ブックタイトルメカトロニクス3月号2017年
- ページ
- 45/52
このページは メカトロニクス3月号2017年 の電子ブックに掲載されている45ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは メカトロニクス3月号2017年 の電子ブックに掲載されている45ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
メカトロニクス3月号2017年
MECHATRONICS 2017.3 45規模とし、森林蓄積注12)を約15%増加させることとしている。注12)森林蓄積:Forest accumulation。森林を構成する樹木の幹の体積をいう。日本の森林面積はほぼ横ばいで増減はないが、森林蓄積は年々増加しており、過去40年間で2.3倍に増えている。(2)森林破壊の原因 森林破壊の原因として、非伝統的な焼畑耕作、薪炭材の過剰伐採、農地への転用、過剰放牧、不適切な商業的伐採、森林火災、酸性雨の影響などが指摘されている。オーストラリアや米国では厳しい干ばつや森林火災が森林の減少に拍車をかけている。また、ロシアや東南アジアなどでは、森林保全に関係する法令の執行体制が弱いことから違法伐採が問題になっている。(3)森林破壊の影響 熱帯林は、いったん伐採されると、再生は非常に困難となる。森林が破壊されてしまうと、栄養分を含んだ土壌の表面が流出したり、直射日光による乾燥や、野生生物の生息・生育環境が失われることなどにより、土壌が荒廃するためである。 森林破壊の影響には、以下のものがある。①木材資源、食糧・農産物の減少による地域住民の生活基盤の喪失②土壌の流出、洪水・土砂災害などの発生③熱帯林などの野生生物種の絶滅による生物多様性の減少④森林破壊によるCO2の排出など、地球温暖化などの気候変動の促進 例えば、熱帯林には地球上の生物種の半分以上が生息しているといわれており、また途上国における森林減少・劣化に由来するCO2の排出は人為起源の排出量全体の約2割を占めているといわれている。■その他の森林問題に関係する事項(1)国連森林フォーラム(UNFF) United Nations Forum on Forests。地球サミット以降、世界の持続可能な森林経営の推進を協議する場として国連に設置された。森林に関する政府間パネル(IPF)、森林に関する政府間フォーラム(IFF)を受けて、2001年に国連経済社会理事会の下に設置された機関である。(2)「REDD+パートナーシップ」 「コペンハーゲン合意」における「REDD+」の役割の重要性と早期制度化の決定を受け、2010 年5月の「気候変動と森林に関するオスロ会議」において、「REDD+」に関する取り組みの国際的な連携・協調を図るために設立された制度である10)。(2017年1月22日記)<参考資料>1)林野庁編集:「平成27年度 森林・林業白書」一般社団法人 全国林業改良普及協会(2016.5)2)藤原敬:“地球環境と持続可能な森林管理”(太田宏・毛利勝彦編著:「持続可能な地球環境を未来へ =リオからヨハネスブルグまで=」大学教育出版(2003.4)p183~199より)3)国際航業株式会社:「転換期を迎える環境ビジネス 概説REDD+」(株)アスキーメディアワークス(2013.1)4)東京商工会議所編著:「環境社会検定試験ECO検定公式テキスト(改訂5版)」日本能率協会マネジメントセンター(2015.2)5)日経エコロジー編著:「環境キーワード事典」日経BP 社(2014.1)6)自由国民社編集:「現代用語の基礎知識2017」自由国民社(2017.1)<参考URL>7)一般財団法人 環境イノベーション情報機構「EICネット環境用語集」:http://www.eic.or.jp/ecoterm/?gmenu=18)WWF ジャパン「REDD プラス」:http://www.wwf.or.jp/activities/nature/cat1248/redd/9)国立研究開発法人森林総合研究所「REDD研究開発センター」:http://redd.ff pri.aff rc.go.jp/10)環境省「フォレスト パートナーシップ・プラットフォーム:http://www.env.go.jp/nature/shinrin/fpp/index.htmlには以下の活動が含まれている。①森林減少からの排出削減②森林劣化からの排出削減③炭素ストックの保全④持続可能な森林管理⑤炭素ストックの増大すなわち、当初の「レッド」における緩和策(①および②)に、さらに③、④、⑤が追加されている。 「REDD+」は、「REDD」から発展した語句であり、森林保全、持続可能な管理、炭素貯蔵量拡大という炭素ストックを積極的に増加させる概念を含んでいる注9)。つまり、単に森林減少・劣化によって森林が吸収・固定してきたCO2が排出されるのを防ぐという意味に加えて、積極的にCO2の吸収・固定化を促進するような活動を含めようという考え方である。注9)「REDD+」とは、“Reducing emissions from deforestationand forest degradation in developing countries; and therole of conservation, sustainable development of forestsand enhancement of forest carbon stocks in developingcountries”の略1、6)。(3)炭素ストック(Carbon Stock) 炭素を貯蔵する大気、森林、海洋等の炭素プール内に貯蔵される炭素の量を指す。政策的には森林の炭素ストックが重要である。樹木はCO2を用い、光合成することによって酸素を放出すると同時にCO2を有機物として樹木の体内に取り込み固定する。これが樹木の成長である。 一方、樹木は呼吸作用により酸素を取り込んで、CO2を放出する。樹木が成長している間は光合成と呼吸との差し引きでCO2を吸収する方が大きいが、成長がとまると等しくなり、枯れて腐朽すると固定された炭素をCO2として放出する。 したがって老齢化した人工林の伐採・再造林を行うことは、森林を若齢化させ、CO2固定量を増大させるには有効である。また、伐採した木を燃焼させるのでなく、建築材等として使用することは、炭素をストックさせることでもある。■ REDD 研究開発センター9) 温室効果ガスの排出削減は、地球温暖化防止のために各国に課せられた大きな責任となっている。また多くの木材資源を利用する先進国の責務として、熱帯地域をはじめとする途上国の森林減少や劣化を抑制することに積極的な責任を果たすことが求められている。 これまでにクリーン開発メカニズム(CDM)注10)への取組みが進められてきているが、さらに「REDDプラス」による排出削減量と吸収量の増加の実現に努力することは、地球温暖化防止に向けた世界的な取組みに貢献することであり、また途上国の森林や生物多様性の保全、地域経済にも貢献できると考えられる。注10)クリーン開発メカニズム:Clean Development Mechanism、CDM:京都議定書に定められた制度で、京都議定書で義務を負う国が途上国で排出抑制対策を実施した場合に、売買可能な排出権を入手でき、その排出権は自国の削減義務の達成に使用することができるとしている。 こうした情勢を踏まえ、「REDDプラス」に関する世界的な動向や情勢分析に基づいて、今後取り組むべき技術開発、民間ベースの活動支援を推進することによって、わが国における「REDDプラス」の推進を担う拠点として、2010年10月にREDD研究開発センターが国立研究開発法人 森林総合研究所に開設された。(1)同センター開設について REDD研究開発センターは、各国と協調して熱帯林の観測体制を整備し、我が国が主導してCO2の吸収量および排出量の科学的算定手法を確立することを目指す。また、技術者を積極的に育成し、民間レベルの森林保全・造成活動を積極的に支援する取り組みを推進する。(2)同センター開設の意義 同センターの開設について、国立研究開発法人 森林総合研究所の理事長鈴木和夫氏は、同センターのURLで以下のように説明している8)。 “森林は大気中のCO2を吸収・蓄積し、地球温暖化を緩和するという重要な役割を担っている。現実には、途上国での森林減少・劣化が総排出量の2割に相当するCO2を排出していることから、その排出削減に注目が集まるようになった。同時に、森林は生物多様性によって多くの恵みを提供し、地域社会に経済的にも貢献している。これらの視点から、森林減少・劣化の問題を解決し、森林の保全を進める必要がある。 「COP15」(2009 年、コペンハーゲン)で採択されたコペンハーゲン合意は、途上国の森林減少・劣化による排出の削減や森林保全等をめざした「REDDプラス」の枠組み構築の必要性を強調した。このような国際情勢を背景に、(独)森林総合研究所はREDD 研究開発センターを開設する。 (独)森林総合研究所は、熱帯林研究やリモートセンシング、違法伐採など、「REDDプラス」に係わる研究について経験と実績をもち、加えて各国との研究協力関係をもっている。REDD 研究開発センターは、これらの技術、経験を結集し、「REDDプラス」について世界の研究をリードする組織を目指している。” またそのメッセージに続いて、同センターのセンター長松本光朗氏は、以下にように記している9)。 “地球温暖化に係わる国際交渉では、「REDDプラス」への期待と議論が燃え上がっている。「REDDプラス」は、これまで注目されながらも十分に対処できなかった途上国の森林減少や劣化の問題を、経済的なアプローチを重視して解決しようとするものである。しかし、しばしば資金面に偏った議論が先行し、肝心の森林やCO2の吸排出量、そしてモニタリング技術の重要性が忘れられているのではないかと危惧することもある。 REDD 研究開発センターでは、「REDDプラス」の制度・政策の議論を進めながら、途上国での森林炭素量変化を的確にモニタリングする技術の開発と、その手法やシステムの導入を支援することで、「REDDプラス」の技術的側面を確立したいと考えている。 REDD 研究開発センターの取り組みが、国際的な「REDDプラス」の議論に貢献し、さらに途上国の森林や森林生態系の保全、そして地域の発展に繋がるよう、努力していきたい。”■森林問題に関する話題 森林問題に関する話題は地球温暖化問題に合わせて議論の対象となっている。その中には、基本的な話題から地球環境問題との因果関係も含まれており、過去のデータをベースとして、新しい統計資料が発表されるたびに補充をおこなう必要がある。(1)森林の減少 国連食糧農業機関(FAO)は、農薬の安全性や農作物の遺伝資源の利用と保全などを扱っている注11)。注11)国連食糧農業機関:FAO、Food and AgricultureOrganization of the United Nations FAOによると、世界の森林面積は40億強haで、地球の陸地面積の約31%に相当する。この森林面積が熱帯林を中心に減少を続けており、2000年から2010年の間に毎年約20万ha(四国の2.8個分)が減少したと推定されている3)。地域別で見ると、ヨーロッパやアジアでは森林面積はわずかに拡大しているが、熱帯林を持つアフリカ、南米の森林面積が継続して大幅に減少しており、地球温暖化や生物多様性にも深刻な影響を及ぼすことが懸念されている。 なお、日本は国土の約66%を森林が占めており、森林・林業基本計画では20年後の目標として面積は同