ブックタイトルメカトロニクス11月号20108年

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概要

メカトロニクス11月号20108年

MECHATRONICS 2018.11 51年5月)まで進展し、円高対策が急務の課題となった。為替相場の変動は、モノづくりの世界に大きく影響したのは言うまでもない(図2)。日本は、急激な円高の進展に伴って海外での生産を余儀なくされ、“Made in Market”が進展し、白物家電等は、現地生産が加速した背景があり、日本で生産する電子機器は、ある程度携帯機器などに特化した経緯がある。 パソコンでは、日本語対応が必要な国内で、NECの「PC98シリーズ」が市場を制した。1990 年代以降に爆発的に普及したノートパソコンは小型・軽量の日本製品が海外でも人気を博し、東芝のDynaBookシリーズは1990年代後半に世界シェアトップの座を守った。日本が得意とした「軽薄短小」化技術を駆使してのモノ造りであった。日本のメーカーは市場のニーズに応じた製品を独自の技術で開発してきた。 1991 年のバブル崩壊後の低迷と米国の巻き返し、韓国、台湾、中国の台頭で、日本の製造業は自動車などを除くと一気に失速してしまった。特に2010 年前後からデジタル化に伴う価格競争が激しくなると日本勢は劣勢となり、次第に市場を奪われる状況となった。 2000 年代になるとこうした流れは大きくかわる。米国のアップル等のICT(Information andCommunication Technology)企業がスマートフォンなどで世界市場を席巻するようになる。自社が開発やデザインといった製品の根幹を手掛ける一方、生産は人件費の安い中国などのメーカーに委託する方式が定着していった。そのため電子機器製造受託サービスを手掛けるEMS(ElectronicsManufacturing Service)が注目されるようになった。 一時衰退しつつあった欧米と成長著しいアジア勢との関係が深まる中で、生産現場の技術力を武器に世界で戦ってきた日本は取り残されてしまった。 一方、白物家電市場をみていくと国内市場を中心に白物家電が堅調な要因は、娯楽品ではなく生活に密着した必需品であるため置き換え需要などをはじめ、不況期にも安定した需要が見込めること、さらに“エアコン”、“冷蔵庫”、“洗濯機”、“掃除機”などの中・大型の白物家電は品質、省エネ性能などの付加価値を価格に反映しやすい製品分野であることなどが挙げられる。 日本の大手家電メーカーは白物家電のうち、主にこうした中・大型の白物家電に注力し堅調な売り上げを確保している。 しかしながら、こうした日本の白物家電市場にもハイアール、LGなど中国や韓国勢が本格的に参入し、日本市場に適した仕様(例えば省エネ性能など)の製品を比較的低価格で投入する動きが見られ始めている。 今後、これら海外勢の影響により価格競争の要素が大きくなると白物家電における日本の大手家電メーカーの現在の優位性が失われる可能性も出てきた。白物家電は最適地生産を模索しており、電機メーカー各社が東南アジアで現地生産・販売する『地産地消』の取組みを加速している。 また、ダイソン、デロンギ、エレクトロラックス、ミーレ、ブルーエア、アイロボットなどの特定の製品分野に強みをもつ海外企業が日本市場に参入し、魅力ある商品により消費者の支持を集めている。こうした海外企業の製品は、外観デザインや機能性に特徴をもち、これまでの日本の家電にはない消費者への高い訴求力を備えており、比較的高価格の製品が多いにもかかわらず、国内市場での存在感を高め、売り上げを伸ばしている。 このように、生活密着型の家電製品において、日本の消費者の海外製品への抵抗感も徐々に薄れつつあり、白物家電市場も変化・多様化の流れにあると言える。これまでの「日本固有のスペック(ガラパゴス化)による参入障壁が高い市場」という我が国白物家電市場の状況は徐々に変わりつつある。<参考資料>1. 青木正光、“話題商品が必要とするプリント配線板”エレ  クトロニクス実装技術 Vol.23 No.3 p24(2007)2. 青木正光、“日本の電子回路基板産業の現状と将来展  望”エレクトロニクス実装学会誌 Vol.21 No.3 p207  (2018)3. 大内秀二郎、“電気洗濯機市場における非家電メーカー  のマーケティング活動”- 日本電装を事例として歴史研  究 ? 商経学叢 Vol.51 No.1 pp169~pp189  (2004)日本の産業構造の変化にともなう電子機器分野の話題商品を追う第5回 <戦後の産業の変遷と話題商品の登場>年 度 電子機器の誕生と出来事1894 年  国産第1 号の扇風機( 芝浦製作所) 発売1925 年  国産第1号の鉱石ラジオ (サイモフォン A-2/東京電気) 発売1930 年 国産第1 号の攪拌式電気洗濯機(Solar/ 芝浦製作所) 発売 国産第1 号の電気冷蔵庫(SS-1200/ 芝浦製作所) 発売1931 年  国産第1 号の電気掃除機 (VC-A/ 芝浦製作所) 発売1946 年  米軍進駐軍家族用住宅向け家具・家電製品の大量(2 万戸) 発注1950 年  電気トースター発売、回転式洗濯機( 日本電装) 発売1952 年  国産第1号テレビ(TV3-14T/ 早川電機工業)発売1953 年 民法テレビ放送開始、噴流式洗濯機(SW53/三洋電機)発売(家電元年)1955年 電気?? (東京芝浦電気)、トランジスターラジオ(TR-55/ 東京通信工業)、電気毛布、 ジューサ( 東京芝浦電気) などを発売1957 年  電気大工道具、電気やぐらこたつを発売1961 年 国産第1号のスプリット型ルームエアコン発売(CLU-7I・CLU-7H/東京芝浦電気)1964 年  オールトランジスタ電卓発売(コンペット CS-10A/早川電機工業)1965 年 オールトランジスタ式家庭用ビデオ「ビデオコーダー」1号機発売(CV-2000/ ソニ ー)1979 年 ヘッドホンステレオ(Walkman TPS-L2/ソニー)発売、パソコン(PC-8000 シリーズ /NEC)発売1982 年  CD プレーヤー(CDP-101/ソニー)発売1983 年  家庭用ゲーム機「Family Computer(ファミコン)/ 任天堂」発売1985 年  8mm 方式据置ビデオ1 号機(ソニー/EV-S700)発売1989年 ノートパソコン(Dynabook SS001/ 東芝)、携帯電話(MicroTac/モトローラ)、 カメラ一体型VTR(CCD-TR55/ソニー)が商品化され、この3 機種はヒット商品となる1994 年  ゲーム機(Play Station/ ソニー)発売1995 年  初のモニター搭載した 25 万画素デジタルカメラ(QV-10/ カシオ)発売1996 年 DVDプレーヤー(SD-3000/ 東芝)発売1999 年  家庭用ロボット(AIBO/ ソニー)発売2001 年  シリコンオーディオ(iPod/Apple)発売2002 年  掃除用ロボット(ルンバ/iRobot)発売2008 年  携帯電話(スマートフォン)(iPhone /Apple)発売2009年 羽根のない扇風機 (AIR MULTIPLIER/Dyson)発売2010 年  タブレット端末(iPad/Apple)発売2011年 4K 液晶テレビ(フルハイビジョンの4倍の解像度)発売2012年 スマートウオッチ(SmartWatch MN2/Sony)発売。 翌年ウェアラブル機器元年となる2017 年 AI スピーカー(G3, P3/オンキョー)発売 通訳機(POCKETALK/ ソースネクスト)発売表1 話題商品の製品化時期の変遷(日本)※企業名は当時の会社名