ブックタイトルメカトロニクス10月号2020年
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メカトロニクス10月号2020年
44 MECHATRONICS 2020.10第28回 <環境規制で話題商品の設計思想が変わる> 前回までに話題商品の“製品安全対策”、“ 難燃化技術の進展”、そして“グリーン・エレクトロニクス”に進展した背景に環境規制が関与していることを紹介した。 今回、今後、予想される環境規制にどんなものが想定され、いつ頃から規制となるかを予想しつつ、今後の設計思想に影響するので、この分野をあらためて紹介したい。1. 設計思想の変遷 電子機器の設計の観点から見ると、時代の変遷とともに設計思想の重点が、図1に示すように“耐久性” → “ 安全性” → “サイズ” → “ 分解容易性” → “ 環境配慮” → “リサイクル”へとさまざまな設計思想を取り込んで対応してきているのがエレクトロニクス業界での取組みである。 1990年中半になって環境を配慮した設計に重点化する時期であった。背景には急増する廃電気電子機器に対応するために環境配慮は重要な課題となった。廃棄される電気電子機器を容易に解体できるような必要性が叫ばれ、さらに廃棄物を削減するには、寿命をのぼしたり、あるいは、リサイクルして再利用を促したりする案などが検討された。 環境法規制は、設計思想にも影響を及ぼす結果となり、環境を配慮した設計が重要となってきた。 時代の要請にそって、設計段階から環境を配慮した設計も取り入れられるようになり、これも電子機器の差異化の一手段として各企業で検討されるようになってきた。2. 環境配慮設計 機器設計者は、商品の開発段階から環境を配慮した機器設計(DfE)やリサイクルができるような設計(DfR)も必要であり、設計段階からより安全な材料や工法があれば積極的に採用する動きとなった。この傾向は、1990 年代に欧州から対応する動きと特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 青木 正光なり、環境調和型実装技術の確立とともに2000年代になると世界で鉛フリーはんだが実装業界で進展した。 従来は、製品の生産のみ(動脈生産)を重視していれば良かったのが、今や、廃棄までを考慮しての回収後の分解・解体までの配慮が必要となり、逆生産(静脈生産)も重要な課題となった。 リサイクルを容易にするにも、初期の段階から有害物質はできるだけ使用を避けるのが望ましいし、解体時に分かるように樹脂に種類を表示して分別しやすいような配慮も必要となってきた。 ハイテク機器やデジタル機器には、多くのレアメタルが使用されているものの、レアメタルの産出国が偏在していることに加え、希少な存在もあって、レアメタルなどの使用低減・リサイクル・代替技術の確立が急務ともなってきている。地下資源に眠っていたレアメタルが、徐々に地上資源となり、いわゆる電子機器に高い含有量で眠る「都市鉱山」となっている。 今後は、いかにして電子機器などから効率よくレアメタルを回収するかにあり、採算にあうレアメタル回収技術の開発がまたれる。 ここで、原点に戻って基本に立ち返り、今一度、見直す時期にさしかかっており、まさに「ものづくり」に従来の考え方から一歩踏み出した対応が必要となってきた。3. 話題商品に影響した環境規制 生活が豊かになってエンジョイしていたと思っていたら便利に使っていた「冷媒」などが地球を傷つけるような問題の指摘があり、オゾン層破壊に関しては、一国で対応するのではなく、世界規模で対応する動きとなった。 製造段階で使用される化学物質の管理についても大事故の発生の対策として検討され、汚染物質排出管理システムとして各国で制定されるようになった。 では、その主の動きについて紹介しよう。3-1. オゾン層破壊物質削減 1960年頃からフロンガスは冷蔵庫の冷媒や断熱発泡剤として先進国を中心に使用され、冷蔵庫の普及、さらにはエアコンの普及に伴って使用が拡大していった。 ところが1974 年、カリフォルニア大学のF. S.Rowland 教授らにより、フロンガスがオゾン層破壊の原因との論文を発表したのがきっかけで、他の地球環境問題に先駆けて国際的に検討されるに至った。フロンはオゾン層破壊物質でもあることから1985年に「オゾン層保護のためのウィーン条約」が採択されて1988 年に発効した。 規制プランは条約に基づく議定書に委ねることになり、「モントリオール議定書」が1987年採択され、1989 年発効し、具体化した。 モントリオール議定書の締結にともなって実装業界でも使用廃止が叫ばれ、エレクトロニクス業界ではいち早く対応することとなった。 プリント配線板に部品や半導体デバイスなどを実装した後にプリント回路板(プリント配線板に部品を搭載した基板)をフロンやトリクレンで洗浄していた。 早いところでは、1987年には脱フロン関係の社内プロジェクトを立上げて対応した企業もある。 実装業界で使用削減を進展し、先ず、民生機器向けのプリント回路板の「フロン洗浄」から「アルカリ洗浄」が検討された。 稼動開始後、洗浄のアルカリ廃液の処分問題が課題となり、その後、「アルカリ洗浄」から「水洗浄」へと取り組みが検討されるに至った。 実装業界で並行して検討されたのは、洗浄ラインのみならず、はんだ付けに使用されるフラックスも低残渣タイプの開発が検討されるに至った。 最終的には低残渣の無洗浄タイプのフラックスが開発されるのも相まって「無洗浄」へと進展して対策がとられた。3-2. 製品含有化学物質規制 先月号でもふれたが重要なので再度、紹介する。最終製品を認証する場合に有害なポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)、塩素化パラフィンなどの難燃剤などの規制を実施したのがドイツのBlue Angel(図2)や北欧のNordic Swan(図3)などであり、複写機、プリンタ、ファックスなどのOA 機器に対して1993 年~1998年に実施した。認証機関が独自に規制した図1 設計思想の変遷 物質が最終製品に使用されていないかを確認する Design for Durability( DfDu):1950~1970年(耐久性) Design for Safety( DfSa):1970~1990年(安全性) Design for Size “Kei-Haku Tan-Sho”(DfSi):1990 年~(サイズ) Design for Disassembly (DfDi):1995 年~(易分解性) Design for Environment (DfE):1997 年~(環境) Design for Recycling (DfR):2001 年~(リサイクル)