ブックタイトルメカトロニクス11月号2017年

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メカトロニクス11月号2017年

50 MECHATRONICS 2017.11 「環境白書」が、冒頭の“第1部 総合的な施策等に関する報告”で取り上げるトピックスには、このところ、日本の地理的特殊事情による自然災害が大きなウェイトを占めており、詳細に論評されている。2011年3月に発生した“東日本大震災”は2011年度版より毎年取り上げられているが、“平成28年熊本地震”(2016年4月14日等)が今年度版に加わった1)。 “地球温暖化”は、長期間にわたり継続しているテーマの一つであり、“パリ協定”が2015年12月のCOP21で採択され、2016年11月4日に発効したことで、今年度版白書の第1部に大きくとりあげられている。 “持続可能な開発目標(SDGs)”のトピックスについては、一般的な新聞、テレビも頻繁に取り上げるようになったが、その内容の理解を深めるためには、その話題が生れた“持続可能な開発”という概念を作りだした“環境と開発に関する世界委員会”の報告書「我ら共有の未来」(1987年)まで遡ることも必要である。 SDGsについては、本シリーズの第186回と第187回で紹介したが、SDGsの目標実現のために行われている諸活動について、今年度白書は、特に第1部の一章を割いている。それは“第3章 我が国における環境・経済・社会の諸課題の同時解決”と題して、多彩な活動事例を取り上げ、いろいろな視点から拾い上げた取組事例を、キーワードを含めて報告しているので、以下にその一部を紹介する。日本産業洗浄協議会 名誉理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力「2017年版環境白書」のトピックス(4)~環境・経済・社会の諸問題の同時解決(その1)~【第188回】■“環境・経済・社会の諸課題の同時解決に 向けた取組事例”について 今回特に「環境白書」中のかかる“取組事例”を取り上げたが、それは、SDGs における17 のゴールと169 のターゲットが環境・経済・社会の同時解決の具体的な事例をどのように解決しているかを裏付ける資料となっているからである。 ちなみに、取組事例が第3 章の中でどのように位置づけられているかを理解するために、第3 章の全体目次を以下に紹介する。この目次の中の“(第3節)環境・経済・社会の諸課題の同時解決に向けた取組事例”は、今回の主題であるので、更に詳細に16 項目に分けられた取組事例の項目を列記した。【第3 章目次】第3 章 我が国における環境・経済・社会の諸課題の同時解決(第1 節)我が国が直面する社会経済の課題(1-1)社会の課題(1-2)経済の課題(第2 節)環境・経済・社会の諸課題の同時解決に向けた方向性(2-1)環境保全対策による経済成長(2-2)環境保全対策による地方創生・強靭化(2-3)気候・エネルギー・資源安全保障(第3 節)環境・経済・社会の諸課題の同時解決に向けた取組事例(3-1)再生可能エネルギーの導入拡大 ①再生可能エネルギーの導入状況 ②地域エネルギーによる地域経済循環 ③再生可能エネルギーの導入による  地域経済効果の試算 ④木質バイオマスの活用(3-2)資源生産性の向上に向けた3R の推進 ①食品ロス削減に向けた取組 ② 2R 推進型ビジネスモデルの多様化 ③都市鉱山(3-3)持続可能なまちづくり ①コンパクトなまちづくり ②スマートコミュニティの構築 ③グリーンインフラの取組 ④ストックの適切な維持管理・有効活用(3-4)国立公園を活用したインバウンドの拡大 ①国立公園を活用したインバウンドの意義 ②国立公園満喫プロジェクト(3-5)環境金融等の拡大 ① ESG投資の促進 ②グリーン投資の促進 ③地域資金を活用した地域経済循環への取組■第3 章の“まえがき” 第3 章の表題である“環境・経済・社会の諸課題”の意味については、同章の“まえがき”に記されており、その概要を以下に紹介する。 “環境問題は人類のあらゆる社会経済活動から生じ得るものであり、環境・経済・社会の諸課題は密接に関係している。第1章で示した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(以下「2030アジェンダ」という。)の中核となる「持続可能な開発目標」(以下「SDGs」という。)では、経済・社会・環境の諸課題を統合的に解決することの重要性が示されている。その点、我が国の社会経済システムは様々な課題を抱え、大きな変革を求められつつある。我が国が直面する人口減少・高齢化は、かつて世界が経験したことがない急激なものである。 また、第4次産業革命を巡るグローバル競争の激化、世界経済の中心の変化等、我が国を取り巻く状況は、今後大きく変わる可能性がある。2017 年1 月の内閣府「2030年展望と改革タスクフォース報告書」2)によれば、このような内外の状況変化に対して、イノベーションを創出するなどして、経済・社会の諸課題に対応しなければ、我が国は低成長が定常化するおそれがあるとされている。 また、第2章で示した気候変動問題は、社会の最大の脅威の一つとして認識され、パリ協定の下、世界全体での今世紀後半の脱炭素社会に向けて世界は大きく舵を切っている。SDGs 及びパリ協定は、今後数十年にわたる社会経済活動の方向性を根本的に変える「ゲームチェンジャー」としての性質を有している。 パリ協定を踏まえた温室効果ガスの大幅削減は、従来の取組の延長では実現が困難であり、革新的技術開発・普及などイノベーションが必要と考えられる。 このように、経済、社会、環境の課題解決に向けては、各分野における現状の取組の延長線上ではないイノベーションが必要という点は共通している。また、人口減少・高齢化社会は、先進国やアジア諸国も同様に直面すると予想されていることに加え、パリ協定への対応は、今後世界の全ての国が求められている。 我が国がSDGsで示された環境・経済・社会の統合的向上により、環境・経済・社会の諸課題の解決をいち早く実現することは、課題解決先進国として世界の範となり得るものである。 環境政策が重視すべき方向性として環境基本計画で示されている「環境、経済、社会の統合的向上」は、これまで、いかに社会経済システムに環境配慮を織り込むかという観点を中心に展開されてきた。これは引き続き最も重要な観点である一方、経済・社会的課題が深刻化する中では、環境政策の展開に当たり、「環境保全上の効果を最大限に発揮できるようにすることに加え、諸課題の関係性を踏まえて、経済・社会的課題の解決」(以下「同時解決」という。)に資する効果をもたらせるよう政策を発想・構築する観点から、「環境、経済、社会の統合的向上」を実現することも重要である。 第3 章では、我が国が直面する社会経済の課題を概観するとともに、環境政策の展開に当たり、環境・経済・社会の諸課題の「同時解決」に資する効果をもたせるための方向性とその取組事例を示す。”■“環境・経済・社会の諸課題”に関する資料 過去の参考資料で、“環境・経済・社会の諸課題”に触れているものについて、表題、発表年、説明文等を以下に紹介する。(1)「アジェンダ21」(1992年) “経済、社会及び環境目的の統合において、統合的アプローチが効果的でコスト的に効率のよいものであることを確実にするため、各国の状況に照らして規則、経済的措置、環境コストの市場価格への内部化、環境と社会影響の評価及び情報普及を含む政策手法を組み合わせた包括的なパッケージが作成されることが重要である。”注1)注1)引用は同書の“第3章 緊急の行動を要する分野における実施、A. 経済、社会及び環境目的の統合”より3)。(2)「環境基本計画(第3 次)」(2006 年) “環境的側面、経済的側面、社会的側面が統合的に向上する持続可能な社会の実現のためには、制度的、技術的に環境効率性の向上を求めるだけでなく、各主体の生活や行動の選択が重要な課題となる。”注2)注2)引用は同書の“第2章 今後の環境政策の展開の方向、第1節 環境的側面、経済的側面、社会的側面の統合的な向上”より4)。(3)「2012年版環境白書」(2012年)5) “前節では、リオ+20を中心に、持続可能な社会の実現に関する国際的な議論の潮流を見てきた。リオ+ 20 において主要議題の一つとなるグリーン経済については、資源制約の克服と環境負荷の軽減、経済成長の達成、生活の質と福利の向上を同時に実現する経済のあり方や解決策を示そうとするものであり、国際的にも大きな関心が高まっている。 この節では、UNEP が2011 年11月に公表した「グリーン経済(Green Economy)」と、2011 年5 月に経済協力開発機構(OECD)がグリーン成長戦略の一環として公表した「グリーン成長に向けて(Towards Green Growth)」の2 つの報告書に基づき、環境・経済・社会の持続可能性の追求に関する世界の潮流を概観する注3)。