ブックタイトルメカトロニクス11月号2016年
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メカトロニクス11月号2016年
8 MECHATRONICS 2016.11 御社の概要についてお聞かせ下さい新仏:当社は、1939年3月に日本精密工具株式会社として創業しました。戦時中は国の軍事工場として、タップやダイスといったねじを削る工具の提供を行っていましたが、終戦後は国からの仕事がなくなり、会社の経営も苦しい状況が続いていきました。しかし、その後の高度経済成長期に伴い国内の景気も右肩上がりとなり、その波に乗ることで会社の経営も立て直しを図れる兆しが見えてきました。 そのような状況下の1955年2月には、今までの工具だけでなく、同じ分野でもう少し付加価値の高い転造盤というねじを塑性加工する機械の製造を開始しています。当時、転造盤といった機械はそれほど世に出回っておらず、ユニークな機械として受け入れられていきました。また、転造盤にはいくつか種類がありますが、その中で当社は丸い工具であるダイスを使用した『丸ダイス転造盤』の製造を行っています。丸ダイス転造盤で成形されるねじは、品質が優れているため、自動車の重要保安部品といわれるようなねじ類をつくる機械として、主に自動車関連の分野を中心に事業展開を進めていきました。 1971 年6月には、社名を現在の株式会社ニッセーに改称し、翌年には米国の企業とも技術提携を行い、『3ダイス転造盤』など様々な転造盤の開発を行っていきました。そして2000 年3月には、転造の原理を根本から考え直し、新しい塑性加工の実現に挑戦した『ギャラクシーCNC 転造機シリーズ』の販売を開始しています。 2002年には、ギャラクシーCNC転造機の基本機能をコストダウンして搭載するとともに、3 軸同期制御技術をコンパクトに凝縮し、豊富なオプション/自動化にも対応可能な『コメットCNC 転造機シリーズ』の販売を開始していきました。さらに2004 年4月には、両寄せ機構で4軸同期制御、高性能CNCで高難度の転造に対応する『アリウスCNC転 「まだ削りますか?」をスローガンに、“転造”という金属加工方法で事業を展開する株式会社ニッセー。転造の中でも「丸ダイス転造」を専門にしている同社の概要と技術、製品などについて、代表取締役社長 新仏 利仲 氏にお話を伺った。株式会社 ニッセー代表取締役社長新仏 利仲 氏高い生産性と環境への負荷を軽減する転造加工~丸ダイス転造盤の専業メーカーとして事業展開~造機シリーズ』の販売も開始しました。最近では、ギヤのボブ削り後のシェービング加工に替わり、転造加工で高精度に仕上げることが可能な『Z-COMET ギヤ仕上げ専用機』も開発しました。 また、機械だけでなく転造技術を利用し、ユーザー様と競合することのない転造部品加工にも力を入れており、緩まず、取り外しも簡単で、メンテナンス費用の大幅な削減に貢献する『パーフェクトロックボルト(PLB)』の販売なども行っています。当社は、このような転造機と転造部品加工を主力に、お客様の製品価値を高めながら利益と品質の向上に貢献する事業展開を進めています。 転造とはどういった技術なのか お聞かせ下さい新仏:転造とは、素材に強い力を加えて押し込み盛り上げて成形する金属加工方法(塑性加工)のことで、素材を削って成形する切削加工と比較しても加工スピードが速く、切屑などのごみを出しません。世間一般ではそれほど知られていませんが、その他にも、①材料を無駄にせず、切削と比べて高い生産性を実現、②消費電力が少ない/ごみを出さない/低騒音など、環境に優しい次世代の加工法、③被加工面は、研削されたダイスによって押しつぶされるので面粗度が著しく向上、④切削に比べて1.5倍以上の強度を実現、などのメリットが挙げられます。当社では、転造の優位性を踏まえて、丸い工具のダイスを使った「丸ダイス転造」を専門に行っています(写真1)。 この技術は、回転する2つ(または3つ)のダイスの間に棒状の素材を挟んで、ダイスを回転させながら成形するもので、ダイスを素材の中心方向へ押し付け、回転させることで素材表面に形状を成形していきます。そのため、製品の表面形状はダイスの表面形状に依存するので、転造には機械本体だけでなく欲しい製品の形状に合わせたダイスも必要になりますが、当社では独自技術により、汎用から高精度な極微細加工用まで様々なダイスを生産するノウハウを蓄積しているため、問題なく対応することができます。 また、転造では加工装置のことを転造盤と呼んでおり、使用するダイスの種類、動かし方の違いにより数種類に分類されます。一般的なものとしては、丸ダイス転造盤、平ダイス転造盤、プラネタリー転造盤の3種類が挙げられ、当社も以前はすべて手掛けていましたが、現在は丸ダイス転造盤の専業メーカーになっています。 御社の丸ダイス転造盤について お聞かせ下さい新仏:丸ダイス転造盤は、その加工における応用性の広さからねじ以外の部品加工にも幅広く用いられており、当社でも特にCNC 制御を備えた機種は、従来の転造盤の機能を凌駕しているため、転造盤ではなく転造機と呼んでいます。そして、お客様の加工対象に応じて開発した当社独自の「レシプロ転造」「複数転造」「ポジショニング転造」「押込み転造」「可変ピッチ/可変切込み転造」といった加工方法を選択することができます。 「レシプロ転造」は、左右主軸回転の同期を保ちつつ、正転/逆転を繰り返して転造を行う加工方法です。加工するねじ山が高いワークに適しています。 「複数転造」は、ワークの複数個所に転造する加工方法です。サーボスライドセンタ1 台でワークを軸方向の任意の位置に搬送し、例えば3組の異なるダイスを取り付けることで3種類の表面形状を1つのワークに転造加工することができます。これにより、従来は1つのワークに複数個所の転造加工を行う場合は、複数台の転造盤と自動供給機が必要でしたが、複数転造ではこれが1 台の装置で実現することができます。 「ポジショニング転造」は、ワークの回転方向の位相を指定する加工方法で、ねじ溝の開始ないし終了位置写真1 丸ダイス転造のイメージ図転造原理ダイスワーク写真2 『パーフェクトロックボルト』