ブックタイトルメカトロニクス10月号2020年
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メカトロニクス10月号2020年
MECHATRONICS 2020.10 11これは我々がやり始めて、いま我々が海外法人の方々に色々と教えています。その中で、特に盛んなのが自動車であり、自動車産業は日本の製造業の3、4割を占めているので、そこで技能伝承を育みながら、我々が世界に広めている状況です。スタートは自動車産業でしたが、最近ではエレクトロニクス産業/インフラの保守/鉄道の運転手や車掌の育成/サービスの接客など、幅広い業界で技能伝承のニーズがあります。 また、エンドユーザーのスマートフォンや業務端末、ATM、券売機などの使い易さを調べる取り組みなども行っており、インタフェースの改善に繋げています。 あとは、自動化への取り組みも進めています。自動化する前提で、「どのように自動化すればよいのか」といったテーマをもったお客様に対して、我々は人と自動化の役割分担をコストや品質の両面から提案できるようなことを行っています。 御社の製品についてお聞かせください蜂巣 : 当社の製品には、グラス型とモニタ型の2種類のタイプがあり、日本市場ではグラス型が全体の70 %を占め、残りの30 %がモニタ型になります。 グラス型の初期モデルとなる第一世代は、利き目の比率の多い右眼の視線データのみを取得していました(写真1)。当時は、技術的な問題もあり、両眼ではコストが掛かり電力も消費するなどといったことから、単眼でスタートしています。 また、当時の主流は近赤外線カメラを前に設置していましたが、以前からあった懸念点として「カメラが前にあるとどうしてもそれを気にして見てしまう」といった現象があり、余計な物を見てしまうとデータとして意味がなくなってしまうため、当社のモデルは近赤外線カメラを裏側に設置しています。グラスのノーズ付近に設置しているLEDから近赤外線を照射し、レンズを鏡のようにして、レンズに映った瞳孔を近赤外線カメラで撮って測定しています。 2014 年には、第二世代モデルをリリースしています(写真2)。第二世代モデルは、大幅な軽量と両眼の視線データを取得するようになりました。両眼のメリットとしては、やはり単眼より両眼の方が取得するデータ量が多いことが挙げられます。第一世代ではX /Yの座標軸データしか取れませんでしたが、第二世代はX/Y/Zの座標軸データが取れることが、1つの大きな特徴になっています。 さらに、第二世代モデルからは、グラスのフレームに近赤外線カメラやLEDを内蔵させています。邪魔にならないアイデアが色々と分かってきたので、眼球の前にありますがほとんど気にならないように工夫しています。 そして今年の6月に、グラス型の新製品となる第三世代モデルをリリースしています(写真3)。第三世代モデルは、グラスのフレームをなくし、そこに内蔵されていたものをすべてレンズ自体に内蔵しています(写真4)。それにより、今まで以上に視界を遮るものがなくなり、上下左右の画角も広がって、より視線データが豊富に取得できるようになっています。 また、アイトラッキングは直射日光に弱いとされていますが、オプションのG3 保護レンズを用意したことで、屋外で行われる計測作業への対応が強化されています。さらに、ヘルメット下でも着用できるスリムなデザインを採用しているので、危険を伴う作業やアクティブなスポーツなど様々な環境で視線計測ができ、幅広い職業や研究での使用が容易となっています。 それから、第二世代モデルとの大きな違いとして、第二世代モデルはPCを使って瞳孔を合わせる作業や録画再生などを行っていましたが、第三世代モデルはAandroid 版のスマートフォンを使用した操作が可能になっています。そのため、計測現場にPCを持ち運ぶ必要がなく、より使いやすく簡単に多くの視線データを取得することができます。 次に、モニタ型の製品については、長きにわたりスピード競争があり、当初は1 秒間に100Hz 程度でよかったものが、2012 年には300Hz、2016年には600Hz、2018 年には1200Hzと、どんどんサンプリングレートが上がっていきました。また一方では、サンプリングレートはそれほど速くなくていいので、コストを下げてほしいといった廉価版へのニーズもありました。 そのため当社では、ハイエンドと廉価版を同時に販売できるような体制を取り続けています。 現状のハイエンドに対応した製品は、『Tobii Proスペクトラム』になります(写真5)。この製品は、様々な分野において人の行動やメカニズムを解き明かすためにデザインされたアイトラッカーです。最大1200Hzの高サンプリングレートでデータを取得でき、頭部の自然な動きを可能にし、様々な研究計画や調査シナリオにフレキシブルに対応します。 また、現状の廉価版として販売している製品は、『Tobii Pro ナノ』になります(写真6)。この製品は、最小/最軽量を実現し、様々な場所に持ち運びができ、簡単にセットアップして実験を行うことができます。60Hz のサンプリングレートで、「どこを見ているか」を正確に検出することが可能な、視線の停留をベースとした研究/調査向けのアイトラッカーです。 今後の展開についてお聞かせください蜂巣 : まず学術研究については、さらなる高速化への要求が激化すると予想されるのでそれに対応するとともに、廉価版についても、研究員1 人に1台という時代は近い将来くると思うので、それに対応できるようにしていきたいと考えています。 消費者行動については、現状テレビの視聴率を測る世界がありますが、それと同じようにバイタルデータを測る世界が近い将来くると思います。これは、スマートグラスやVRなどのデバイスの浸透と合わせてになりますが、取得できるデータは桁違いに増えると思うので、状況を見ながら順次対応していきます。 それから技能伝承については、今のところ熟練者と非熟練者の方にアイトラッカーを付けていただき実験段階で行っていますが、今までのサンプリングデータから「優秀とはこういうこと」、「不良率が少ないとはこういうこと」、「生産性が高いとはこういうこと」など、ある程度の正解が分かってきたので、次のステップとなるモニタリング段階に進めたいと考えています。これは、作業者全員にアイトラッカーを付けていただくことで、不良などを未然に防ぐことに繋げていけます。 特に最近は新型コロナウイルスの蔓延により、人手を減らしながらも如何に生産性を上げていくかが、様々な生産現場において1つのテーマにもなっています。そういった中で、我々が少しでも貢献できるように努めていきたいと思っています。 本日はお忙しい中ありがとうございました。所在地 :U R L :事業内容 :東京都品川区http://www.tobii.co.jp生体計測を活用したコンサルティング、周辺機器の製造/販売、など。トビー・テクノロジー株式会社・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・写真4 『Tobii Pro グラス 3』の構造内容写真6 スクリーンベース型『Tobii Proナノ』写真5 スクリーンベース型『Tobii Pro スペクトラム』