ブックタイトルメカトロニクス4月2021年
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メカトロニクス4月2021年
MECHATRONICS 2021.4 11 さらに、再生可能エネルギーの重要性に気付いたのも2000年頃でした。太陽エネルギーの利用には、もともと関心が高かったこともありますが、かつては自動車メーカーの一員として、石油の消費を増やし、それにより二酸化炭素などの温室効果ガスを増加させてしまったことに後ろめたさを感じていました。 そのため、「再生可能エネルギー利用に多少なりとも貢献したい」と考え、太陽光配光プリズム『天窓気分』といった製品を開発しました。しかし、建材というまったく経験のない分野の製品だったので、展示会などでは高い評価をいただきましたが、販売には苦戦しました。現在は、ノウハウだけを提供する形で製造は中止しています。 最近では、工科系大学との共同研究で「太陽電池を用いた電動アシスト自転車の充電の実用化」を進めており、引き続き再生可能エネルギーを利用した環境関連製品への取り組みを行っています。 御社のコアとなるホログラフィカメラの 概要についてお聞かせください石川 : 日本でホログラフィが知られるようになったのは1980 年頃で、当時のホログラフィを制作する手段としては、「大型の光学定盤の上に自分で光学部品を配置し、精密に調整する」といった、ある程度の経験を積んだ専門家でないと扱えないような状況でした。 しかし私自身は、「ホログラフィも写真の仲間である以上、撮影するためのカメラが存在しないのはおかしい」と考えていました。そのため、独学で勉強した知識を活かし、1983 年に8×10インチ判のホログラフィカメラを開発しました。この初期モデルは、白色光再生のレインボーホログラムと呼ばれる2段階で撮影し、ホログラム撮影も可能なオールマイティで、撮影が容易なタイプのものでした。 これがスタートラインとなり、大型のものから持ち運び便利な卓上型まで、6機種合計約50セットを大学や企業の研究部門向けに製作/納品しています。また、特注仕様として連続写真から合成できるホログラフィックステレオグラム専用機や、ホログラフィアニメーション撮影機、再生機も複数台製作した実績があります。 残念ながら、2005 年以降のホログラフィ需要が減退してからは、これらのノウハウや技術を応用し、レーザ光学実験装置やレーザ干渉計などの開発をスタートさせています。 では、現在展開されているレーザ光学 実験装置/レーザ干渉計などについて お聞かせください石川 : まずは、レーザ光学実験装置『HOLOARTLM-1』を紹介させていただきます(写真3)。この装置は、「光の干渉と回折」、「ホログラフィ」、「屈折と反射」、「偏光の実験」など、光学分野における様々な実験が可能な製品です。 従来、大きく重い光学定盤が必要と考えられてきた干渉計ホログラフィの実験が、小型で軽い本製品1 台で、誰にでも簡単にできるようになります。屈折や反射も、本製品の特徴である3 本ビーム方式により、分かりやすく観察することができます。教科書や図だけでは理解が難しかった干渉や屈折も、実際に見える実験ができるため、学習効果は大きくなると思います。専用ケースを用意しているので、運搬や保管にも大変便利になっています。 次に、半導体レーザ干渉計『LDIF-1』を紹介させていただきます(写真4)。従来、干渉計実験には、大きく重い定盤と高価な光学部品が必要と考えられてきました。本製品は、B4サイズと小型なうえ、代表的な干渉計であるマッハ・ツェンダーとマイケルソンの両方式の実験を1台で対応し、除振定盤も不要になります。教科書や図だけでは分かり難かった「光の干渉および波動性」についても、本製品による見える実験により、分かりやすく学習することができます。 それから、昨年の1月に新製品として発売したマイケルソン干渉計『LDIF-M1』も紹介させていただきます(写真5)。この装置は、マイケルソン方式の実験に特化した製品で、『LDIF-1』よりも軽量で非常にシンプルなモデルになっています。 レーザを始め、実験に必要なコンポーネントがすべて搭載されており、卓上で手軽に光の干渉実験が実現できます。レーザの光軸合わせが不要で、ミラーの簡単な調整のみですぐに使用できます。また、コリメート光学系を装備しており、見やすい大きさの干渉縞を表示します(写真6)。一目で分かる構成で科学館や教育機関の展示用途にも適しています。 今後の展開についてお聞かせください石川 : まずは、先程紹介させていただいた新製品であるマイケルソン干渉計『LDIF-M1』の販売に力を入れています。ターゲットとしては、企業や大学などの研究機関もそうですが、高校などの教育現場にも導入していただけるよう取り組んでいきます。 また、環境関連製品として工科系大学と共同研究で進めている「太陽電池を用いた電動アシスト自転車の充電の実用化」についても、強化を図っていきます。これは、従来のコンセントに繋いで充電する方法とは異なる独立電源化したものが、もっと普及してもいいのではと始めた試みで、ここからどんどん発展させていくことを目標にチャレンジしていきます。 さらに、ホログラフィについても一度は下火になっていますが、この技術を何とか守って行きたいと考えています。科学技術ではありますが、伝統工芸とも呼べるので世の中には必要であると思っており、これは私だけでなく、ホログラフィの世界を統括している研究会があるのですが、そこに在籍する同じ仲間の方々も、皆さん同じように続けていきたいと考えています。 なかなかビジネスには結び付けにくいことですが、技術の継承に向けた取り組みを、同じ志をもった方々とともに進めていきたいと思っています。 そして最後に、今まで色々とビジネスを展開してきましたが、基本的には「できるだけ人の役に立つ仕事をやっていきたい」といったことがベースになっており、今後もこのような考えを継続させながら、ユニークな製品の開発を目指していきます。 本日はお忙しい中ありがとうございました。所在地 :U R L :事業内容 :東京都品川区http://www.holoart.co.jp展示映像システムの製作販売、科学展示製作、開発受託、太陽光採光照明・直流給電等の自然エネルギー利用製品の開発/製作。有限会社 石川光学造形研究所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・写真3 レーザ光学実験装置『HOLOART LM-1』写真5 マイケルソン干渉計『LDIF-M1』写真4 半導体レーザ干渉計『LDIF-1』写真6 スクリーンに映った干渉縞