ブックタイトルメカトロニクス5月号2020年
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メカトロニクス5月号2020年
10 MECHATRONICS 2020.5 御社の概要と沿革などについて お聞かせください丸山 : 当社は、1980年11月に有限会社増田産業で創業を開始し、事業内容としては、キャップや電気的に絶縁するようなゴムの部品といった、シリコンゴムの成型品を製造/販売するところからスタートしています。その後、1986年4月には、株式会社オーエムに社名変更するとともに法人化し、現在の主力であるシリコンラバーヒータ事業へ本格的に取り組んでいきました。 なぜ、シリコンゴムの加工を行う会社からラバーヒータを始めたのかというと、私の妻の父にあたる創業者で当時の社長だった増田晃佳(2019 年1月死去)が、高度経済成長期にアメリカへ視察する機会があり、その時にスミソニアン博物館を訪れたのが1 つのきっかけになったと聞いています。私が聞いた話では、そこに展示されていたロケットなどを見学していた時、ロケットエンジンにシリコンゴムと同じオレンジ色をしたものが貼られていたようです。当時増田社長は、シリコンゴムを扱っていた関係ですぐにそれだと分かったようですが、ガイドに「これは何に使っているのか?」と尋ねたところ、「これはヒータです」という回答が返ってきたとのことでした。 その時期、スミソニアン博物館には『アポロ計画』で使われていたロケットやロケットエンジンなどが展示されていたとのことで、「ロケットを打ち上げるための液体燃料が冷えて固まらないようにするための対策として、どうしてもヒータが必要である」という説明を受けたようです。「シリコンゴムでヒータがつくれる」ということで興味をもち、「それなら日本国内でもシリコンゴムを使ってヒータをつくってみよう」といったことからスタートしたと聞いています。 そして、1987年10月には大阪営業所を開設し、東海エリアだけでなく関西エリアにも営業展開して代表取締役丸山 康弘 氏独自の手法で1 枚からのイージーオーダーに対応したシリコンラバーヒータ~短納期/低コストで幅広い分野に展開~いきました。業績も順調に伸びていき、さらに大きな市場を占めている関東エリアにも営業展開するため、1989 年4月には東京営業所を開設しています。 また、海外展開にも積極的に取り組んでいます。基本的に、シリコンラバーヒータの素材となるシート材料はアメリカから輸入していますが、増田社長は「そのアメリカからきたシート材料に日本独自の製法を加え、アメリカに逆輸入するとともに全世界に広げていきたい」といった考えを強くもっていました。その一環として、1990 年5月に台湾、1991年8月に韓国で、同業のメーカーとパートナー契約を結び、当社から技術供与を行っています。 そして、1995年4月に現在の社名となるオーエムヒーター株式会社に社名を変更し、新たなスタートを切っています。1997年7月には、規模拡大のため東京営業所を移転するとともに、ドイツ/スペインの同業メーカーと販売提携を結んでいます。 それから、当社の本社・工場は現在もそうですが、創業時から製造業では珍しい賃貸契約で行っています。これは財務の関係もあると思いますが、増田社長の経験も踏まえて継承されているスタイルで、名古屋市天白区植田で2回ほど規模が狭くなって移転し、現在の所在地である名古屋市天白区原には1999 年7月に移転しています。 そして、2003 年1 月にアメリカ、2005 年2 月にはヨーロッパにそれぞれ支社を設立しています。ただ、2008 年9月のリーマンショックの影響でやむなく撤退し、その後海外の拠点は特に設置しておらず、技術供与や販売提携などでの展開を行っています。 また、私自身はリーマンショックの1ヵ月前となる2008年8月に代表取締役に就任し、増田社長は取締役会長に就任しています。就任早々、リーマンショックという大きな波に直面しましたが、シリコンラバーヒータ自体が特に業界を問わず幅広い業界で使われていたこともあり、なんとか全体の3 割減程度の落ち込みでとどまることができました。 その後、2007年3月に取得していた航空宇宙産業向け品質マネジメントシステムのAS9100(JIS Q 9100)により、航空宇宙分野にも力を入れていき、航空機の修理などに使われる加熱治具としてシリコンラバーヒータを提供しています。航空宇宙関連の展示会にも出展し、それがきっかけとなり、2013 年9月にはフランスの販売会社とパートナー契約を結んでいます。 2016 年4月には、おかげさまで設立30 周年を迎えることができ、シリコンラバーヒータの専業メーカーとして、様々なお客様のニーズに耳を傾けながら引き続き事業展開しています。 シリコンラバーヒータの概要と 御社独自の技術などについて お聞かせください丸山 :シ リコンラバーヒータは、2枚のシリコンゴムの間に発熱線となるニクロム線を挟んだ工業用のヒータです。『アポロ計画』では、すでにアメリカのヒータメーカーがNASA(アメリカ航空宇宙局)に供給しており、当時はエッチング手法を採用したものが主流で、1 枚から自由に設計するようなことはできなかったようです。 日本でも、色々調査してみると需要はあったようですが、基本的にアメリカから輸入して販売されていたようです。ただ、販売されているのは規格品ばかりで、お客様からは「この機械にマッチするヒータはつくれないのか」、「エッチングでつくるにしても初期費用が掛かる」といった声が上がっており、「これはなんとかしたいな」と先代の増田社長は考えたようです。 そして3年程かけ、ヒータ1枚からイニシャルコストをそれほど掛けずにつくれる独自の手法を開発しました。それは、簡易な板に穴を開けてピンを通し、そこに発熱線を掛けていく手法で、1987 年9月に特許も取得しています。また、この手法は人が介在する作業が多く、大きな生産設備の中で量産するようなスタイルよりも、どちらかというと工房に近いイメージになっています。 当社では、この独自の手法で1枚からのオーダーに対応しており、納期も2 週間以内で提供できる体制を整えています。さらに、価格についてもお客様が安心して購入できるよう、ある程度の目安となる価格の提示をカタログに記載しています。オーエムヒーター株式会社 シリコンラバーヒータの専業メーカーとして事業を展開するオーエムヒーター株式会社。日本での需要拡大を目指すため、国内の市場ニーズに耳を傾け、そこから独自の手法を開発した同社の概要と技術、製品などについて、代表取締役 丸山 康弘 氏にお話を伺った。