ブックタイトルメカトロニクス2月号2018年

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概要

メカトロニクス2月号2018年

10 MECHATRONICS 2018.2 御社の概要などについて お聞かせ下さい川口 : 当社は、「重心の位置」と「慣性テンソル」という回転運動に関する「慣性」を計測する『レゾニック計測技術』をコアに、社会に新しい価値基準を提案し、人類の福利に貢献できるよう努力している会社です。 レゾニック計測技術は、2010 年に東京工業大学(以下、東工大)において、ドイツから留学生として来日していたロバート・クレッパー博士が発明した技術になります。今まで、慣性テンソルの計測は非常に難しいとされていましたが、このレゾニック計測技術により、迅速で安全に精度良く測れるようになりました。 また、レゾニック計測技術は東工大において発明された技術なので、特許は同大学から出願されています。そのため、すべて漢字で出願しなくてはならないため、当時共同で研究を行っていた私がお手伝いしていました。そのような経緯で、ロバート・クレッパー博士から「僕はドイツで創業するから、川口さん日本で会社を起こしてみないですか」と誘われ、2011 年にドイツのベルリンにRESONIC GmbHを設立し、私も2013 年に神奈川県横浜市において、同社より52%の出資を受ける形で当社を設立しました。そして、両社とも東工大発ベンチャー企業として、レゾニック計測技術の特許ライセンスも受けています。 創業当初は、まだ世に知られていないような技術だったので、会社の経営が成り立っていくのか不安もあり、私自身当時は別の職業を掛けもちしている状況でした。しかし、会社設立時より「東工大横浜ベンチャープラザ」という独立行政法人中小企業基盤整備機構が東 慣性特性を計測するレゾニック計測技術をコアに、装置の販売や受託計測サービスで事業を展開する株式会社レゾニック・ジャパン。東京工業大学発のベンチャー企業として創業し、現在は自動車業界をメインに幅広い分野で色々な取り組みを行っている。今回は、同社の概要、慣性特性とはどのようなものか、またそれを計測するレゾニック計測技術について、代表取締役川口 卓志 氏にお話を伺った。株式会社 レゾニック・ジャパン代表取締役川口 卓志 氏慣性特性を計測する独自のコア技術で社会に新しい価値基準を提案~スピーディー/高精度/安全をコンセプトにしたレゾニック計測技術~工大と連携し、同大学のすずかけ台キャンパスの隣に整備/運営を行う大学連携型起業家育成施設(インキュベーション施設)に入居していたため、色々な方々の支援を受けることができ、何とか会社を経営していける目処を付けられました。それにより、掛けもちしていた別の職業を辞めて、こちらの職業に専念することになりました。 技術的には大変好評を頂いており、装置はドイツで製造されていますが、国内の自動車関連メーカーなどに納入実績もあり、1期目から黒字収支になっています。ただ、装置自体は非常に高価なものになるので、短期間に数多く販売することは非常に難しいと考えていました。そのため、2015年に神奈川県綾瀬市に綾瀬事業所を開業し、翌年から受託の車両計測サービスを開始しています。こちらの計測サービスは、非常に好評で自動車関連だけでなく、様々な分野から問い合わせを頂いており、現在は装置販売とともに2本柱で事業展開している状況です。 慣性特性について もう少し詳しくお聞かせ下さい川口 : ものには、質量/重心の位置/慣性テンソルというそのものの運動を規定する量があり、この量が慣性特性や質量特性と呼ばれています。質量や重心の位置については、皆さんある程度ご存じかと思いますが、慣性テンソルはあまり聞きなれない言葉だと思いますので、少し説明させて頂きます。 例えば、フィギュアスケートの選手がぐっと身体を縮めると回転が速くなり、大きく身体を広げるとゆっくりな動きになります。これは、質量は変わらずに、回転のしやすさを変えているためです。慣性テンソルとは、そのような回転に関する慣性のような量で、回転運動に関するものは、基本的に慣性テンソルという同一方向に平行移動する並進運動の質量のようなものになります。質量が大きいと並進運動をしにくいです。しかし、質量が大きくても回転のしやすさはまた別の量が規定し、その量が慣性テンソルということになります。 そして、質量/重心の位置/慣性テンソルといった3つの量を知ることにより、ものにある力がはたらいた時に、そのものの次に生じる運動が一意に決まります。そのため、運動を予想したり、制御する上では、非常に重要な量といえます。例えば、地球上にない人工衛星などはロケットから放出される時に、これらの量が定まっていないと人工衛星同士で衝突したり、軌道に上手く乗れないなどの不具合が生じたりします。 特に振動制振系では、慣性特性が非常に重要な量になってきます。当社事業所にも、お客様からお預かりしている大型のエンジンがいくつかありますが、これらのエンジンがどのような慣性特性をもっていて、どのようにエンジンマウントで支持するかによって、エンジンの振動特性が決まります。どのように振動するのかが分からないと上手く支えることもできないので、コンプレッサやエンジンなど振動を発生させるものは、慣性特性を計測することで支持の仕方が決まります。 また、車の運動解析をする上でも、慣性特性は重要な量になります。車の乗り心地や走行性などは、今までテストドライバーが試乗して主観的な感覚で少しずつ調整を行っていましたが、これは慣性特性がもとになって生じる量になります。そのため、車の乗り心地や走行性などは慣性特性を計測すること図表1 従来の計測技術① 図表2 従来の計測技術②