ブックタイトルメカトロニクス9月号2016年

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概要

メカトロニクス9月号2016年

MECHATRONICS 2016.9 43(11)グローバル・ストックテイク(第14条)●パリ協定の目的とその長期目標の達成に向けた全体的な進捗を評価するため、協定の実施状況を5年ごとに検討する仕組みを規定●グローバル・ストックテイク注7)の結果について、各国の行動及び支援を更新・強化する際の情報とする注7)グローバル・ストックテイク:Global stock-take。パリ協定の目的および長期目標の達成に向けた全体的な進捗を評価するために、パリ協定の実施状況について定期的に確認することをいう。第一回グローバル・ストックテイクは2023年に実施され、その後は5年毎に実施される。(12)促進・遵守(第15条)●透明性があり、対立的・懲罰的でなく、促進的な機能を有する専門家の委員会からなる実施・遵守の促進のためのメカニズムを設置■パリ協定に対する評価 パリ協定に関する評価について、同白書では、各国政府やシンクタンクから様々な意見が挙げられているとして、そのいくつかを紹介し、同時に、京都議定書と比較した時のパリ協定の特色を強調している。 その第一は、全ての国が削減目標・行動をもって参加することをルール化した点であると指摘している。具体的には、京都議定書の下で進められた排出削減の取組を更に広げるために、各国が削減目標・行動を決定することによって、その国の状況や能力等に応じた多様な参加の形態を認め、これによって途上国の参加を引き出した仕組みが評価されている。また、緩和、適応、及び途上国への資金支援といった従来の交渉における困難な論点についても位置付けることにより、パリ協定はバランスが取れた包括的な内容となったとの指摘もある。加えて、COP21では地方自治体や民間企業、市民団体等、中央政府以外の様々な主体による積極的な取組が改めて評価されるとともに、パリ協定における長期目標や各国の政策自体が更なる低炭素投資や技術革新を誘発する機会を生み出すとも言われている。これらの点を総合し、パリ協定は厳しい長期目標を掲げつつ、多くの主体の関与によって成立した普遍性を備えた枠組みになっているとも評価されている。 同白書では、京都議定書とパリ協定との比較を6項目のトピックスについて比較しており、その内容を次号に紹介する。■「パリ協定」の発効 「パリ協定」の発効についての条件は、“「パリ協定」の批准国が55ヵ国を越えることと、それら批准国の温室効果ガスの排出量の合計が世界全体の55%以上に達すること”とされている。 2016年4月22日に、国際連合はニューヨークで「パリ協定署名式」を行い、175ヵ国(日本含む)が署名した。この署名は、パリ協定の内容に基本的に同意し、将来、正式に批准する意志があることを示している。 「パリ協定」の発効が何時になるかは、まだ定かではないが、フランスの政府関係者は、“年内発効は可能で、遅くとも来年(2017年)上期には実現できる”との見通しを新聞記者に語っている。(2016年7月19日記)<参考資料>1)環境省編:「2016年版 環境白書/循環型社会白書/生物多様性白書」日経印刷(株)(2016.6)全文は以下のウェブサイトに掲載されている。http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/2)環境省:「<報道発表>平成28年版環境白書/循環型社会白書/生物多様性白書」添付資料(2016年5月31日)3)日本経済新聞:「パリ協定、年内発効は可能、仏気候変動大使」(2016.7.18)・第1章:国際的な枠組みの進展・第2章:恵み豊かな森里川海をつなぎ、支える社会に向けて・第3 章:自然の循環と経済社会システムの循環の調和に向けて・第4 章:ポリ塩化ビフェニル廃棄物の期限内処理に向けた取組の推進・第5章:ライフサイクル全体における水銀対策の推進 この中で、国際的な環境問題への取組が第1章で取り上げられており、「2030アジェンダ」の問題はその第1章の中で詳細に解説されている(後で章を改めて紹介する予定)。■パリ協定の概要 COP21は、予定より会期を延長して厳しい交渉が行われた結果、2015年12月12日(日本時間13日未明)に交渉は合意に至り、京都議定書以来18年ぶりの新たな法的拘束力のある国際的な合意文書となるパリ協定が採択された。 今回合意に至ったパリ協定は、国際条約として初めて「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」や「今世紀後半の温室効果ガスの人為的な排出と吸収の均衡」を掲げたほか、附属書Ⅰ国(いわゆる先進国)と非附属書Ⅰ国(いわゆる途上国)という附属書に基づく固定された二分論を超えた全ての国の参加、5年ごとに貢献(nationallydetermined contribution、以下「NDC」という。)を提出・更新する仕組み、適応計画プロセスや行動の実施等を規定しており、国際枠組みとして画期的なものと言える。 同白書では、このパリ協定のポイントを12の条項から選び、全32項目を取り上げて以下のように解説している。(1)協定の目的(第2条)●世界共通の長期目標として、産業革命前からの地球の平均気温上昇を2℃より十分下方に抑えるとともに、1.5℃に抑える努力を追求●気候変動に関する適応能力の拡充、強靱性及び低排出型の発展を促進●低排出及び強靱な発展に向けた経路に整合する資金フローを構築●衡平並びに各国の異なる事情に照らし、共通だが差異のある責任及び各国の能力の原則を反映するよう実施(2)緩和(第4条)注4)●今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出と吸収のバランスを達成するよう、世界の排出ピークをできるだけ早期に抑え、最新の科学に従って急激に削減注4)緩和と適応:Mitigation and Adaptation。緩和とは、温室効果ガスの排出削減と吸収の対策を行うことをいう。省エネの取組みや、再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギー、CCS(二酸化炭素回収・貯留)の普及、植物によるCO2の吸収源対策などが挙げられる。 これに対して、適応とは、既に起こりつつある気候変動影響への防止・軽減のための備えと、新しい気候条件の利用を行うことをいう。影響の軽減をはじめ、リスクの回避・分散・需要と、機会の利用をふまえた対策のことで、渇水対策や農作物の新種の開発や、熱中症の早期警告インフラ整備などが例として挙げられる。●貢献(削減目標)の作成・提出・維持及びその目的を達成するための国内対策を国内対策の実施を各国に義務づけ● 各国の貢献(削減目標)は従来からの前進(progression)を示すことを規定●先進国に対し、経済全体の絶対量での排出削減目標を設定し引き続き主導すべきことを規定●途上国に対し、削減努力の強化を継続することを規定するとともに、経済全体での排出削減目標への将来的な移行を奨励●全ての国が長期の温室効果ガス低排出発展戦略を策定・提出(3)吸収源(第5条)●温室効果ガスの吸収源及び貯蔵庫の保全及び適当な場合には強化のための行動をとる●途上国における森林減少及び森林劣化による排出量を減少させる取組等(REDD+)注5)等について、条約に基づき合意された関連の指針及び決定に規定される既存の枠組みに基づき、実施及び支援するための行動をとることを奨励注5)REDD+:Reduction of Emission from Deforestation andForest Degradation+。「途上国における森林減少と森林劣化からの排出削減並びに森林保全、持続可能な森林管理、森林炭素蓄積の増強」の略称で、途上国に対し森林保全に経済的インセンティブを提供することで、森林を伐採するよりも残す方を経済的価値の高いものにしようという試み。(4)市場メカニズム等(第6条)●我が国提案の二国間オフセット・クレジット制度(JCM)も含めた市場メカニズムの活用を位置付け●各国が国際的に移転される緩和の成果を貢献(削減目標)に活用する場合、持続可能な開発を促進し、環境の保全と透明性を確保。また、パリ協定締約国会議の採択する指針に従い、確固とした収支計算(特に二重計上の回避)を適用(5)適応(第7条)注4)●適応能力を拡充し、強靱性を強化し、脆弱性を低減させる世界目標の設定●各国による適応計画プロセスや行動の実施、適応報告書の提出と定期的更新(6)ロス&ダメージ(第8条)●極端な気象現象と緩やかに進行する現象を含む気候変動の悪影響に関連したロス&ダメージ注6)を低減、最小化、対処することの重要性を認識注6)ロス&ダメージ:Loss and Damage、損失と被害。温室効果ガス排出量の削減などの気候変動に対する適応策を講じたにも関わらずもたらされる損失や被害のことを指す。この損失や被害はハリケーンや洪水など突発性の気象現象によるものや、海面上昇などの時間をかけて起こる現象によってもたらされる人的被害及び環境への被害を含み、経済的損失・被害及び済的損失・被害(商業取引されないものに対する損失と被害)に区分される。(7)資金(第9条)●先進国に対し、条約に基づく既存義務の継続として、緩和と適応注4)に関連して途上国を支援する資金の提供を義務付け●先進国以外の締約国に対しても、自主的に資金を提供するよう奨励(8)技術開発・移転(第10条)●技術開発・移転に関する強化された行動を促進する、技術メカニズムの業務のための指針を与える技術枠組みを設置●イノベーションの重要性を位置付け(9)能力開発等(第11条)●各国の必要性に基づき、またその必要性に対応し、国が主導的に実施●途上国の能力を高める取組を行う締約国は、その取組を定期的に提出し、途上国は能力開発の取組の進捗を定期的に提出●適当な制度的措置を通じて能力開発の活動を強化(10)行動と支援の透明性(第13条)●各国の異なる能力を考慮し、経験に基づく柔軟性が組み込まれた、強化された途上国透明性枠組みを設定●全ての国が共通かつ柔軟な方法で貢献(削減目標)の実施・達成に関する情報等を提供●各国の情報について、専門家レビュー及び促進的・多国間検討を実施