ブックタイトルメカトロニクス5月号2020年

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概要

メカトロニクス5月号2020年

44 MECHATRONICS 2020.5   日本の産業構造の変化にともなう電子機器分野の話題商品を追う第23回 <裏の技術(4)>連載  さて、前回まで3回にわたって表に出てこない「裏の技術」について紹介した。今回は、製品づくりでの裏打ちされた秘訣や特定分野に強い地場産業や課題について紹介したい。6. 強い製品には裏打ちされた秘訣 日本の高度成長時代は、「企業戦士」、「モーレツ社員」と呼ばれる人々が分厚い中間層となり、生産や消費の主役となった。そして、日本の産業の強みは、その技術力にあり、付加価値の高い製品開発とともに製造技術の優位性や秀でた現場マネジメント能力が競争力を支えたと言われている。多くの分野で、企業の規模の大小に関わらず独自技術による付加価値を生み出し、途上国の製品との差異化を図りながら邁進してきたのではないかと思う。 「ひとたび文明世界の過去および現代の知識を習得したならば、日本人は将来の機械技術上の成功を目指す競争において、強力な相手になるだろう」と1854 年に来航したペリー提督は、東洋の島国の日本の職人の完璧な手工技術に驚嘆し、他国に学ぼうとする日本人の好奇心にも驚いたという。ペリー提督の予言通りに日本は変身した。 以上のような精神を無視して安易な、今は儲かるからと言って努力を怠ると数年後にはしっぺ返しになってしまうことを心すべきと思う。 差異化が消費者に認められないと製品はコモディティー化し、消費者は価格の安さだけを求めるだけになってしまう。このようなフェーズに入ると注意しないといけない。 では、どんな取り組みがあるか具体例を挙げてオンリーワン企業を目指して活動した企業を紹介しよう。1) オンリーワン企業とは“他社に類をみない独創的な製品やサービスを開発し生産し提供している企業”となり、グローバル市場で首位の座を維持するすべを見い出し、ほとんど他社の追随を許さない輝き続けている企業がある。シェア80% 以上を保有する企業の代表例をあげてみると表1のようになる。 その中で、凸面鏡の防犯ミラーを販売しており、80% のシェアを有する企業にコミーがある。1988 年に発売した製品に「FFミラー」があり、FFミラーはFantastic Flat Mirrorから由来し、“ 不思議なミラー”ともいい100%のシェアを有している25 名の中小企業である。その技術力をかわれ、従業員15.3万人を抱える巨大企業のボーイング社の航空機にも採用されている。 この採用までの経緯に関しては、コミーのホームページで10 回にわたって詳細に紹介されており、特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 青木 正光その秘訣を知ることが出来るかと思う。(https://www.komy.jp/story/ 航空業界参入物語連載no1)7. 工場立地と地場産業 産業の分野によって工場立地に特徴があり、さらに古来からビジネスを展開している地場産業も存在する。以下、その概要について紹介する。7-1. 工場立地 表2に示すように工業の種類によって工場立地に特徴がある。 日本造船工業の世界における地位は、1956年以来1984 年まで連続29 年間世界第1 位の新造船進水量であり、その世界シェアも1956年の26.2%から1974 年の50.9% へと最盛期には世界の半分を建造し、不況期の1984 年でも、なお53.1%を占めて世界での地位をゆるぎないものにした産業で、長崎、佐世保、玉野、因島などで造船工業が進展した。 精密産業においては、諏訪、東洋のスイスと言われる岡谷などで進展した。鉱山機械では、長岡が、そして機械工業の「デパート」として京浜工業地帯などが挙げられる。 日本の石油化学工業の立地戦略として特徴的なものに東西立地型の市場戦略的拠点配置を挙げることができる。7-2. 地場産業a. 新潟地域 新潟には、金属加工産業が根付いており、その背景を地区別に紹介する。<三条市> 三条市近郊は、約350年前の江戸時代から和釘づくりをやっていた。農業中心であったが、信濃川の度重なる水害で農民は疲弊の極にあった。当地の代官が救済のために江戸から職人を呼び寄せ、農民の農閑期の副業として和釘づくりを奨励した。先人のたゆまぬ努力と研鑽で培われた工業技術は多岐にわたっており、一貫した製品づくりが可能となった。表2 工場立地の種類表1 オンリーワン企業の代表例