刊QCサークルが誕生し、QC サークルは、就業時間後に討論して全員から職場の改良を提案させ、よいものがあれば取り上げて品質の改善に努めたNECがQCサークル活動を実施1964年NEC の小林宏治社長が米国の実施例を参考にしてZD 運動の導入を考える1965年品質管理シンポジウム開始全社的に従業員一人一人が会社の改善に参加するという考えで、ここにZD 運動についての提案をしたいとNEC の小林社長が年頭訓示で要請QCサークル活動とZD 運動を一体化したZD 活動グループを日本能率協会が音頭をとって国内に広める1966年標準化と品質管理全国大会 (毎年5月)開催1969年第1 回品質管理国際会議が日本で開催1970年日本品質管理賞創設1971年第1回 全日本選抜QCサークル大会を11月に開催日本プラントメンテナンス協会によって1971年に全員参加の生産保全(TPM=Total Productive Maintenance)を提唱1972年NEC 全社で7つのQを高めていくクオリティ作戦を導入1973年「現場とQC」誌を「FQC」誌に名称変更1975年製造の職場に限らず、設計、技術、事務、販売、企画などの間接部門においても品質管理の実践をおこなうようになり、全社で全員が取組む品質管理でTQC(Total Quality Control)と呼称された1976年TQC(Total Quality Control:全社的品質管理)の講座が開設1978年第二次石油危機を契機に、全社的品質管理(TQC)を加速させる企業が増加第1 回 国際QCサークル大会(ICQCC ‘783/okyo)を7月に開催1979年品質の高い日本の製品が世界的に注目を受け始める1980年1980 年代、米モトローラでトップダウン型の品質改善手法(経営改革手法)としてシックスシグマ(6σ)が導入された半導体の品質管理のセミナーが米国・ワシントンで開催され、日本の半導体は米国の半導体と比較して不良率が1/10であることが公表され、NBCが「日本に出来て何故米国に出来ないか」との番組が報道される1981年NECがソフトウエアの総合的品質管理活動(SWQC3Software Quality Control)を導入1988年「FQC」誌を「QCサークル」誌に名称変更1989年国連提唱の「世界品質の日」(11月の第2 火曜日)1990年欧州型品質管理であるISO9000シリーズの導入が始まり、ブームとなる1991年TQC の弊害が目立つようになる1995年製造物責任法(PL 法)が制定され、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について規定1996年日本科学技術連盟TQCからTQMと呼称1998年ソニーはシックスシグマ手法の全社的な導入をトップダウンで決定2000年日本科学技術連盟が日本品質奨励賞を創設2005年日本科学技術連盟「いいQ の日」11月9日を品質強化月間2010年ISO の取得ブームも一服し、ISO の弊害が出るようになる2020年デジタル化を推進して業務改善に挑むDigital Transformation(DX)が脚光を浴びる写真2 ZD運動(NEC)表1 日本の品質改善の取り組み写真3 Q旗 写真4 ワシントンセミナー(1980年)3)写真1 デミング賞