ブックタイトルメカトロニクス10月号2016年

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概要

メカトロニクス10月号2016年

42 MECHATRONICS 2016.10日本産業洗浄協議会名誉理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力「2016年版環境白書」が取り上げたトピックス(2)~地球温暖化対策の新たなステージ(2)~【第175回】■京都議定書とパリ協定の比較 前号の終わりの部分で、同白書で解説している“パリ協定に対する評価”を紹介したが、同白書では、京都議定書とパリ協定の内容の比較を、6 つの主要項目にわけて一覧表で掲げている。以下には、それらを文章として紹介する(すなわち、6項目のテーマについて、“京都議定書”と“パリ協定”の特徴を、比較のために並記する)。(1)全体の目標●京都議定書:・条約の究極目標である“人為的起源の温室効果ガス(GHG)排出を抑制し、大気中の濃度を安定化すること”を念頭に置く。●パリ協定:・“産業革命前からの気温上昇を2℃よりも十分下方に抑えること”を世界全体の長期目標としつつ、1.5℃に抑える努力を追求する。・今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出と吸収のバランスを達成するよう、世界の排出ピークをできるだけ早期に迎え、最新の科学に従って急激に削減する。(2)削減目標の設定●京都議定書:・附属書Ⅰ国(先進国)全体で2008 ~ 2012 年の5年間に1990 年比5%削減させることを目標として設定する。・附属書Ⅰ国(先進国)に対して法的拘束力のある排出削減目標を義務付ける(日本6%減、米国7%減、EU8%減など)。●パリ協定:・全ての国に各国が決定する削減目標の作成・維持・国内対策を義務付ける。・5年ごとに削減目標を提出・更新する。(3)削減の評価方法●京都議定書:・条約において、温室効果ガスの排出量等に関する報告(インベントリ、国別報告書)の義務付けがあり、京都議定書で必要な補足情報もこれらに含める。●パリ協定:・全ての国が共通かつ柔軟な方法で削減目標の達成等を報告することを義務付ける。専門家レビュー・多国間検討を実施する。協定全体の進捗を評価するため5 年ごとに実施状況を確認する。(4)適応●京都議定書:・なし●パリ協定:・適応の長期目標の設定、各国の適応計画プロセスや行動の実施、適応報告書の提出と定期的更新を行う。(5)途上国支援●京都議定書:・附属書Ⅱ国に対して非附属書Ⅰ国への資金支援を義務付ける(条約上の規定)。●パリ協定:・先進国は資金を提供する義務等を負う一方、先進国以外の締約国にも自主的な資金の提供を奨励する。(6)市場メカニズム●京都議定書:・京都メカニズム(先進国による途上国プロジェクトの支援を通じたクレジットの活用、先進国同士による共同実施、国際排出量取引)を通じて、市場を活用した排出削減対策を促進する。●パリ協定:・日本提案の二国間オフセット・クレジット制度(JCM)も含めた市場メカニズムを削減目標の達成に活用することを可能にする。■パリ協定への道筋をつけた科学的知見 同白書では、前述の“パリ協定の概要”に続いて、“パリ協定への道筋をつけた科学的知見と交渉の経緯”として、“①地球温暖化に関する最新の科学” 前回の本シリーズは、「平成28年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」が取り上げた平成27年度(2015年4月~2016年3月)の大きなトピックスとして、数ある地球環境問題の中で、特に国際的な対応の展開である、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議における“パリ協定”の採択、および国連総会における、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の採択を、まず最初に紹介した(“<図表3>前回の目次”をご参照下さい。)。 ただし、その中から最初に取り上げたパリ協定の紹介は、説明が十分ではなかったので、今回は、パリ協定についての補足説明を行うこととする。  <図表3>前回の目次<図表4>気温と海面水位の将来予測1)■同白書の構成及び概要(1)パート1:「地球温暖化対策の新たなステージ」(2)パート2:「被災地の復興と環境回復の取組」(3)パート3:「主な課題に関する取組の進展」■パリ協定の概要(1)協定の目的(第2条)(2)緩和(第4条)(3)吸収源(第5条)(4)市場メカニズム等(第6条)(5)適応(第7条)(6)ロス&ダメージ(第8条)(7)資金(第9条)(8)技術開発・移転(第10条)(9)能力開発等(第11条)(10)行動と支援の透明性(第13条)(11)グローバル・ストックテイク(第14条)(12)促進・遵守(第15条)■パリ協定に対する評価■「パリ協定」の発効