ブックタイトルメカトロニクス12月2020年

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概要

メカトロニクス12月2020年

44 MECHATRONICS 2020.12 日本は自動販売機の大国とも言われる程、自動販売機(以下、自販機と略す)が普及している。今回は、その自販機の市場動向について紹介する。1. 自販機の歴史 自販機が発明されたのは、紀元前215 年ごろの古代エジプトの神殿に置かれた「聖水」販売機(写真1)がルーツであるという。コインの重みで一定の水が蛇口から排出される仕組みであった。古い歴史を有するのだ。 そして現存する自販機では、英国のタバコ販売機が最も古く、1615 年に登場した。日本に現存する最も古い自販機は俵谷高七が1904 年に開発した「自動郵便切手葉書売下機」(写真2)で、東京都大手町にあった逓信総合博物館に展示されていた。 戦後になってから自販機のルーツは、愛知県のホシザキ電機が開発した「噴水型ジュース自販機」(オアシス/1957 年)とされている。自販機の略史を辿ると表1 のようになる。2. 自販機の市場推移 自販機の設置台数を見ると、645万台(2014年)の米国に次いで日本は415 万台(2019年)と世界第2 位であり、人口比率で比較すれば日本は世界一となり、まさに日本は“自販機大国”なのである。 日本で自販機が普及した理由は、(1)日本は治安が良いため道路や公園などの屋外  に自販機を設置しても窃盗被害が少ないこと(2)都市部では人口密度が高く、採算が見込める設  置場所が多いこと(3)飲料メーカーが無償で自販機の貸し出しを行う  仕組みを採用したため、小売店や個人による自  販機の設置が一気に増加したことなどがあげられる。日本自動販売システム機械工業会(JVMA)が統計資料を整備しており、図1 のように推移している。 自販機による販売金額は4.76 兆円(2016 年)にもなり、普及台数に占める割合が最も高いのが飲料自販機で全体の約57%(2019年)に相当する。2000年の561万台をピークに年々漸減傾向にあり、国内での自販機の設置台数は既に飽和状態と言われている。そのため存在価値を高めるために日本独自の進化を遂げている。3. 自販機の進化 自販機が普及し始めると“路上はみ出し”という問題が提起され、奥行きを小さくした薄型機の登場、さらに、酒、タバコは未成年者が購入する可能性があり、成人識別装置をつけた「taspo」式自販機が稼働したり、販売自粛したりが進展した。 自販機の発達はエレクトロニクス技術の進化とともに発展し、日常生活に欠かせない役割を果たしている。自動両替機、券買機は光センサと磁気センサで真偽を判定する仕組みであり、自販機には「コインメック」と呼ばれる硬貨識別機が搭載されている。そして、以下のような特徴ある自販機が日本で開発された。3-1. おしゃべり自販機 飲み物を購入すると挨拶はもちろん、季節や時間帯に応じたメッセージで利用者とおしゃべりしているようなコミュニケーションが可能な自販機である。 日本全国の16方言に加えて、英語・ポルトガル語・中国語のメッセージが搭載されている自販機もあり、外国人観光客にも人気がある。校歌が流れる自販機( 関東学院大学/ダイドードリンコ)もある。3-2. 一緒に遊べる自販機 自販機の正面に大型のディスプレイとカメラが内蔵された自販機。商品を購入すると、内蔵カメラで写真を撮ることができるほか、ディスプレイに映った自分と人気アーティスト映像が合成され、一緒にダンスを踊る感覚が味わえ、撮った写真やダンス動画はスマートフォンで見ることもできる。さらに、ダンスの結果はランキングとしてWebで発表される。3-3. 健康応援ポイントサービス付き自販機 オフィス内に設置された専用自販機とアプリを連動して利用者の健康習慣を促すだけでなく、企業の健康管理をサポートする自販機もある。 利用者は専用アプリをダウンロードすると歩数計機能で歩いた歩数に応じてポイントが貯まる仕組みで、商品の購入でもポイントが貯まり、貯まったポイントはトクホ飲料と交換できるという。3-4. 災害対応自販機 災害時に無料で商品を提供、携帯電話などの充電機能や災害情報の表示機能を備えた災害対応自販機で、災害時には非常用の飲料水備蓄庫としても役立てる機能も有する。3-5. 環境対応自販機 自販機の冷媒は、特定フロンから代替フロン、そしてノンフロンのイソブタン系へと代替されて環境対応が実施された。 以上のような特徴を有する自販機に対して、例えば1 台の自販機にHot-Cold の両方の機能を搭載した機種は日本が最初に開発して商品化した自販機である。冷却庫内の冷却時に発生する熱を加温庫内の飲料を加熱するために利用するヒートポンプ方式、外気の熱まで利用するハイブリッドヒートポンプ方式の自販機など、最先端の技術を活用した自販機も登場している。 以上、自販機の発展状況と市場動向を理解して頂ければ幸いである。<参考資料>1)日本自販機システム機械工業会  https://www.jvma.or.jp/information/  fukyu2019.pdf  https://www.jvma.or.jp/information/information_5.html第5回 自動販売機の市場動向市場の生産統計とそのヒストリーちょっと気になる連 載写真1 聖水販売機写真2 自動郵便切手葉書売下機