ブックタイトルメカトロニクス7月号2020年
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メカトロニクス7月号2020年
44 MECHATRONICS 2020.7 日本の産業構造の変化にともなう電子機器分野の話題商品を追う第25回 <電子機器の安全対策>連載 毎年、1月は工業会の賀詞交歓会が開催され、新年に向けて業界動向などを含めて工業会の会長挨拶や来賓の祝辞も披露される。 電子機器に関連する工業会として(一社)日本電機工業会(JEMA)と(一社)電子情報技術産業協会(JEITA)がある。JEITA の賀詞交歓会後に、ある集まりがある。 JEITAの安全委員会や安全試験機関のメンバーが賀詞交歓会後に参集して、浅草の浅草寺に安全祈願を約40年以上も前から続けている。この安全祈願がどのような背景で実施されるようになったかの裏話を含めて、今回は、電子機器の安全対策の重要性について紹介する。1. テレビ受像機の安全対策 米国のテレビの方式はNTSC 方式(走査線 525本、映像 30 枚/ 秒)に決められ、1941 年にテレビ放送を開始した。そして第二次世界大戦後の1946年に米国RCAが世界で初めてブラウン管式テレビの量産を開始した。1948年頃には、米国でテレビブームとなり、ゼニス社とアドミラル社などがテレビ受像機の製造に参入した。 一方、日本は、米国に遅れること7年後の1953年、NHKが白黒でのテレビの本放送を開始した。それに間に合わせるように早川電機工業(現 シャープ)が1952年にRCAから技術導入して、日本で初めてブラウン管テレビを量産し、国産第一号の14型テレビを1953 年に発売した。 1955 年には、日本でもテレビブームとなり、その後、1960 年に東京芝浦電気(現 東芝)が日本初の21 型カラーテレビを発売した。1970 年代になると市場はカラーテレビが当時の主力の話題の電子機器製品となり、旺盛な需要で大量生産へと向かい、作れば売れる時代であった。カラーテレビ(Color TV)は、クーラー(Cooler)、カー(Car)とともに新・三種の神器として3C の時代と象徴された。 ところが、1970 年前後頃、米国でテレビによる火災が発生し、家屋が全焼したり、中には焼死者がでたり、といった問題が起きた。以前は金属製や木製のキャビネットであったが、生産性向上のためにプラスチックの筐体へと代替され、燃え易い筐体へと移行していた背景もある。難燃性も水平難燃性試験であり、規格としては少し緩い位置付けにあった。 消費者に対する安全対策が急務の課題となり、ニクソン大統領が消費者製品特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 青木 正光安全法(CPSA=Consumer Product SafetyAct)の法律に署名し、CPSAが米国議会によって1972 年10月27日に制定された。1) 火災事故が発生したテレビは、UnderwritersLaboratory(UL)の安全規格 UL492(Radio andTelevision Receiving Appliances)に準じて安全性に適合していることを確認し、認証された製品であった。認証済みテレビからの火災事故であったため、ULも事態を重くみて、見直しが実施された。 調査の結果、この時のテレビの火災事故の原因は、夜間の送電電圧が上限にふれ、かつ、電気回路に安全性配慮に欠けており、難燃性試験はASTMの試験方法が採用され、水平方式で緩い方法であったなどの複合的な原因が重なったことによって、火災事故となったことが判明した。 使用していた難燃性試験は、ASTM D 635(TestMethod for Rate of Burning and/or Extentand Time of Buring of Self-Suporting Plasticsin a Horizontal Position)法を採用しており、“水平難燃性試験方法”であった。 安全規格で規定されている内容は多くの部分が暫定的な基準であり、絶対的なものではない状況であることを認識しておくことが必要である。安全規格に適合していることとは、その製品から危険性を生じないという保証にはならないのである。つまり、状況に応じて安全規格は見直され、順次、改訂されて運用されているのである。2) この時、テレビの電気回路に関しても安全対策が取られるとともに、高分子材料に対して難燃性についてメスがいられることになった。 水平難燃性試験方法では安全性が担保されないとみたULは、試験片を水平に配置する方法から垂直に配置して試験する“ 垂直難燃性試験”を確立し、UL94として1972年9月に制定した。3) 難燃性試験の概要を示すと表1 のようになる。試験する試験片は両方とも13±0.5mm×125±5mmの長方形の試料が用いられる。 ULでは、表1に示すように難燃性試験を垂直にして厳しい試験方法も採用するようになった。 試験片を垂直にして、その端にブンゼンバーナを当てて着火させて燃焼している状態が写真1である。この方式が広く世界的に採用されている。 その垂直試験難燃性試験方法の判定基準を示すと表2 のようになる。 なお、硬い板状の試験片と薄いフイルム状の試験片では、試験片が異なる。従って、難燃性の区分の表示も94V級と94VTM級と区分けしている。2. 消費者製品安全法/ 消費者製品安全委員会 以上のように安全対策がUL内で約2年間にわたって検討され、新たな難燃性試験も確立して始動するようになった。 丁度、このような時期に消費者製品安全法(CPSA)が、1972年10月27日に米国議会によって制定された。 1972 年の法律のセクション4は、米国連邦政府の永続的な独立機関として米国消費者製品安全委員会(CPSC)を設立し、その基本的な権限を付与した。 この法律は、CPSCに安全基準を策定し、消費者に怪我または死亡の不合理または重大なリスクをもたらす製品のリコールを追求する権限も与え、問題製品は出荷停止や使用禁止することもできる仕組みで、CPSCは、15,000を超えるさまざまな消費者製品を管轄している。 CPSAは、他の連邦機関の管轄に明確に存在す表1 難燃性試験方法写真1 垂直難燃性試験UL94の難燃性試験方法の概要水平燃焼性試験垂直燃焼性試験UL94: Standard for Tests for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances94HB 94V-0、94V-1、94V-2バーナ20mm10mm300mm6mm50mm試験片綿2525標線金網約45°試験片試験片45°(10)金網75