ブックタイトルメカトロニクス4月2020年
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メカトロニクス4月2020年
44 MECHATRONICS 2020.4 日本の産業構造の変化にともなう電子機器分野の話題商品を追う第22回 <裏の技術(3)>連載 前回の<裏の技術(2)>「1-4.現場力」の続きから紹介する。b. 5S活動 モノづくりの現場で、基本として必要なのが5S活動である。「整理(Seiri)」、「整頓(Seiton)」、「清掃(Seiso)」、「清潔(Seiketsu)」、「躾(Shitsuke)」の5つのSをとって5S活動と呼ぶ。基本は3Sで、「整理」、「整頓」、「清掃」が最も重要な項目として日本の企業では古くから実践されている活動である。極当たり前のように企業内で実践されている(表1)。 この3S活動や5S 活動も、生産拠点が海外に展開されたために海外でも実践されるようになった。海外企業も日本の良き活動である5Sに自社の強みも入れて、例えば、意思決定が速い経営をしているとその企業は「速度」のSpeed のS、あるいは「安全」を重視している企業はSafety のSを、それぞれ使って5S+1S=6Sと称して、日本より一歩進めた形で活動している場合もある。 特に、企業の組織/運営/管理などを含めてISO9000シリーズの認証を要望する企業が多くなってきたため監査もあり、このような活動を目玉にしている場合もある。c. 生産性向上 日本の製造業の実態は、表面的な大企業による縦構造の組織だけで動いているのではなく、その水面下には中小の企業群による高度な技術をもった部品産業等の基盤技術産業が横組織として動いている。例えば、高精密ボールベアリング、高精度金型、高密度電子回路基板、超小型モータ、特殊半導体、高性能工作機機等である。 心あるモノづくりを実現するには、従業員が一致団結しての対応が必要である。そのためにも、工程管理や工場管理の領域にも踏み込んだ実践が重要である。生産を始める前の見えない準備と時間に特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 青木 正光も目を向ける必要がある。前述した5S 活動は基本中の基本である。 歩留向上やコストダウンは、日常活動の積み重ねでしかない。歩留り向上、生産効率の向上を目指す場合に、エンジニアの魂を呼び起こすことにもなる。 日本のモノづくりの基盤である中小製造業の業務効率化支援をすることで、中小製造業を活性化し、日本の製造技術を次世代に継承するのに繋がる。 これまで蓄積した技能にITを加えた独自の生産手法を構築した中小企業が、日本のモノづくりを牽引する。独創性とは関連の薄い工程にIoTを駆使してコンピュータに任せ、人間はモノづくりに特化した方が技術の向上速度が速いとも言える。そのため、従来にない考えに新たなIoT 技術を使ってのプロセスイノベーションを図る企業も出てきた。1-5. 人材確保 鉱物資源をもたない日本は、人材が最大の資源だった。製造業が有能な人材を集め、製品を加工して付加価値をつけることで日本の企業は外貨を稼いできた。 「じんざい」には、「人罪」→「人在」→「人材」→「人財」と様々な種類がある。“ 人材”から“ 人財” へと高めることが重要である。 優秀な人材を確保するために、設計者の住みたい所にデザインセンターを設置する例や、優秀な技術者がいる所にデザインセンターを設置する動きがある。顧客のいる所や安い賃金の国にデザインセンターを設置していたが、今やエンジニアの待遇を改善する経営者が増えつつある。 人材確保に、実は身近なところに人財がいることに気付いた企業もある。生産現場の経験も豊富で、正確な作業をする定年退職した60 歳代OBたちの経験者の活用である。還暦OB の活用である。製造業は人材を定着させ、やる気を引き出すことが欠かせない。2. 匠の技術 誰も真似のできない繊細な技や技術で、新しい価値を創造する「匠」の発想である。 ハイテク化が加速しても、製造現場は熟練工一人一人の感覚や感性という「匠の技」に負う部分が大きいのである。高いレベルの「経験工学」が求められる。知識を得ただけではなく、教えることが出来ても、自分のものにするには個人でいくつもの壁を乗り越えるしかない。「匠の知恵」となるには、それなりの経験が必要である。モノづくりの世界で機械に任せられない部分が、未だあり、人間の五感と経験に頼るしかない。例えば、高い精度が要求される金属加工は、五感を生かす職人技に頼るしかない。機械では実現できない。使う工作機械が同じでも金型の競争力を左右するのは、人間である。金型の仕上げには五感を磨く必要がある。機械の振動や切子の色などを通じて金型製作に必要な五感を磨いていくことがポイントである。この分野は、日本が得意とした分野である。 ITがいくら進歩しても、五感という「匠」を支える無形なものの大切さは、変わらないのであることを肝に銘じておくことが必要である。 生産する製品によっては、生産する技術の中で、取得するのに時間がかかり、自動化できないものがある。 ベテラン労働者が培ってきた技術/技能/ノウハウをどのように伝承/継承していくかが大きな課題となってきた。伝承/継承には、良い面だけではなく、過去の失敗を記録し、その教訓を後輩に伝えていくことも重要である。 製造業の就業者数は1,060 万人である。技術/技能/ノウハウを伝承/継承するのは、時間がかかり、円滑に進まない点にある。つまり、有能な技術者/技能者は一朝一夕には育たない。技能習得には時間がかかる。 団塊の世代には、「過去の製品に関する知識を保有」とか、「臨機応変な対応力」とかが備わっているとも言われる。 モノづくり技術を継承していくためにはヒトをつくらなければならない。企業によっては、工場の中に「技能塾」、「モノづくり道場」、「匠道場」、「匠工房」、「ベテラン道場」、「設備保全道場」、「保守実践道場」、「技能継承センター」、「品質道場」、「安全道場」などモノづくりに必要なワザを磨く道場や塾を設けている。一種の徒弟制度に似た方式で技能を後輩に継承していく仕組みの研修を実施している企業もあり、技能マイスターの制度を取り上げて実施している例もある。 技能伝承のために、若手技能者の習熟度を「見え表1 5S活動5S活動3S活動整理(Seiri)必要なものと不要なものを区別して、不要なものを長期保管しないで積極的に処分する整頓(Seiton)決められた物を決められた場所に配置し、いつでも取り出せるようにする清掃(Seiso)身の回りや職場を綺麗に清掃して、日頃から綺麗な状態を保つようにする清潔(Seiketsu)整理・整頓・清掃を維持し、職場の衛生を保つように心がける躾(Shitsuke)決められたルールや手順を常に守り、実行するように習慣づけを実施する