ブックタイトルメカトロニクス8月号2016年
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メカトロニクス8月号2016年
10 MECHATRONICS 2016.8 御社を起業したきっかけなどについて お聞かせ下さい長谷川:当社は、2004 年4月に株式会社ハマ・システムという社名で設立しています。私自身、学生時代は夜間の高校に通いながら昼間は工場の見習工として働いており、高校を卒業する頃には現場の機械操作などベテランの域に達していたと思います。その後、設計についても色々と学んでみたいという思いがあったので、関連する企業に勤めたり、派遣社員として設計事務所などに勤務していました。また、働きながら夜間大学の工学部に入学して、そこでも設計について学んでいました。 そして、大学卒業後も設計関連の仕事をしていましたが、28歳の時に結婚をし、それを機に独立を考えるようになり、1968年に部品加工などを行う長谷川オートマシン製作所を起業しました。当初は、私が工場で働いていた時の技術を活かして下請けの仕事を行っていましたが、経営は厳しくこのままでは将来的に会社の経営が続かないだろうと予測し、大学などで学んだことを活かせる設計に目を向けていきました。その方が少しでも付加価値を上げていけると考え、設計製作の仕事を始めることにしました。 最初は、一品一様の装置を手掛けていましたが、ある商社に勤められていた方の助言で、今まで世に出ていなかったような半導体関連の装置を手掛けたことで会社の業績も上がり、1970 年に有限会社横浜工機製作所に改組しました。ただ、その半導体関連の装置は特許を取得していなかったので、他社も同じような装置を開発するようになりましたが、私もまだ若かったので、それを教訓に様々なことにチャレンジしていきました。1989 年には株式会社横浜工業に改組し、コネクタなど電子部品の設計/製作を手掛けるようになり、さらにアセンブリーまで行うようになっていきました。 そして、会社もある程度の軌道に乗ったので、私が還暦を迎えた時に一線を退き、息子に後を任せることにしました。それから私は、今まであまりできなかった趣味などに時間を費やしていましたが、3、4 年もすると飽きてしまい、このままでいいのだろうかと考えるようになっていました。自分としては、まだまだ身体も動くし、社会に貢献していける自信もあったので、もう一度何かを始めようと思ったことが、当社を起業したきっかけになっています。 起業後は、まず今までやってきたことを思い起こして、 機械の要となる機械要素部品において、その中でもボルトに注目し、事業を展開する株式会社ロックン・ボルト。“外せないボルト”や“絶対緩まないボルト”といった独自の発想から、今まで世に出ていないような製品を開発した同社の概要や技術などについて、代表取締役社長長谷川 賢司 氏にお話を伺った。株式会社 ロックン・ボルト代表取締役社長長谷川 賢司 氏独自性のある発想で生まれた画期的な機械要素部品~“外せないボルト”や“絶対緩まないボルト”で市場開拓~「何が失敗で何が良かったのか」、「その経験を活かしてこれから新しいことを始めていくにはどんなものが良いのか」ということを色々考えながら、様々なことにチャレンジしていきました。その中には、製品化までたどりついたものもありましたが、会社の柱にしていくにはほど遠く、そこで量産できるようなものが現実に最良であると実感し、最終的にたどり着いたのが機械の要となる機械要素部品であり、使用する量に注目して、今まで世の中に出ていないような“ 外せないボルト”や“ 絶対緩まないボルト”を開発しようと思い始めていきました。それが、現在の主力製品である『Lock'n Bolt(ロックンボルト)シリーズ』になっています。また、以前の失敗を踏まえて、開発した製品に関してはすべて特許の取得も行っています。 そして、『Lock'n Boltシリーズ』を当社の柱としていくことから、2011 年11月に社名を製品と同じく株式会社ロックン・ボルトに変更しています。このようにして当社は、少しずつ知名度を上げていき、現在も幅広い分野から様々なニーズを頂くことで、それに対応するボルトの開発を行っています。 御社のボルトに関するコア技術などに ついてお聞かせ下さい長谷川:当社のコアとなる技術は2つあります。まず1つは、始めに開発を行った“ 外せないボルト”に活かされた技術です。“ 外せないボルト”とは、特殊な工具を用いることなく締め付けることができ、締め付けた後では緩めることができず、しかし非常時には緩めることができるボルトです。 通常のボルトでは、動作方向を一方に制限するために用いられるラチェット機構が使われていますが、ラチェット機構は円形に対して用いられる機構で、当社ではこの機構を平面に対して使えるように変形しました。私はその変形した機構を、セレーション機構と呼んでいます。このセレーション機構が、当社のセキュリティーに関連する様々なボルトに活かされています。 もう1つのコア技術は、“ 絶対緩まないボルト”に活かされている技術です。産業分野では、機械や装置などに使用されているボルドが、振動により緩んでしまうという問題を抱えています。当社では、その問題を解消するために、ボルトの軸心に貫通穴を開け、ボルト先端の形状を円錐状に加工しました。さらに、ねじ部先端には拡径するためのスリット加工を行い、そしてボルト先端に円錐形状の駒を入れ、その駒をボルト頭側からキャップボルトにて締め上げました。これにより、主ボルト先端のねじ部が拡径され、ねじ山とねじ山を喰いつかせることで緩み止めを防止します。 このボルトは、他社製に比べて締付力が高く、脱落による事故の防止と安心感が得られ、従来はナットを使用して緩み止めを行っていましたが、ナットを必要としないという特徴をもっています。また、それらのことを実証するため、東京都立産業技術研究センターや神奈川県産業技術センターなどに協力を頂き、振動試験や強度試験(抗張力/トルク)を行っています(写真1、2)。振動試験では、NASA(米国航空宇宙局)の振動試験規格であるNAS3350に準拠した試験をクリアし、17分間に3万回転の振動でも緩まないことが実証されています。 2つの技術を活かした主力となるボルト 製品の特徴などについてお聞かせ下さい長谷川:まずは、緩み止めボルト『Lock'n Bolt-Fシリーズ』を紹介します(写真3)。この製品は、簡単な構成で確実に緩みを防止する新構造のユニットボルトです。通常のボルトと同じように使えるため、現在使用されているボルトと交換するだけで簡単に緩み止め効果が得られます。 特徴としては、①ナットを使用しなくても緩み止めが可能、②ナットを使用しない分の重量が軽減できる、③同一面からのみで緩み止めが可能、④繰り返しの利用写真1 振動試験の状況と状態図写真2 強度試験の状況