ブックタイトルメカトロニクス8月号2017年
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メカトロニクス8月号2017年
MECHATRONICS 2017.8 45この日が水俣病の公式確認日となる。水俣市は5月1日にちなんで、毎年5月1日に「水俣病犠牲者慰霊式」を開催している(第1回は1992年に開催)。・1959年10月:新日窒病院の実験でネコ発症・1960年~1961年:不知火海沿岸漁民、水俣漁協による新日窒の本社・工場前への座込み抗議行動が多発・1961年3月:水俣市で2歳の女児が死亡(胎児性水俣病と確認)・1963年2月:熊本大学研究班が「水俣病の原因は工場から排出されたメチル水銀化合物」と正式発表・1965年1月:新潟で水俣病の診断・1967年4月:厚生省、「新潟水俣病はメチル水銀化合物が原因」との見解発表・1971年9月:新潟水俣病訴訟、原告(被害者)勝訴・1973年3月:熊本水俣病訴訟、原告(被害者)勝訴・1990年3月:水俣湾公害防止事業(ヘドロ処理)終了・2010 年6 月7日~11日:「水銀に関する条約」の制定に向けた政府間交渉委員会第1回会合(INC1)(ストックホルム(スウェーデン))・2012年5月15日~17日「: 水銀条約」政府間交渉委員会第4回会合の準備のためのアジア太平洋地域会合(クアラルンプール(マレーシア))・2012年6月27日~7月2日:水銀条約の制定に向けた政府間交渉委員会第4回会合(ブンタ・デル・エステ(ウルグアイ))・2012 年7 月31日:「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法」救済申請受付の終了(8月3日 水俣病問題の解決に向けた今後の対策について発表)・2013年1月13日~18日:水銀条約の制定に向けた政府間交渉委員会第5回会合(ジュネーブ(スイス))・2013年4月16日:4水俣病の認定をめぐる行政訴訟の最高裁判決・2013 年10 月9日~11日:水銀に関する水俣条約外交会議(熊本県熊本市及び水俣市)。水銀に関する水俣条約を全会一致で採択・2014 年10月18日:「水俣条約」1周年記念フォーラム、胎児性・小児性水俣病患者と面会等(熊本県水俣市)・2015年5月31日:新潟水俣病公式確認50年式典(新潟県新潟市)・2015 年10 月24日:水銀に関する水俣条約2周年記念行事(熊本県水俣市)・2016年1月20日~22日:水銀に関する水俣条約政府間交渉委員会第7回会合の準備のためのアジア太平洋地域会合(ジャカルタ(インドネシア))・2016 年2 月2日:日本は「水銀に関する水俣条約」を締結(受託書の寄託(ニューヨーク(米国)) ・2016年3月10日~15日:水銀に関する水俣条約政府間交渉委員会第7回会合(死海(ヨルダン))・2017 年8月16日:「水銀に関する水俣条約」発効・2017 年9 月24日~29日:「水銀に関する水俣条約」第1回締約国会議(COP1)開催(予定、ジュネーブ(スイス))(2017年6月11日記)<参考資料>1)経済産業省:「(ニュースリリース)水銀に関する水俣条約の発効が決定しました」(2017.5.19)2)環境省環境保健部環境安全課編集:「(パンフ)水銀に関する水俣条約と日本の貢献」(2015.9)3)環境省編:「2016年版 環境白書/循環型社会白書/生物多様性白書」日経印刷(株)(2016.6)4)UNEP:「Global Mercury Assessment 2013 ~ Sources,Emissions, Releases, and Environmental Transport」(2013)5)池見哲司:「水俣病闘争の軌跡」緑風出版(1996.9)6)九里徳泰・左巻健男・平山明彦編著:「(新訂)地球環境の教科書10講」東京書籍(2014.9)7)2011年~2018年版の環境白書に記載された「各年度の年表“主な環境問題の動き”」より関連事項の一部を抜粋児)の神経系に有害であり、一部のイヌイット族では、水銀曝露の高い子供ほど注意欠陥多動性障害(ADHD)注4)と診断される傾向があることなどが示されている。注4)注意欠陥多動性障害:attention defi cit hyperactivity disorder、ADHD。多動性(過活動)、不注意(注意障害)、衝動性を症状の特徴とする神経発達症もしくは行動障害。 同じく魚介類等を多食する我が国では、厚生労働省が2005年に「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項(2010年改訂)」を取りまとめ、妊婦が注意すべき魚介類の種類とその摂取量の目安等を設定しており(例:キンメダイ、クロマグロ等は週1回(80g)まで)、その「Q&A」の中で、我が国の場合、平均的な食生活をしている限り健康への影響について懸念されるようなレベルではないものの、一部のクジラ、イルカ等、特に水銀含有量の多い魚介類等を偏って摂取しないなど、バランスの良い食生活を心掛けることが大切であるとしている。 先述の「世界水銀アセスメント2013」では、地球規模で水銀の排出及び放出を削減することの必要性を指摘している。こうした背景も踏まえ、水銀をライフサイクル全体で管理することを目指すため、2013年10月に水俣条約が熊本県で採択された。(3)第2節 「水銀に関する水俣条約」締結までの道のり 前節で見たとおり、世界規模で見ると、今でも水銀の排出は続いている。また、UNEPによれば、大気中の水銀濃度が現状のレベルを維持できたとしても、今後数十年以上にわたって海洋における水銀濃度が増加し続けると予測されている。 国際的には、UNEPの主導の下で水銀による地球規模の環境汚染と健康被害を防止するための取組を強化することが検討され、2009年に、「水銀によるリスク削減のための法的拘束力のある文書(条約)を2013年までに取りまとめることを目指す」という決議が、第25回UNEP管理理事会において採択された。 本決議を受け、新たな条約の制定に向けた政府間交渉委員会(INC)が2010年6月から開始された。政府間交渉において我が国は、アジア太平洋地域のコーディネーターを務め、地域での議論の活性化や意見を取りまとめるとともに、2011年1月にホスト国として第2回政府間交渉委員会(INC2)を千葉県千葉市で開催するなど、交渉に積極的に貢献した。 また2013年1月にジュネーブ(スイス)で開催された第5回政府間交渉委員会(INC5)において、我が国は外交会議及び関連会合を熊本県熊本市及び水俣市で開催することを提案し、これを受けてINC議長から条約名称を「水銀に関する水俣条約」とすることが提案され、全会一致で決定された。 2013年10月に熊本市及び水俣市で水俣条約の外交会議及び関連会合が開催され、外交会議には139 の国・地域の政府関係者を含む1,000人以上が出席し、水俣条約の採択と92の国・地域(欧州連合(EU)含む)による同条約への署名がなされた。 我が国は、「マーキュリー・ミニマム」注5)、「MOYAIイニシアティブ」注6)等を掲げ、水俣条約の早期発効に向けた開発途上国支援及び水俣から世界に向けた情報発信を行っていくことなどを会議の場で表明した。注5)マーキュリー・ミニマム:水俣病の経験を踏まえ、世界のどの地域でもこのような悲惨な公害健康被害を二度と繰り返さないよう、環境中への水銀排出を減らすことで実現できる環境を指す。注6)MOYAIイニシアティブ:「もやい」とは、船と船とをつなぎ止める「もやい綱」や、農村での共同作業のことを指す。「もやい直し」は、対話や共同による水俣の地域再生の取組みを意味している。水俣病の教訓・経験・対策等を引き続き世界に発信するとともに、地域再生に取り組む現在の水俣の姿を内外にアピールし、環境をてこにした地域づくりの取り組みを一層支援していく活動を示している。 また、会議の開会に際して水俣市で記念式典が行われ、会議出席者による水俣病資料館の見学、水俣病慰霊の碑への献花や植樹が実施されたほか、市民や水俣病患者との交流の場も設けられた。 外交会議で採択された水俣条約は、水銀の人為的な排出及び放出から人の健康及び環境を保護することを目的とし、水銀の採掘、輸出入、使用、環境への排出・放出、廃棄等、そのライフサイクル全般にわたる包括的な管理を求めるものである。 例えば、乾電池等、水俣条約で指定された製品について、2020年までに製造・輸出入を禁止することや、石炭火力発電所等からの排出の規制等について規定している。水俣条約は、50ヵ国目の締結後90日目に発効することとされている。なお、我が国は、後述する国内の担保措置を整備し、それを受けて2016年2月2日に水俣条約を締結した。(4)第3節 水俣条約を受けた国内での取組 水俣条約の採択を受け、我が国において同条約を的確かつ円滑に実施するため、産業構造審議会及び中央環境審議会の合同会合等における議論を経て、2015年6月に水銀汚染防止法(平成27年法律第42号。及び大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)の一部を改正する法律が成立した。 あわせて、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)施行令の一部改正等を行うことにより、その他の関係法令とあいまって、水銀の輸出入、製品への使用、環境への排出・放出、廃棄等のライフサイクル全体を管理する包括的な対策に向けた仕組みが構築され、国内の担保措置の整備が完了した。我が国は、水俣病の教訓を踏まえて世界の水銀対策をリードするため、これらの対策において、以下のとおり、水俣条約で求められている水準以上の措置も講じることとしている。①水銀の輸出入②水銀の製品への使用③水銀の環境への排出・放出④水銀の廃棄注7)注7)①~④の解説文章は省略。(5)第4節 水銀対策における我が国の国際協力①開発途上国における水銀対策の支援②水俣条約の早期発効に向けた取組③UNEP世界水銀パートナーシップの活動とバーゼル条約のガイドライン改訂支援注8)注8)①~③の解説文章は省略。(6)第5節 地球規模の水銀に係る課題の解決に向けて 我が国は、水銀汚染による甚大な被害を経験した国として、水俣条約の策定を主導し、同条約の採択後は、その適切な実施と早期発効に向けて貢献してきた。また、過去の経験から、我が国は先進的な水銀代替・削減技術や高度な水銀リサイクルシステムを有しており、水銀による環境汚染と健康被害を世界のどの地域においても二度と繰り返さないよう、世界の水銀対策を牽引する役割が我が国に期待されている。 今後、水銀汚染防止法に基づく計画の策定等により、水俣条約の規定より踏み込んだ内容を含む、水銀等のライフサイクル全体を管理する包括的な仕組みを総合的かつ計画的に実施するとともに、国際協力を引き続き積極的に展開し、世界の水銀対策をリードすることを通じて、地球規模の水銀に係る課題の解決に貢献していく。■水俣病に関連する過去の経緯 水俣病に関する過去の出来事をその発端から紹介することは非常に難しい。読者がこの文章で興味をもたれた場合に、事実をさらに調べるときの参考になればと考え、別記の<参考資料>からその一部をを選んで以下の年表を作成した。・1953年12月:水俣市出身の少女(5歳)が水俣病を発病(熊本水俣病第1号患者)・1956年5月1日:水俣保健所が熊本水俣病を公表、