ブックタイトルメカトロニクス9月号2017年
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メカトロニクス9月号2017年
44 MECHATRONICS 2017.9 2017年版の「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」は、2017年6月6日に閣議決定され、国会に提出された。 本年の白書は、「持続可能な開発目標」(SDGs)の採択や「パリ協定」の発効等、国際社会は持続可能な社会の実現に向けて大きく動き出しているとして、「環境から拓く、経済・社会のイノベーション」を副題に掲げ、SDGsやパリ協定を踏まえた国内外の動向とともに、それらの目標達成の鍵となる環境・経済・社会の諸課題の同時解決に向けた我が国の方向性や取組事例等を紹介している1、注1)。注1)持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals、SDGs、(エスディージーズ) 今回はSDGsについて、本書の該当する部分の内容をできるだけ原文に沿って紹介する注2)。注2)SDGsについては、2016年版環境白書のトピックスとして、「2030アジェンダ」の副題で、本連載の第176回および第177回にも取り上げているので、重複する個所もあるが、前後関係についての経緯説明が若干変わっているので、併せてご参照下さい。日本産業洗浄協議会名誉理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力「2017年版環境白書」のトピックス~持続可能な開発目標(SDGs)(1)~【第186回】■はじめに SDGs は、2015年9月の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030 アジェンダ」2)の中核となる部分である(以下では、「2030アジェンダ」と略す場合がある)。 SDGs に至る流れの1 つに「ミレニアム開発目標(MDGs)」があったが、これは開発途上国のみが対象であり、先進国も含めた全世界的な動きではなかった。MDGs の採択から15年が経過し、地球規模での人口増加や経済規模の拡大の中で、人間活動に伴う地球環境の悪化はますます深刻となり、地球の生命維持システムは存続の危機に瀕している。気候変動を始めとしたグローバルな問題の解決には、先進国・開発途上国が共に取り組むことが重要であるという認識が共有され、SDGsの採択に至った。 SDGs では、経済、社会、環境の諸課題を統合的に解決することの重要性が示されている。この考え方は、2006年に策定された「第三次環境基本計画」(2006 年4 月閣議決定)注3)や現行の「第四次環境基本計画」(2012 年4月閣議決定)注4)において、恵み豊かな環境を保全し、持続可能な社会を構築するために、我が国の環境政策が重視すべき方向性として示された「環境・経済・社会の統合的向上」と親和性があるものである。注3)本連載の第84回(2009年3月号)をご参照下さい。注4)本連載の第124 回(2012年7月号)をご参照下さい。 SDGsで世界が共有するに至った「統合性」という考え方は、同計画ではSDGs採択に先駆けて取り入れていたと言える。 我が国における「環境・経済・社会の統合的向上」は、これまで環境配慮を社会経済システムにいかに織り込むかという観点を中心に展開されてきた。これは引き続き最も重要な観点である一方、経済・社会的課題が深刻化・複雑化する現在において、環境政策の展開に当たり、環境保全上の効果を最大化することに加え、諸課題の関係性を踏まえて、経済・社会的課題の解決に資する効果をもたらせるよう政策を発想・構築していくことが重要となっている。■第1 章 地球環境の限界と持続可能な開発目標(SDGs) 経済発展、技術開発により、人間の生活は物質的には豊かで便利なものとなった。情報通信技術(ICT)の普及により、遠方にいる人と連絡を取ることは容易になり、飛行機等の交通手段の発達により、別の国で同日に開催される複数の会議に出席することも可能になった。都市では電気、水道、ガス等が十分に供給され、私たちは物質的に豊かで便利な生活を享受している。 一方で、私たちのこの便利な生活は、人類が豊かに生存し続けるための基盤となる地球環境の悪化をもたらしている。産業革命以降、排出量が急激に増加した温室効果ガスは気候変動を引き起こし、世界中で深刻な影響を与えつつある。環境汚染物質は水・大気環境を汚染し、鉱物・エネルギー資源の無計画な消費は、環境を破壊するだけでなく、時として奪い合いのための紛争を引き起こしている。 さらに、現代は「第6の大量絶滅時代」注5)とも言われ、開発や乱獲等人間活動を主な原因として、地球上の生物多様性が失われつつある。注5)地球は誕生して46 億年を経過しているが、その間に生物の大量絶滅を5回経験しているとのことである。多くの生物学者は、「現在6回目の大量絶滅が進行中である」と警告しており、今までの大量絶滅と異なっているのは、ただ一種の生物種(人間)の行動(環境破壊)が原因となっている点であると指摘している。 2015 年9 月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(以下「2030アジェンダ」という。)は、国際社会全体が、これらの人間活動に伴い引き起こされる諸問題を喫緊の課題として認識し、協働して解決に取り組んで行くことを決意した画期的な合意である。 この合意が採択されたことにより、国際社会の共通理念として「持続可能な開発」という考え方が深く浸透しつつあると言うことができる。 第1 章では、2030アジェンダの中核をなすSDGsについて概説するとともに、今後世界がSDGsの達成に向けてどのように取り組んでいくべきか、その道しるべとなる様々な先進的取組について紹介する。第1 節 持続可能な開発を目指した国際的合意~ SDGs を中核とする2030 アジェンダ~1.持続可能な開発の歩み 1960 年代から1970 年代に掛けて、飛躍的な経済成長を遂げた先進諸国では地域的な公害が大きな社会問題となる一方で、開発途上国では貧困からの脱却が急務であった。こうした中、1972年にストックホルムで開催された「国連人間環境会議」において、「ストックホルム宣言」が採択され、環境保全を進めていくための合意と行動の枠組みが形成された。 ストックホルム宣言では、「自然の世界で自由を確保するためには、自然と協調して、より良い環境を作るための知識を活用しなければならない。現在及び将来の世代のために人間環境を擁護し向上させることは、人類にとって至上の目標、すなわち平和と、世界的な経済社会発展の基本的かつ確立した目標と相並び、かつ調和を保って追求されるべき目標となった」と記しており、経済や社会の発展のためには、環境保全の視点を持つことが重要だという考え方が明示されている。 しかし、先進諸国と開発途上国との間で公害をめぐる認識の対立は大きく、その後も、先進国においては、大量生産・大量消費・大量廃棄型のライフスタイルと経済活動の拡大が、開発途上国においては、貧困から脱却するため、持続可能とは言えない開発が優先的に進められた。他方、「成長の限界」(1972 年ローマクラブ報告)、「西暦2000 年の地球」(1980 年米国政府特別調査報告)を始め、人類の未来について深刻な予測が相次いで発表されると、地球上の資源の有限性や環境面での制約が明らかとなり、世界の人々に大きな衝撃を与えた。 こうした中、我が国の提唱に基づき国連に設置された「環境と開発に関する世界委員会」が1987 年に報告した「我ら共有の未来(Our Common Future)」において、「持続可能な開発」という概念が提唱され、一般に定着するきっかけとなった。「持続可能な開発」は、「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」を意味するとされている。 これらの動きを踏まえ、1992 年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)において、持続可能な開発を実現するための行動原則である「環境と開発に関するリオ宣言」と、その具体的な行動計画である「アジェンダ21」等が採択され、「持続可能な開発」という概念が全世界の行動原則へと具体化されるとともに、持続可能な開発が、人類が安全に繁栄する未来への道であることが改めて確認された。 地球サミットから10年に当たる2002年には、「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(ヨハネスブルグサミット)が、2012年には、「国連持続可能な開発会議」(以下「リオ+20」という。)が開催され、持続可能な開発に対する国際的な議論が進められてきた。2.持続可能な開発目標(SDGs)の内容(1)SDGsに至る道のり SDGs を中核とする「2030 アジェンダ」は、2015 年9月にニューヨーク国連本部で開催された「“持続可能な開発のための2030 アジェンダ”採択のための首脳会議国連総会」で採択された。 SDGs は、17のゴールと各ゴールごとに設定された合計169のターゲットから構成されている注6)。注6)本連載第177回(2016年12月号の<図表8:SDGs17のゴール>をご参照下さい。 SDGsの採択に至るまでの道のりには、「ミレニアム開発目標」(MDGs)からの流れと「リオ+ 20」からの流れという大きな2 つの流れがある。(a)ミレニアム開発目標(MDGs)からの流れ MDGs は、2000年に国連で採択された開発分野における国際社会の2015 年までの共通目標で、極度の貧困と飢餓の撲滅や、環境の持続可能性の確保等の8 つの目標から構成される。国連によるMDGs