ブックタイトルメカトロニクス11月号2020年
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メカトロニクス11月号2020年
50 MECHATRONICS 2020.11第29回 <半導体の登場で話題商品が変わる>1.「真空管」から「半導体」へ ジョン・フレミングが1904 年に2 極真空管を、リー・フォレストが1906 年に3 極真空管を、それぞれ発明した。陰極から陽極に流れる電子流を制御することによって増幅、検波、整流、発振などを行うことができ、その後、真空管はウエスタン・エレクトリック社で生産が開始された。3極管を改善した4極管が開発され、1929 年には5 極管の真空管も開発され、製品に応用された。 1951 年8月に「マツダ受信用真空管ハンドブック」が刊行され、好評を受け1953 年3月に東京芝浦電気株式会社管球販売部監修で誠文堂新光社から「マツダ真空管ハンドブック」(MatsudaVacuum Tube Handbook 1953)(写真1)が発行され、真空管の型番の決め方、ピンに付ける記号の説明など真空管の基本を丁寧に解説したハンドブックであった。 真空管は、ガラスなどの内部に複数の電極を配置したもので、内部が真空状態となっており、容量が大きく消費電力も大きいため、電子機器の小型化には向いていなかった。真空管は、ナス管から始まりST 管、GT 管、mT 管へと次第に小型化されていった。多くの機器に使用され、真空管を如何に小さくするかにあったものの、ある程度の大きさが必要であった。 真空管式テレビはスイッチを入れても今のように画像がすぐ映らなく、しばらく温めないと画像が出て来ない時代であった。 写真2は、真空管を使用したポータブル型の真空管式ラジオである。中央前に真空管2つが実装されているのが見える。このポータブル型ラジオは持ち運びができる程、小型化されている。当時の話題商品となった。しかし、小型化してもかなりのスペースをとっている。 真空管には、次のような問題点をもっていた。(1)原理的にフィラメントやヒータなどの熱電子源 が必要なので消費電力が大きく発熱する(2)フィラメントやヒータを有するため数千時間程 度と寿命が短い(3)真空管そのものや、これを用いる機器の小型化 や耐震性に難点がある等の問題をもつ真空管に代わるものとして、1940年代になってゲルマニウム・トランジスタという半導体が登場することになる。特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 青木 正光2.「トランジスタ」の発明 真空管を使っていた時代に、トランジスタが登場した。1947 年12 月にベル研究所のジョン・バーディーンとウォルター・ブラッテンはゲルマニウム単結晶を用いて2本の針の片方に電流を流すと、もう片方に大きな電流が流れるという現象を発見した。最初のトランジスタである“点接触型トランジスタ”の発明へとつながった。 ベル研究所でリーダーであったウィリアム・ショックレーは、この現象の発見から増幅に使用できると考え、1948年に“接合型トランジスタ”を開発した。 このトランジスタの出現は、今でこそ「戦後、最大の技術革新」、いや「20世紀最大の発明」などと評価されているが、発明当時のメディアの反応は、きわめて冷淡だったという。 例えば、米国の「ニューヨーク・タイムズ」紙は、公式発表翌日の1948 年7月1日付けでその内容を伝えているが、その記事はずっと後ろの方の紙面(46面)のラジオ欄の脇に、見出しのないベタ記事扱いで40 行足らずの紹介であった(図1)。 記事の内容は、「このデバイスは従来、真空管が使われていた無線の分野でいくつかの応用を開くであろう」と至極あっさりとした記事となっている。 こんな紹介記事であったが、ジョン・バーディーン、ウォルター・ブラッテン、ウィリアム・ショックレーの3人の功績は、8 年後の1956年にそろってノーベル物理学賞という栄誉をもたらした。 その後、トランジスタも進化し、シリコンを使った最初のシリコントランジスタは1954年にテキサス・インスツルメンツが開発した。トランジスタは3つの端子を有する半導体デバイスである。ベース、エミッタ、コレクタという3つの部分からなり、ゲルマニウムやシリコンといった半導体が主な材料で、トランジスタの特性は“スイッチング作用”と“電流電圧の増幅作用” の2つがある。 小型・軽量化が容易で消費電力も少なく、かつ長寿命を誇るトランジスタが歩留向上により低価格化が進み、その役割を真空管から引継ぐようになった。現在、あらゆる電子機器が小型化されているのは、このトランジスタのおかげと言ってよいかと思う。 電気・電子回路において、整流、変調、検波、増幅などに用いる目的の素子としては、多くがトランジスタに代表される半導体に置き換えられ、真空管はその写真1 “真空管”と“Matsuda Vacuum Tube Handbook 1953”写真2 真空管式ポータブルラジオ[東京芝浦電気/コンパニオン(1954年)]