ブックタイトルメカトロニクス2月号2017年

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メカトロニクス2月号2017年

44 MECHATRONICS 2017.2日本産業洗浄協議会名誉理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力森林が果たす地球環境上の役割~(2)森林問題にかかわるブループラネット賞等のトピックス~【第179回】■「森林問題」の紹介事例(続)(2)「地球白書」が取り上げた森林問題(続) 前号では、“(2)「地球白書」が取り上げた森林問題”について、2001年10月から2006年12月までを紹介した。今回はその続報として、2006年12月から2011年3月までの情報を以下に紹介する2)。・2006年12月:(森林)WWFは、世界で2番目に大きい熱帯雨林であるコンゴ盆地の森林は、現在のペースでの開拓が続けば、その2/3が50年以内に消滅する可能性があると発表。・2006年12月:(自然災害)アメリカ当局は、2006年の森林火災シーズンでは史上最悪を記録し、森林火災9万6千回以上、約400万ヘクタールが消失したと報告。・2007年2月:(森林)国連は、インドネシアの熱帯雨林は以前考えられていたよりも最大30%も早いペースで破壊されており、オランウータンは今後30年以内に絶滅する可能性があると警告。・2008年1月:(森林)2008年のアマゾン森林破壊は、4年ぶりに増加する見通しであると、ブラジルの科学者が発表。同国政府の森林保護政策への懸念が高まる。・2008年5月:(森林)ブラジルの環境相であり森林保護活動家であるマリナ・シルバが、アマゾンの森林政策をめぐるルラ政権との長期的な不一致により辞任。・2008年5月:(気候)森林破壊による炭素排出を削減するための経済的インセンティヴは、発展途上国に、年間で最大130億ドルものカーボン・クレジットをもたらすとの調査が発表される。・2008年7月:(森林)人口増加に伴い、食料、燃料、木材への需要は急伸し、現存する森林には、かつてない持続不可能な需要が突きつけられるとの報告書が発表される。・2008 年10月:(森林)存続が危ぶまれるスマトラ島の森林を保護することに州知事が合意。これにより、インドネシアは、山林火災あるいは意図的な焼き払いによる二酸化炭素の排出の削減が可能になる。・2008年11月:(森林)ブラジル政府は、伐採者が政府関連機関を荒らし、輸出入禁止の木材を盗んだのを受けて、アマゾンでの違法な木材取引の取り締まりを開始。・2009年5月:(森林)西アフリカで最大級の原生熱帯雨林であるゴラ森林を保護するために、シエラレオネとリベリアが新たな国境を越えた平和公園の設立を発表。・2009年10月:(気候)ウガンダのナイル流域再植林プロジェクトが、京都議定書に基づく排出削減に向けたアフリカで初めての再植林活動となる。・2010 年5 月:(気候)「森林減少および森林劣化に由来する排出の削減」の新たなパートナーシップで、約60ヵ国が今後3年間で40億ドル以上を投入することを表明した。・2010年5月:(森林)不法に伐採された林産品への世界的需要の削減、および合法的に伐採された木材や紙製品の生産の支援を行う、森林順法連合(ForestLegality Alliance)をさまざまなステークホルダーが結成した。・2010年6月:(森林)ブラジルのアマゾンの森林破壊によって、カの繁殖に適した地域が拡大されて、その結果、調査対象となったある州の1つの行政区ではマラリア患者が48%増加していたと科学者が発表した。・2010 年12月:(自然災害)約4047平方キロメートルが消失し、少なくとも4人が死亡したイスラエル史上最悪の山火事がようやく鎮火。・2011年3月:(森林)記録的な干ばつによって、アマゾンの森林5260平方キロメートル以上が褐色になっていることをNASAのマッピング・データが示す。■地球環境国際賞としての ブループラネット賞の存在価値(1)ブループラネット賞とは3) ブループラネット賞(Blue Planet Prize)は、公益財団法人 旭硝子財団が創設した地球環境国際賞である。同賞は、地球環境問題の解決に関して社会科学、自然科学/技術、応用の面で著しい貢献をされた個人、または組織に対して毎年2件贈られる。 1992年に第1回表彰式典が、また2016年度には25回目の表彰式典が行われた。(2)ブループラネット賞の趣旨 旭硝子財団は、以下のようにブループラネット賞を説明している3)。 “人類が解決を求められているグローバルな諸問題の中で、最も重要な課題の一つが地球環境の保全です。地球温暖化、酸性雨、オゾン層の破壊、熱帯雨林の減少、河川・海洋汚染などの地球環境の悪化は、いずれも私達人間の経済活動や生活が大自然に影響を及ぼした結果です。 旭硝子財団は、地球環境の修復を願い、地球サミットが開催された1992年に、地球環境問題の解決に向けて著しい貢献をした個人または組織に対して、その業績を称える地球環境国際賞「ブループラネット賞」を創設いたしました。 賞の名称「ブループラネット」は人類として初めて宇宙から地球を眺めた宇宙飛行士ガガーリン氏の言葉「地球は青かった」にちなんで名付けました。この青い地球が未来にわたり、人類の共有財産として存在しつづけるように、との祈りがこめられています”。■森林問題に深く関わるブループラネット賞 森林問題は、地球上に生物が誕生して以来の進化の歴史を経て、現在の生態系と生物多様性のバランスを保つようになった根幹をつかさどる問題の一つとして重要な意味をもつ環境問題であろう。 その観点から、過去の受賞者の業績が森林問題に深く関わっている内容を取り上げると、以下のような受賞業績の事例を挙げることができる3()受賞者の所属は受賞当時のもの)。(1)1994 年度(第3回)の表彰【受賞者】レスター・R・ブラウン氏(米国 1934 ~、LesterRussell Brown):ワールドウォッチ研究所所長【受賞業績】 地球環境問題を科学的に解析し、環境革命の必要性、自然エネルギーへの転換、食糧危機等を国際的に提言【業績の内容】 同氏は、米農務省在籍時代に1965年のインドの凶作を早期に察知し、米政府とインド政府に対策を進言し、被害を軽減させたのを始め、74年にワールドウォッチ研究所を創設してアフリカ飢饉の深刻化に対して警鐘を鳴らし、現在にいたるまで、人口爆発や食糧危機、生態系の崩壊などを精力的に訴える活動を展開して、地球環境保全に対する今日の関心と意識を世界的に育てた。 特に1984年以来、毎年発行されている「地球白書」(State of the World)は各年次における地球環境問題に関する全世界のデータが体系的に記載され、世界中の政治家や企業家、環境保護活動家にとって、最も影響力ある関連図書になっている。 92年版では農業革命、工業革命に続く第三の革命「環境革命」の必要性、化石燃料や原子力から自然エネルギーへの転換を説き、93年版では持続可能な経済のために産業界のできること、なすべきことを提言、最新の94年版では来るべき人口問題と深く関連する食糧危機について警鐘をならしている。現在、9月にカイロで10年ぶりに開催される「世界人口会議」にむけて活動中で、その疲れを知らぬダイナミックな実践行動は高く評価することができる。(2)2003年度(第12回)の表彰【受賞者】ヴォー・クイー博士(ベトナム 1929 ~、Dr. Vo 森林問題は、地球上に生物が誕生して以来の進化を経て、現在の生態系と生物多様性のバランスを保つようになった根幹をつかさどる問題の一つであろう。 地球環境問題の個々の具体的な対策については、産業界のモノづくりの現場、市民社会の生活面での対応が議論され、実行も進んでいる。しかし、その合間にも潜行して進んでいる地球環境の破壊は、人間が避けて通ることができない地球の必然ではなく、生態系および生物多様性の問題に対して人間が引き起こしている現象なのである。 遠藤秀紀氏(東京大学総合研究博物館教授)が指摘する点は、人類が人為的に他の生物さえも絶滅に追いやっていることであり、自然との共生に意図的に破滅をもたらしていることである。氏はその現象を“ヒトは進化の失敗作”とまで表現している。 “19世紀以降、ヒトは快適な生活や物質的な幸福を求めて、地球環境を不可逆的ともいえるほど破壊してきた。自然を汚染し、温暖化やオゾン層破壊といった、とても局所的とは思われないほどの、破壊的な産業活動を継続してきた。たかが500万年で、ここまで自分たちが暮らす土台を揺るがせた“乱暴者”は、やはりヒト科ただ一群である。何千万年、何億年と生き続ける生物群がいるなかで、人類が短期間に見せた賢いがゆえの愚かさは、このグループが動物としては明らかな失敗作であることを意味しているといえるだろう。”1) 今回は前号に引き続いて、過去に指摘された森林問題の事例を紹介し、あわせて森林問題の解決に取り組んでいる個人・組織の顕彰事例(ブループラネット賞)その他のトピックスを紹介する。