ブックタイトルメカトロニクス3月号2019年
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メカトロニクス3月号2019年
MECHATRONICS 2019.3 45表2 エレクトロニクス関係の技術導入例年度内容1950 年米国より有線無線通信機械器具の製造技術導入米国よりビニル、アセタール絶縁電線製造技術導入米国よりプラスチック絶縁ワイヤーケーブル、低周波ケーブル、搬送軸心ケーブルの製造技術導入1952 年日立製作所、東京芝浦電気(現 東芝)がGEやRCA社と技術提携早川電機工業(現 シャープ)がRCA とテレビ製造技術導入契約締結松下電器産業(現 パナソニック)が電球、蛍光管、真空管などでPhilips と提携調印松下電子工業(現 パナソニック)はPhilipsとブラウン管に関してノウハウ契約を結ぶ1953 年旭ガラスがCorningと技術提携契約を締結し、旭特殊硝子を設立テレビ受像機等の製造技術導入を政府が許可し、RCAから日本電気など3社へ三洋電機がラジオ受信機、テレビ受像機の特許実施権をRCA から取得三菱電機はラジオとテレビに関してRCA と技術提携し、Westinghouse と蛍光灯に関して技術提携する1954 年東京芝浦電気(現 東芝)、三菱電機、東京通信工業(現ソニー)等がWesternElectric とトランジスタで技術提携1963 年日本アビオトロニクスが米国ヒューズ航空社から技術導入してスルーホール方式の多層板の生産体制に入る表3 日本の品質管理技術の歩み年度内容1945 年日本規格協会設立1946 年Mr.H.M.Sarasohn が通信機器メーカーに対して統計的品質管理(SQC)の指導を実施1948 年SQC の普及活動を日本科学技術連盟にて5 人の研究グループで開始1949 年工業標準化法を制定(JIS 施行)1950 年日本規格協会は「品質管理方式研究会」を発足デミング(Deming)博士来日。朝鮮戦争の勃発によって特需となり日本の産業界は米軍が指定する品質を守る必要があり、真剣に品質管理を取り組むことになる1951 年日本科学技術連盟の中堅技術者達が品質管理に関して産業界全体に広めるためにデミング博士の講義録を販売して作った基金で日本科学技術連盟に「デミング賞」を創設する1953 年トヨタ「かんばん方式」、JISCがIEC 加盟、JIS マークの表示制度、抜取り検査のJISが制定される1954 年ジュラン博士が来日し、品質に関する講義を実施する1956 年日本短波放送で「品質管理講座」の放送を開始OR(Operation Research)、IE(Industrial Engineering)、VA(Value Analysis)などの手法を導入1958 年標準化全国大会(毎年10月)を開催1960 年「品質月間」運動開始(毎年11 月)1962 年「現場とQC」を4 月に発刊、QC サークルが誕生QCサークルは、就業時間後に討論して全員から職場の改良を提案させ、よいものがあれば取り上げて品質の改善に努めた1965 年品質管理シンポジウム開始、ZD(Zero Defects)運動の手法が米国より伝わる1967 年Q-S(標準化と品質管理)全国大会(毎年5 月)開催1969 年第1 回 品質管理国際会議が日本で開催1970 年日本品質管理賞創設1971 年第1回 全日本選抜QCサークル大会を11月に開催1973 年「現場とQC」誌を「FQC」誌に名称変更1978 年第1回 国際QCサークル大会(ICQCC '78-Tokyo)を7 月に開催1988 年「FQC」誌を「QC サークル」誌に名称変更1989 年国連提唱の「世界品質の日」を11 月の第2 火曜日として定める1996 年日本科学技術連盟がTQC からTQMと呼称2000 年日本科学技術連盟が日本品質奨励賞を創設2005 年日本科学技術連盟が「いいQの日」11 月9 日を品質強化月間として定める表1 戦後のエレクトロニクスの設立状況年度内容1946 年東京通信工業(現ソニー)設立合資会社長野家庭電器再生所(現 新光電気工業)設立春日無線電気商会(後のケンウッド社)設立1947 年三洋電機製作所(後の三洋電機)設立1953 年日本電気ラジオ事業部を分離独立させて新日本電気設立写真1 早川電機の白黒テレビ写真2 Qマーク日本の産業構造の変化にともなう電子機器分野の話題商品を追う第9回 <戦後のエレクトロニクス分野での技術導入>ペレーションズ・リサーチ(OR)、統計的手法、実験計画法、信頼性工学、価値工学(VE)、価値分析(VA)など多岐にわたった。 1956 年7 月には、日本短波放送で品質管理に関するラジオ講座も1 年3ヵ月にわたり、「現場管理者のための品質管理講座」、「不良の防止」、「売れる商品の品質設計」、「製造コストの切り下げ」などのテーマで開催された。 1960年代後半には、特性要因図、パレート図、ヒストグラム、散布図、チェックシート、管理図などの統計的手法を現場の作業者に作り方、使い方を伝授した。そして現場の作業者は、製造ラインごとにグループを作り、自分たちの製品の不良品の現象を整理し、原因を分析し、多くの問題を解決していった。日本で実施された小集団活動である。これが品質管理を応用したQCサークル活動の始まりであり、日本科学技術連盟が主催するQCサークルのリーダーによる成果発表会なども各地で頻繁に開催された。 企業も同様の成果発表会を社内で実施するようになり、発表会場の壇上にはQマークが飾られて実施された。QCサークルごとに切磋琢磨して、日本の製造業の「現場力」を高めていった(写真2)。 欧米から「技術移転」された品質管理(QC)が全社的品質管理(TQC)へ、更に総合的品質管理(TQM)へと発展し、日本の製品は品質のバラツキが無く、品質が良いと高い評価を世界から得るまでになった。2-2. 製造技術習得 欧米から“技術”を導入し、さらに“管理技術”も導入して品質の良いモノづくりに邁進していったが、日本人は品質のさらなる改善意欲が高く、多くの日本の製造企業は競って欧米に調査団を派遣し、展示会視察や工場を視察させて貰い、生産ラインを見た経営者や技術者は欧米企業からヒントとなるものを持ち帰った。そして、自ら工夫を凝らして新たな製造技術を確立して生産性のよい生産技術も確立した。 電子回路業界では、1970年6月に米国NEPCONEastに日本から58名の視察団を派遣して進んだ米国の生産技術などを吸収した。これがきっかけで、毎年2 月に米国の西海岸で開催されるNEPCON-West の展示会に視察団を派遣し、関連企業に訪問することが慣例にもなっていた。この頃は「欧米から学ぶ」の時代であった。欧米の各企業の工場を見学することで日本の製造企業が短期間に技術を習得し、欧米企業を脅かすことになるとは思いもよらなかったに違いない。 以上、このように第二次大戦で疲弊した日本の各種産業に多くの刺激を与え、復興に寄与するとともに更に大きな飛躍発展の原動力となったのは、欧米諸国から“技術導入”と“管理技術”を中心とする「技術移転」が大きく寄与したと言えよう。欧米からの「技術移転」のおかげで日本は、1970 年代に欧米に追いつき先進国の仲間入りをすることができたといわれる。 特に製造現場から始まったQCサークル活動は、現場の作業者が職場の問題点を摘出して改善に取り組む運動として始まり、品質の良い製品づくりとなった。<参考資料>1) 天野倫文 et.al.,“日中家電産業発展のダイナミズム(上)” 経営論集 第58 号 p129(2003)2) http://www.earlytelevision.org/rca_trk-12.html http://www.earlytelevision.org/rca_trk-9.html http://www.earlytelevision.org/rca_trk-5.html http://www.earlytelevision.org/rca_tt-5.html3) シャープ白黒テレビ http://www.sharp.co.jp/100th/pdf/chapter03.pdf4) マーク・ピーターセン,“日本人の英語” p2 岩波書店 (1988)ISBN4-00-430018-5