ブックタイトルメカトロニクス8月号2019年
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メカトロニクス8月号2019年
10 MECHATRONICS 2019.8 御社の沿革などについて お聞かせください藤森 : 当社は1969年にソニー株式会社(以下、ソニー)のグループ会社として設立されたソニーマグネスケール株式会社が起源であり、今年がその創業50周年になります。事業内容は精密機械の制御用位置検出装置およびデジタル測定・計測システムの開発/製造/販売です。設立当初の商品は社名にもなっている“マグネスケール”という磁気を検出原理に使った位置検出システムでした。 当時のソニーは民生分野で音響製品、テープレコーダ、そして、次の時代に向けたカラーTVやVTRなどの商品を事業の柱としており、世界に先駆けた商品化のために必要なデバイスやメディアを自社で開発生産をしていました。従って、テープレコーダなどの磁気記録再生のための磁気ヘッドや磁気テープ用磁性材料の研究開発も進んでいました。そのような研究の中で、磁束応答形マルチギャップヘッドという工作機械向けの磁気スケールのキーデバイスが開発されます。このヘッドの開発は、スケールを開発した当時の研究部長が将来のソニーの事業新領域として来るべきデジタルエレクトロニクス分野に取り組む必要があるとの強い信念をもって取り組んだものと聞いています。その他にも、電子計算機などを開発していましたが、ソニーが経営資源を、到来する ものづくりには欠かせない“ 位置検出”を行う計測システムで事業を展開し、今年で50周年を迎えた株式会社マグネスケール。ソニーのグループ会社としてスタートし、10年前にDMG MORIのグループ会社として新たなスタートを切った同社の概要と事業展開、製品などについて、代表取締役社長 藤森 徹 氏にお話を伺った。代表取締役社長藤森 徹 氏生産性向上に寄与する精度と速さを追求した計測機器スケール~3つの製品群で事業領域の拡大を目指す~カラーTV、VTR時代に向け集中しなければならない中、多くのものは事業化への道を断念せざるを得ませんでした。しかし、先の強い信念のもと続けた磁気式スケールだけは、1968年に商品化にこぎつけ、商品名“マグネスケール”として国内外の展示会で発表し、確かな手ごたえを得るに至りました。 ソニーとしてはこの磁気スケールの事業化を民生機器事業と分けて独立採算制を取って進めることとしたため、翌年の8月にソニーマグネスケール株式会社を設立することになりました。初代社長には、前ソニー中央研究所所長の鳩山道夫氏が、ソニー創業者で社長の井深大氏は会長を務め、主だった者がソニーから出向または転籍して“マグネスケール”を主商品とする計測機器・システム事業をスタートしました。 当時の工作機械用のスケールには、いくつかの方式がありましたが、特に光学の検出方式のものが一般的でした。しかしながら取り付けが難しいこと、工作機械などのように油などが飛散する過酷な環境ではスケールが汚れ、光を通さなくなり、メンテナンスに苦労するなどの問題点もありました。マグネスケールは磁気を使用しているので汚れに強く、取り付けもシンプルであったため、工作機械業界において好評をいただき、またたく間に普及していきます。これが当社の第一歩となっています。 1980年代になるとデジタルオーディオ時代が始まり、CDプレーヤーが発売されソニーにおいて光ディスクの記録再生技術が花開きました。この記録再生技術は将来必要とされる高精度な位置検出手段の可能性が高いため、ソニー中央研究所からエンジニアを招聘し、レーザスケールの開発商品化が始まりました。これは工作機械が0.1マイクロメートルの分解能があればよかった時代に、そのさらに千分の一の細かさを実現する製品でした。この商品化のおかげで、現在では、半導体製造装置や液晶製造装置になくてはならない製品となっています。 時代が進み、工作機械がマニュアル機からNCコントロールに移ってくると、精度の要求が格段に上がってきます。今まで千分の1ミリ(マイクロメートル)もあれば十分であった分解能がナノメートルの領域まで入っていくと、磁気式はスケール目盛りの元となる記録波長が光学式に比べどうしても長くなるため、高精度化に遅れが出始めました。経営的にも、ソニーで開発された様々な製品を扱ったり、短期で経営陣が変わったり、社名も変更されるなど変化が続きました。しかしながら工作機械には磁気式が有利であるという信念をもつ当社の社員たちは、課題に挑戦し独自技術を確立して、最新の工作機械の要求を先取りする高精度アブソリュートマグネスケールを商品化し、さらに耐環境に強い特長を提供するに至っています。 未だに、光学式に遅れを取っていた時代のイメージをもたれているユーザーも少なくありませんが、性能数値で全く遜色のないことを示し、磁気式の利点を理解していただき、実機評価などのアプローチの結果、光学式が主流の欧州でもかなり採用実績が増えてきました。 2010 年にはソニーグループから離れてDMG森精機株式会社(以下、DMG MORI)のグループ会社となり、社名は創立時の名称を活かし、株式会社マグネスケールとして新たなスタートを切りました。DMG MORIは磁気式の良さを評価して、高精度アブソリュートマグネスケールをいち早く採用してくれた工作機械メーカーでもあります。 1981年、ソニーマグネスケール時代ですが、量産体制を確立するため神奈川県伊勢原市に新工場を建設以来40年、その後立ち上げたレーザスケールとともに一個所で生産対応してきましたが、DMGMORIに移るとともに増産の兆しが見えてきたため、将来に備えDMG MORIの伊賀事業所内に工作機械向けマグネスケールの製造工場を建設し、伊勢原はレーザスケールのみの工場として2拠点製造体制で増産に臨んでいます。また、昨年の6月に東京都江東区に東京本社を設立し、本社機能、営業本部、研究開発部門を移しました。特にここでは、次世代に必要とされるアナログ・デジタルのデバイス開発やソ株式会社 マグネスケール写真1 高精度マグネスケール『SmartSCALE』 写真2 超高精度レーザスケール