ブックタイトルメカトロニクス9月2020年
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メカトロニクス9月2020年
MECHATRONICS 2020.9 45日本の産業構造の変化にともなう電子機器分野の話題商品を追う第27回 <グリーン・エレクトロニクスの進展> 増加する廃棄物を削減する目的でリサイクルが検討され、リサイクルする場合には有害物質を含有しないようにするのが好ましく、「廃自動車」や「廃電気電子機器」に対して有害物質を規制することが検討された。 さらに廃棄物焼却処分する場合に焼却炉付近でダイオキシン発生が問題提起され、日本でも大きな問題となり、ダイオキシン対応で技術対応が変わっていった。(1) ダイオキシン低減対策 1990年代始め頃に「緑の党」が、廃家電の燃焼処分時にダイオキシン発生を指摘したことで問題となり、ドイツで1994 年、オランダで1995年、それぞれ「ダイオキシン法」が成立した。 廃棄物に塩素や臭素などが含有して燃焼温度が低温で実施されるとダイオキシンが発生し易く、1990 年代始めにダイオキシン関連のプロジェクトが発足して検討された。 日本では1996 年、日本テレビの報道番組「報道特捜プロジェクト」でダイオキシン問題を取り上げて日本で初めて報道したことによってダイオキシン問題に注目される事態となった。 草案段階のWEEE指令は2004年1月に施行し、全ての臭素系難燃剤を規制する案であったこと、さらにダイオキシン問題などもあって、その対策として臭素や塩素などのハロゲン系難燃剤を使用しない方式としてハロゲンフリー化技術が確立され、実装業界ではハロゲンフリー銅張積層板が製品化されて、1990年代後半に製品に応用展開されていった。 なお、ハロゲンフリー材料が広まったことにより、ハロゲンフリーの定義について、IEC/TC111でも議論された。 1990 年代になると廃棄物処理が浮上し、先ず問題となったのが包装に使用される材料の廃棄問題であった。 年々、増加する包装物に対して、欧州で「包装廃棄指令」が施行された。 環境汚染を防止する意味もあって規制対象物質(「鉛」、「カドミウム」、「水銀」、「カドミウム」)が指定されたことである。(2) 製品含有化学物質規制 リスクリダクションにリストされたこともあり、最終製品を認証する場合に有害なPBB、PBDE、塩素パラフィンなどの難燃剤などの規制を実施したのがドイツのBlue Angelや北欧のNordic Swan などであり、複写機、プリンタ、ファックスなどのOA 機器に対して1993年?1998年に適用した。 認証機関が独自に規制した物質が最終製品に使用されていないかを確認する手法として導入された。 製品に含有する化学物質に関して対象となる物質は、包装廃棄物指令で規定された「鉛」、「水銀」、「カドミウム」、「六価クロム」の種類が指定された。 これらが「廃自動車指令」、「廃電気電子機器の使用制限指令(RoHS=Restriction of the Use ofCertain Hazardous Substances in ElectricalEquipment)」などへと適用されていき、RoHS 指令ではPBB、PBDE の特定臭素系難燃剤が追加された。 改正RoHS指令(RoHS2)では、更に4種類のフタル酸エステル系が追加され合計10種類が対象となり、追加物質は2019 年から施行されることになった。 製品に含有する有害物質を管理する時代となり、欧州から始まったRoHS 指令は各国に影響を及ぼし、日本のJ-Moss、中国版RoHS、韓国版RoHS等へと進展した。 これは電気電子機器に対して展開されていった。限られた分野から全分野に適用したのがREACH規則であり、特に高懸念物質が0.1%以上、含有する場合には配慮が必要となる。a. 電気電子機器の有害物質制限指令 (RoHS指令) 電気電子機器の設計思想が時代とともに変遷していった。 1990年代になって環境を配慮した設計に重点化した時期であった。 背景には急増する廃電気電子機器に対応するためにも環境配慮は重要な課題となった。 廃棄される電気電子機器を削減するには、寿命をのぼしたり、あるいは、リサイクルして再利用を促したりする案が検討された。 特に欧州では指令を策定して解決する手法が検討された。 当然ながらリサイクルする場合には有害物質が入っていない方が好ましいため、最初は、「鉛」、「水銀」、「カドミウム」、「六価クロム」、「PBB」、「PBDE」の6 物質に関して使用制限をするRoHS指令(RoHS1)が施行された。 改訂RoHS 指令(RoHS2)が2013年1月に施行され、現行RoHS 指令(RoHS1)(2002/95/EC)は廃止し、対象機器はCEマーキングが必須となった。 CEマーキングのための技術文書・適合宣言書作成など必要で10年間の書類保管義務が発生することになった。 また、4 種類のフタル酸エステル系が2015年6月に追加され、2019年から施行され、現在、RoHS指令での使用制限物質は合計10種類が対象となった。b. REACH規則 「EU域内にて、化学品(CHemicals)を製造、輸入する場合に、その製造者、輸入者に登録(Registration)、評価(Evaluation)を義務付け、高懸念物質については、関係当局が、認可(Authorization)、さらにリスクの高い物質には、禁止等の制限(Restriction)を設ける」ことを定めたEU の規則で、2007 年6 月1日に施行した(表3)。 EUにて製造または、EUに輸入される物質、調剤、成形品等が対象となる。 高懸念物質(SVHC=Substances of VeryHigh Concern)が成形品中に0.1%(1000ppm)以上の重量で有害物質が含有した場合には届出が必要となり、消費者から成形品中にどういう化学物質が含まれるかの情報を求められた場合、無料で45日以内に回答する義務が発生することになる。 次から次へと公表されるREACH 規則の高懸念物質は第23弾目が公表され、合計210物質(2020 年6月25日現在)となっている。1-3. リサイクル 資源循環型社会を構築する上でリサイクルは重要である。 リサイクルする場合に、有害物質をまき散らさないで、隔離して保管することが重要である。 リサイクルをするには、有害物質が含有しないのは当然である。2. グリーン・エレクトロニクスの進展 RoHS指令の規制対象の一つとなった「鉛」は、実装業界で接合に使用されている「はんだ」に鉛が含有していることから2000年代に対応を迫られる形となり、日本はプロジェクトを起こして逸早く対応することになった。 様々な鉛フリーはんだが登場し、RoHS 指令が2006年7月に施行されるまでに技術開発が完了し、切り替え作業が進展した。 その後、NGOなどが電子機器に6物質を含有しないように指摘したことも手伝って、有害物質を含有しない電子機器が登場し、「グリーン・エレクトロニクス」と称するようにもなった。 RoHS指令では、特定臭素系難燃剤であるPBBとPBDEの2 物質が使用制限になると同時に企業によっては、臭素系難燃剤を使用しないハロゲンフリー化が進展した。 これは法律での規制ではなく、企業の独自の要求によるものであった。 さらにNGOでは、電子機器メーカーが環境負荷低減活動を実施しているレベルを評価し、写真1のような分かり易い表現で公表し、4半期ごとに報告し、最終報告は16版まで及び電子機器メーカーに対して一層の環境負荷低減活動を求めたため「グリーン・エレクトロニクス」化が進展した。 また、アメリカで「電子製品環境アセスメントツール」ともいうEPEAT はElectronic ProductsEnvironmental Assessment Toolの略で、コンピュータやモニタなどの電子機器を対象にライフサイクルを通じて人体や環境に与える影響を評価するプログラムが電子機器に適用され、政府調達に利用されている。これもグリーン・エレクトロニクスを要求したツールでもある。<参考資料>1.青木正光、“Environmet 4.0とは?” エレクトロニクス実装技術 Vol.33 No.5 pp16?pp23 ( 2017)2.青木正光、“ 環境規制で変わる実装技術と実装用材料”第32回エレクトロニクス実装学会 春季講演大会 7A2-1 ( 2018)対象物質内容物質(Substance)製造・輸入量が1トン/ 年以上調剤(Preparation)その成分で製造輸入量が1 トン/ 年以上の全物質成形品( Article)ある条件下の含有物質1トン/ 年超える量表3 REACH規則の対象物質写真1 Guide to Greener Electronics(Version 16)/2010年