ブックタイトルメカトロニクス8月号2016年
- ページ
- 41/52
このページは メカトロニクス8月号2016年 の電子ブックに掲載されている41ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは メカトロニクス8月号2016年 の電子ブックに掲載されている41ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
メカトロニクス8月号2016年
MECHATRONICS 2016.8 411. はじめに 前回は、同社の有田工場における、マウンタの段取り替えや、バーコードによる管理体制などをご紹介した。今回は話を部品搭載の少し前の工程における様々な取り組みを取りあげたいと思う。2. メタルマスクと治具の管理 有田工場には、メタルマスクが1,000面以上保管されている(写真1)。マスクはその日の生産に必要な分が保管庫から現場へ払い出される。これらのメタルマスクは随時版替えされ、約1 年かかってそのすべてが使用されるという。 なお、マスクを払い出す際には、少しでもごみがかからないようにという配慮から、被せるためのカバーを用意している。 各メタルマスクには通し番号が設けられており、それを示す黄色のシールが貼られている。通し番号は、マスクを印刷機にかけるうえでおのおのに必要となる吸着ブロックのナンバーともリンクしており(写真2)、マスクとともに同じ番号が打たれた吸着ブロックもいっしょに供出されるため、時間のロスがない。 メタルマスクの中には「改」と書かれたシールが貼られたものがある。これは、たとえば、マスクの開口部が狭いため未はんだが発生してしまうことから、開口部を少し削り、はんだ量の供給量を多くするといった「改造」が施されていることを示している。 「改」印のマスクについては、現物だけでなく、設計段階のCADデータについても修正点を反映するようにしている。「改」のシールは基本的にはCADレベルにフィードバックされた段階で外されるが、中にはCAD 側のマスターを変えることができないものもある。 そのようなものについてはシールを貼ったままとしており、版を新しく差し替える際にも改造の旨が申し送られ、継承されることになる。 また、使用したメタルマスクは、洗浄機にかけた後、洗浄が十分であるかを画像でチェックしており、さらに、テンションに問題がないかという点も計測している。テンションが緩ければクリームはんだの抜けも悪くなるため、新しい版を用意しなければならない。このように、マスクに起因する不良を削減するための取り組みもつねに行われている。3. クリームはんだの管理1. 目を引く「自販機」=冷蔵庫 クリームはんだは、保管状態と実際に使用する状態への配慮などから、「先入れ・先出し」をする必要がある。 同社ではクリームはんだの保管のために、ペットボトルのドリンク用の自動販売機を導入しており、冷蔵庫として使用している(写真3)。 必要な際は、通常の自販機と同様に「購入ボタン」を押せば取り出し口に出てくる仕組みとなっているが、もちろん、硬貨を入れる必要はない。 自販機の「販売品目」を示すディスプレイ部分は??本誌の写真ではわかりづらいが??黄色のゾーンと青色のゾーンの、二つのブロックに分けられている。 今回の取材時には青色のゾーンのものは「品切れ」で「発注中」だった。そして「〇月〇日」に補充される旨が掲示されており、青色のゾーンのものは、黄色のゾーンのものを使い切るまではボタンを押しても出ないように設定されていた。 なお、ゾーニングされてはいるものの、入れられているはんだの種類はすべて同じ、同一品である。2. 「発注カンバン」方式を導入 また、クリームはんだの在庫状況は、冷蔵庫上部に設置されたカウンタによってひと目で分かるようになっている。クリームはんだを受け出す担当のオペレータが最後の1個のボタンを押した場合は、社内の発注を担当する部署へ発注カードを持っていく「発注カンバン」方式を導入している。 これによって業者への発注が行われると同時に、同部署の責任者が保管庫の切り替え作業(=もう片方のゾーンから供給されるように)を行う。このような管理をしつつ、「先入れ・先出し」を実現しているのである。3. 道具にも活きる「改善提案」 クリームはんだの使いかたについても、同社に特徴的な、現場からの「改善提案」が導入されている。 この現場では、クリームはんだを印刷機に投入する量を、良好な印刷品質とローラ部の回転への配慮から、1 回につき250gとするように決めている。しかし投入するごとに量を厳密に計測するのは手間であり、大きな時間のロスとなる。 そこで、はんだを容器から掬い取る際に使用するはんだ撹拌用のへらに切れ目を入れたものを自作している(写真4)。このへらは、先端の切れ目部分まで掬えば1 杯で50gとなるように設定されており、5 杯を1 回分の目安としてクリームはんだを投入しているのである。これも現場からの改善提案から生まれたものである。 このへらは現場に設けられた「副資材入れ」にしまわれているが、その際にもルールを定めており、握り部分を下側に、刃の部分を上向きに入れるようにしている(写真5)。汚れたままのへらを使用すると、凝固したはんだが装置に目詰まりしてしまうため、あえて上に向けて置いて「見える化」し、清潔な状態を保つように意識の向上を図っているのである。 また、印刷の精度を確認するために、1 枚目の印刷時には基板に静電防止のシートを貼って状態を確かめる試し刷りを実施している(写真6)。独自の生産ラインを構築し、高い生産性と高品質な製品づくりを実現する、和歌山アイコムの取り組み(その⑤)写真2 各メタルマスクに対応する吸着ブロック写真4 先端の切れ込みまで掬うと50g となるよう「改造」されたはんだ撹拌用のへら写真6 印刷精度の確認のために静電防止シートを用いている写真1 メタルマスク 写真5 それぞれのしまいかたも決められた副資材入れ写真3 中古の自動販売機を活用した冷蔵庫工場レポート