ブックタイトルメカトロニクス3月号2020年
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メカトロニクス3月号2020年
MECHATRONICS 2020.3 11を活かし、ようやく製品化に漕ぎつけたモデルです。 工場などで使われている吸着パッドは、エアホースや電源の確保などが必要なため、単体で持ち運びすることが困難ですが、この製品はオールインワンのポータブルタイプなので、どこにでも持ち運ぶことが可能です。内蔵電池で7時間ほど連続吸着ができ、吸着力も漏気がなければ1 台で120kg 位まで対応可能です(写真2)。 それから、先程も少しお話したNEDO の「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」に採択されて開発したインフラ診断ロボット『ALP』にも、当社独自の真空吸着技術が活かされています(写真3)。 この製品は、劣化する社会インフラの点検ロボット分野の橋梁等の検査を行うロボットとして、開発設計コンサルタントであるJパワーグループ、岡山大学、法政大学と共同で開発しています。高精度写真解析/打音検査/レーザ検査装置などを搭載した約85kg の自走ロボットになります。 従来、インフラ維持管理の検査などは人の手による作業が多く、ロボットなどを利用した場合も非常に重く、大規模なものを使用するケースが多いようです。ただ最近では、安全面やコスト/効率面などから検査方法も色々と見直されるようになり、手軽に利用できるロボットへの関心が高まっています。 そのため、当社では『ALP』をさらにコンパクトにした壁面自走小型ロボット『Tenryu-Vmin』も開発しています(写真4)。 この製品は、サイズ:W300×D50×H210mm、重量:約8kgと小型軽量を実現し、容易に持ち運ぶことができます。導通検査/遠隔視認装置などの搭載が可能で、狭いスペースにもアクセスすることができ、建造物壁面や風力ブレード面の自走/点検、コンクリート面やモルタル面での自走を実現しています(写真5)。 『ALP』と『Tenryu-Vmin』は、製品化に向けた調整を引き続き行っており、試作品をお客様に使っていただきながら色々なご意見を反映している状況です。 次に、当社を設立するきっかけになった『ゴンドラ振れ止め装置』についてもここでご紹介しておきます(写真6)。 この製品には、基本6個のタコパッドを搭載した回転体が使われており、この回転体をゴンドラに設置することで高層建造物壁面に常時吸着することができ、ゴンドラのスムーズな昇降を可能にします。既設のゴンドラに容易に脱着でき、作業性や安全性の向上に貢献します。 イメージとしては、ゴンドラ自体に追従して水の上をスーと歩くような感じで動作し、装置自体には制御機能を装備していません(写真7)。これは以前、海外企業と連携して開発を行った時に、制御機能を装備して失敗した経験を活かしており、すでに特許も取得しています。 この他にも当社では、過去の経験やノウハウを活かしながら、お客様のニーズにマッチする色々なロボットや装置の提供を行っています。 また、当社が拠点を置くここ相模原市は、非常にロボット産業が盛んな地域で、「さがみはらロボットビジネス協議会」といったロボットビジネスを推進するためのプラットフォームも組織されています。当社も最近ですが会員となり、地域のロボットビジネスに少しでも貢献できればと考えています。 「さがみはらロボットビジネス協議会」に ついて、もう少し概要や取り組みなどお 聞かせください林: 「 さがみはらロボットビジネス協議会」は、ロボットをテーマとしたビジネスの推進を多面的に支援するため、相模原市が2014年に設立しています。事務局は相模原商工会議所が担当し、相模原市内の企業、大学等研究機関、金融機関、行政や支援機関で構成され、ロボットビジネス推進のための地域のプラットフォーム的な役割を担い、ロボット産業の振興や起業のビジネス支援に取り組んでいます。 相模原市は、元々軍事都市だったのですが、それが基礎となって確かな技術をもつ企業が多く集積する地域となり、全国有数の内陸工業都市へと発展していきました。最近では、東京都心や横浜など幅広い圏域との充実した交通網も整備され、さらに大手企業の基幹工場や研究施設なども数多く立地するなど、首都圏の経済を支える生産/研究拠点として着実な発展を続けている状況です。 主な活動としては、共同出展などによる主要展示会への出展支援や相模原市内に拠点を置く中小企業の技術PRのためのガイドブックを作成し、市内中小企業の魅力を発信しています。また最近では、会員同士の意見交換の場としてミーティングやコンソーシアムなども行われ、企業間の連携などを通じて、新たなビジネスチャンスに繋げられるようなきっかけづくりに力を入れているようです。 御社の今後の展開についてお聞かせく ださい。林 : 当社もロボット関連に携るようになって15年ほど経ちますが、色々な面でようやくロボット市場においてもビジネスを展開できるような環境が整えられたように感じています。ここからは、当社としてもお客様のニーズをいち早くリサーチし、社会に貢献できるような製品を世に出していけるように取り組んでいきたいと考えています。 そのためには、私自身もさらなる技術の向上が必要になってきますので、「さがみはらロボットビジネス協議会」で行われるミーティングやコンソーシアムも上手く利用させてもらいながら、レベルアップに努めていきたいと思っています。 また、現在主力となっている『タコパッドⅢ』や『ゴンドラ揺れ止め装置』についても、実際に使って頂いているお客様の声を反映しながらブラッシュアップを図っていきます。これは、使われる環境においても色々と変ってきますので、お客様のニーズをしっかり把握して製品に活かしていきたいと思っています。 それが技術の向上にも繋がってきますし、新たなビジネスチャンスに発展していくと期待しています。本日はお忙しい中ありがとうございました。所在地 :U R L :事業内容 :相模原市緑区https://stella-rtec.co.jpハンディ式電動吸着パッドの設計/開発/販売、各種壁面吸着走行ロボットの設計/開発/販売、など。ステラ技研株式会社・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・写真5 『Tenryu-Vmin』を利用した検査事例写真4 壁面自走小型ロボット『Tenryu-Vmin』写真6 『ゴンドラ揺れ止め装置』写真7 『ゴンドラ揺れ止め装置』を利用した作業事例