ブックタイトルメカトロニクス7月2017年
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メカトロニクス7月2017年
10 MECHATRONICS 2017.7 御社の概要と 設立した経緯などについて お聞かせ下さい三宅 : 当社は、2016 年4月に設立したばかりの新しい会社です。設立時は私一人でしたが、今年から営業を担当する小出部長が加わり、二人で事業を行っています。 元々、私と小出部長は大手の石油化学会社に勤務していまして、新材料に関する新規事業に携わっていました。その中で、当時の取組先であったある中小企業の2 社と一緒に、木粉とプラスチックを混ぜた複合材料の研究開発を進めていました。現在、私達はこの材料の市場展開などを模索しています。 この複合材料は、国内の間伐材の木粉を使っています。プラスチック複合材は、性能的にも優れたものになると理論上では分かっていましたが、木粉とプラスチックを上手に混合させることが難しく、なかなか良い材料ができていませんでした。また、過去にはこの複合材料の事業に関して、多くの大手企業や中小企業も射出成形向けの次世代材料として研究を行っていましたが、結果的にはなかなか上手くいかず、断念に至ったようです。 そうした中、私達が手掛けていた別の材料を試験的に応用したところ、上手く複合化することができ、きれいに射出成形ができる複合材料が開発されました。ただ、当時私が勤務していた会社の方針で、新しい事業からの取り止めが決まったため、私達が進めていたこの事業も中止することになりました。しかし、このような優れた複合材料を世に出していかないのは非常に勿体なく思い、どうしても諦め切れなかったのが当時の心境でした。 その後もその思いは変わらず、ちょうどリタイアまであと2、3 年ということもあり、退職後に私自身で会社を立ち上げて引き継いでやっていこうと考えました。その3 年の間も、その複合材料を開発した2 社では、改良などを行いながら独自に市場展開を進めていました。ただ、このような新しい材料は、なかなか市場に浸 木粉とプラスチックの複合材料であるウッドプラスチックの販売を行うアイ-コンポロジー株式会社。協力会社と共に、射出成形には不向きなウッドプラスチックを、一般に使われるプラスチック射出成形機で使用できる工業材料として進化させた同社の概要と事業展開、製品の特徴などについて、代表取締役三宅 仁 氏、執行役員 営業部長 小出 秀樹 氏にお話を伺った。アイ-コンポロジー株式会社代表取締役三宅 仁 氏執行役員 営業部長小出 秀樹 氏射出成形ができる木粉とプラスチックの複合材料で事業展開~工業材料としてだけでなく環境保全にも貢献~透させることが難しく、苦戦していたようです。そういったこともあり、何とか市場に浸透させる力になりたいということからも、会社立ち上げの思いが強くなり、徐々に準備を進めながら退職後すぐに会社を設立するに至っています。 小出部長も私と同じような志をもっており、以前の会社を退職した後、当社に合流してくれました。私一人の時は、事業を始めるための準備などでほとんど何もできないような状況でしたが、彼が来てくれたおかけで事業も徐々に動き始め、本当に心強く思っています。 また、当社の社名である“アイ-コンポロジー(i-Compology)”は、「革新的・複合材・技術」を略した造語である“Innovative Composite Technology”から付けており、この社名には「先人が今までやろうとしてもできなかった複合技術に新しいアプローチ方法で革新を起こそう」という思いが込められています。 木粉とプラスチックを混ぜた 複合材料について、 概要や特徴などお聞かせ下さい小出 : 木粉とプラスチックを混ぜた複合材料は、一般には「ウッドプラスチック(WPC)」と呼ばれ、腐らない木材として実は今までも世の中に製品として存在していました。それは、熱で溶かした樹脂を金太郎飴のように同じ断面で押し出して、長尺のものをつくる“押出成形”という方法で使用されているものでした。 一方、押出成形とは別の成形法で、様々な形あるものをつくるために、熱で溶かした樹脂をたい焼きのように金型に注入して冷やして固める“射出成形”という方法があり、こちらは皆さんご存じの通り量産を行う時に適した成形法として知られています。しかし、今までのウッドプラスチックでは、溶かしたときの粘度(溶融粘度)が著しく大きいため、射出成形には向かないとされており、さらに高い温度では木材成分が熱分解されるため、悪臭と焼けが発生して黒くなってしまうので、射出成形は難しいといわれていました。 今回、私達が市場に浸透させていきたいと思っているウッドプラスチックは、粘度と温度の条件をクリアすることで射出成形が可能になり、一般に使われているプラスチック射出成形機での使用を実現した次世代の複合材料と位置付けしています(図1)。 特徴としては、木粉を多く入れると材料となる元のプラスチックそのものよりも弾性率が大きく強くて丈夫になり、その上より高い温度に耐えられるものになります。汎用のポリプロピレンは、寸法安定性が良い樹脂ではありませんでしたが、このウッドプラスチックは木粉が混ざっていることで寸法安定性も改善され、射出成形においても高精度な成形物をつくることが可能です。 また、木粉が入っているので、成形物の表面をサンドペーパーで擦った後に、成形物同士を接着剤で接着することもでき、今まで接着困難とされていたポリプロピレンなどのプラスチックでも接着することが可能です。冬場に起こりやすい静電気の発生も低減することがで図1 射出成形品までの流れ