ブックタイトルメカトロニクス10月号2016年

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概要

メカトロニクス10月号2016年

MECHATRONICS 2016.10 43換算又はそれ以下となる排出シナリオでは、次の特徴がある。[1]排出量が2050 年までに40 ~ 70 %削減(2010 年比)[2]2100 年には排出水準がほぼゼロ又はそれ以下●適応と緩和:・適応及び緩和は、気候変動のリスクを低減し管理するための相互補完的な戦略である。(4)気候変動によるリスク(5 つの懸念材料)と将来のGHG排出量 また、第5次評価報告書は、気候変動によるリスクである5つの懸念材料とCO2の累積排出量及び今後数十年間の温室効果ガス年間排出量の関係について整理している(図表5)注11)。 さらに、2050 年までの排出量の変化の予測を示すとともに、以下の事項を示唆している。①今後数十年にわたり温室効果ガス排出の大幅な削減を行えば、21世紀後半以降の温暖化を抑制することによって、気候変動のリスクを大幅に低減することができる。② CO2の累積排出量が、21世紀後半以降の、世界平均気温の上昇の大部分を決定付ける。③気候変動のリスクを抑制するためには、正味のCO2排出量を最終的にゼロにし、今後数十年間にわたる年間排出量も抑制する必要がある。 温室効果ガス濃度が2100 年に約450ppm CO2換算又はそれ以下となる排出シナリオは、工業化以前の水準に対する気温上昇を21世紀にわたって2℃未満に維持できる可能性が高いとされている。これらのシナリオは、世界全体の人為起源の温室効果ガス排出量が2050年までに2010年と比べて40~ 70 %削減され、2100 年には排出水準がほぼゼロ又はそれ以下になるという特徴がある。 なお、排出シナリオについては、気候感度注12)等に不確実性が残っており、長期的な分析等にも大きな影響を与え得るため、実態把握や予測等の精度向上に向け、今後も科学的知見の集積が必要である。注12):気候感度:Climate Sensitivity。大気中のCO2濃度を倍増させることにより引き起こされる(気候システムの)変化が平衡状態に達したときの世界平均地上気温の変化量として定義される。 ここで挙げた例のように、地球温暖化に関する科学は、様々な示唆を与え、各国の地球温暖化対策のみならず、国際的な取組の向かうべき方向を示してきた。COP21決定により、IPCCに対して、産業革命前の水準から1.5℃の気温上昇の影響及び関連する排出経路に関する特別報告書を2018 年に提供することが招請されるなど、国際交渉と科学は今や切っても切れない関係にあると言うことができる。(2016 年8 月15日記)<参考資料>1)環境省編:「2016 年版 環境白書/循環型社会白書/生物多様性白書」日経印刷(株)(2016.6)全文は以下のウェブサイトに掲載されている。http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/2)環境省:「< 報道発表> 平成28 年版環境白書/循環型社会白書/生物多様性白書」添付資料(2016.5.31)3) IPCC:「第5 次評価報告書統合報告書政策決定者向け要約」“②温暖化交渉の経緯~いかにして全ての国に適用される枠組みに至ったか”を取り上げている。 以下には、“①地球温暖化に関する最新の科学”の一部を紹介する。(1)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)注8) 気候変動に関する最新の科学的知見は、COP の交渉に不可欠なインプットとして、これまでも重要な役割を果たしてきた。そういった知見の集約のために中心的な存在となっているのが、1988 年に世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)によって設立された組織である気候変動に関する政府間パネル(IPCC)である。注8)IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change 現在195ヵ国が参加しているIPCC は、各国の政府から推薦された科学者の参加の下、人為起源による気候変動、影響、適応及び緩和方策等、地球温暖化問題について科学的・技術的・社会経済的な見地から包括的な評価を行い、得られた知見を政策決定者を始め広く一般に利用してもらうことを目的としている。2013 年から2014年にかけて公表された第5次評価報告書は、世界中で発表された9,200 以上の科学論文が参照され、800 名を超える執筆者により、4 年の歳月をかけて作成された注9)。注9)この「第5次評価報告書」については、以下のようなタイトルと副題で、過去に本シリーズで取り上げている。・「(タイトル)気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、(1)~(4)」(1)「(副題)~IPCCとその第5次報告書~」(第141回、2013年12月号)(2)「(副題)~完成した第5次評価報告書~」(第154回、2015年1月号)(3)「(副題)~完成した第5次評価報告書:第2次作業部会報告書~」(第155回、2015年2月号)(4)「(副題)~完成した第5次評価報告書:統合報告書SPM~」(第156回、2015年3月号)(2)IPCCの第5 次評価報告書 第5次評価報告書では、二酸化炭素(CO2)等、人為起源の温室効果ガスの排出が、20世紀半ば以降の観測された温暖化の支配的な原因だとした上で、代表的濃度経路(RCP)注10)という四つのシナリオによって将来気候の予測が行われた。注10)RCP:Representative Concentration Pathways、代表的濃度経路 その結果、21 世紀末(2081 年~ 2100 年)までの世界平均地上気温の1986 年~ 2005 年平均に対する上昇量は、温室効果ガスの排出量が非常に多い場合のシナリオ(RCP8.5)では、2.6 ~ 4.8℃の範囲に入る可能性が高く、厳しい緩和シナリオ(RCP2.6)では、0.3~ 1.7℃の範囲に入る可能性が高いと予測された(図表4)注11)。海洋では、海水温の上昇と酸性化が続き、世界の平均海面水位は上昇し続けると予測されている。注11)図表4および5は、同白書ではカラー印刷であり、理解を深めるために、ぜひ原図をご参照下さい。(3)IPCC第5 次評価報告書のポイント 同白書では、IPCC が発表した「第5 次評価報告書統合報告書政策決定者向け要約」3)のポイントをまとめて、以下のように紹介している。●観測された変化及びその原因:・気候システムの温暖化には疑う余地がない。・人為起源の温室効果ガスの排出が、20世紀半ば以降の観測された温暖化の支配的な原因であった可能性が極めて高い。 ●将来の気候変動及び緩和経路の特徴:・1986 ~ 2005 年平均に対する今世紀末の気温上昇は、温室効果ガスの排出量が非常に多い場合、2.6~ 4.8℃となる可能性が高い。・2℃未満に抑制する可能性が高い緩和経路は複数ある。温室効果ガス濃度が2100年に約450ppmCO2<図表5>気候変動によるリスク、気温の変化、CO2累積排出量及び2050年までの温室効果ガス(GHG)年間排出量変化の関係1)