ブックタイトルメカトロニクス3月号2016年

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メカトロニクス3月号2016年

42 MECHATRONICS 2016.3日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力成層圏オゾン層問題のトピックス~「2015年版環境白書」が取り上げた現状と対策~【第168回】■オゾン層問題の現状 オゾン層問題の現状については、同書の目次では“2014年度 環境の状況、第2部 各分野の施策等に関する報告、第1章 低炭素社会的の構築、 第3 節 地球温暖化に関する国内対策、4.フロン等の現状”の部分に記載されている注1)。注1)同書の121 ~ 122 ページに記載 “CFC、HCFC、ハロン、臭化メチル等の化学物質によって、オゾン層の破壊は今も続いています。オゾン層破壊の結果、地上に到達する有害な紫外線(UV-B)が増加し、皮膚ガンや白内障等の健康被害の発生や、植物の生育の阻害等を引き起こす懸念があります。また、オゾン層破壊物質の多くは強力な温室効果ガスでもあり、地球温暖化への影響も懸念されます。 オゾン層破壊物質は、1989年以降、「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」(「モントリオール議定書」と略)に基づき規制が行われています。その結果、代表的な物質の1つであるCFC-12の北半球中緯度における大気中濃度は、我が国の観測では緩やかな減少の兆しが見られます。一方、国際的にCFCからの代替が進むHCFC及びオゾン層を破壊しないものの温室効果の高いガスであるHFCの大気中濃度は増加の傾向にあります。 オゾン全量は、1980年代から1990年代前半にかけて地球規模で大きく減少した後、現在も1970年代と比較すると少ない状態が続いています。また、2014年の南極域上空のオゾンホールの最大面積は、過去10年間(2004~2013年)の平均とほぼ同程度でした(図表1)。 オゾンホールの規模は、長期的な拡大傾向は見られなくなっているものの、年々変動が大きいため、現時点ではオゾンホールに縮小の兆しがあるとは判断できず、南極域のオゾン層は依然として深刻な状況にあります。モントリオール議定書科学評価パネルの「オゾン層破壊の科学アセスメント:2014年」注2)によると、南極域のオゾン層が1980年(昭和55年)以前の状態に戻るのは今世紀後半と予測されています。”注2)WMO:「オゾン層破壊の科学アセスメント:2014 ~ 政策決定者向けアセスメント(総括要旨)」(Scientifi c Assessmentof Ozone Depletion: 2014 = Assessment for Decision-Makers Executive Summary■オゾン層問題の対策 オゾン層問題の対策については、同部同章の「第3節 地球温暖化に関する国内対策、4. フロン等対策」に記述されているもので、その全文を以下に紹介する注3)。注3)同書の137 ~ 139ページに記載(1)国際的な枠組みの下での取組 “「オゾン層の保護のためのウィーン条約」(ウィーン条約」と略)及び「モントリオール議定書」を的確かつ円滑に実施するため、我が国では、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(1988年法律第53号、「オゾン層保護法」と略)を制定・運用しています。また、同議定書締約国会合における決定に基づき、「国家ハロンマネジメント戦略」注4)等を策定し、これに基づく取組を行っています。注4)国家ハロンマネジメント戦略:モントリオール議定書締約国会合の決定に基づき、日本におけるハロンの管理についての考え方、取組を取りまとめたもの。2000 年7 月にUNEP のオゾン事務局に提出した。 さらに、開発途上国による「モントリオール議定書」の円滑な実施を支援するため、議定書の下に設けられた多数国間基金を使用した二国間協力事業、開発途上国のフロン等対策に関する研修等を実施しました。 また、国際会議等において、ノンフロン技術や「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」(2001年法律第64号、以下「フロン回収・破壊法」と略)の改正等、日本の技術・制度・取組を紹介しました。”(2)オゾン層破壊物質の排出の抑制 “我が国では、「オゾン層保護法」等に基づき、「モントリオール議定書」に定められた規制対象物質の製造規制等の実施により、同議定書の規制スケジュール(図表2)に基づき生産量及び消費量(=生産量+輸入量-輸出量)の段階的削減を行っています。HCFCについては2020年をもって生産・消費が全廃されることとなっています。 「オゾン層保護法」では、特定物質を使用する事業者に対し、特定物質の排出の抑制及び使用の合理化に努力することを求めており、「特定物質の排出抑制・使用合理化指針」(1989年環境庁・通商産業省告示第2号)において具体的措置を示しています。ハロンについては、「国家ハロンマネジメント戦略」に基づき、ハロンの回収・再利用、不要・余剰となったハロンの破壊処理などの適正な管理を進めています。”(3)フロン類の管理の適正化 “我が国では、主要なオゾン層破壊物質の生産は、大幅に削減されていますが、過去に生産され、冷蔵庫、カーエアコン等の機器の中に充てんされたCFC、HCFCが相当量残されており、オゾン層保護を推進するためには、こうしたCFC等の回収・破壊を促進することが大きな課題となっています。また、CFC等は強力な温室効果ガスであり、その代替物質であるHFCは「京都議定書」の削減対象物質となっていることから、HFCを含めたフロン類の排出抑制対策は、地球温暖化対策の観点からも重要です。 このため、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機及びルームエアコンについては「特定家庭用機器再商品化法」(1998年法律第97号、「家電リサイクル法」と略)に、業務用冷凍空調機器については「フロン回収・破壊法」に、カーエアコンについては「使用済自動車の再資源化等に関する法律」(2002年法律第87号、「自動車リサイクル法」と略)に基づき、これらの機器の廃棄時に機器中に冷媒等として残存しているフロン類(CFC、HCFC、HFC)の回収が義務付けられています。回収されたフロン類は、再利用される分を除き、破壊されることとなっています。2013年度の各機器からのフロン類の回収量は図表3、図表4のとおりです注5)。注5)同書の図表3、図表4 は略また、「フロン回収・破壊法」には、機器の廃棄時にフロン類の回収行程を書面により管理する制度、都道府県知事に対する廃棄者等への指導等の権限の付与、機器 日本における地球規模の環境問題に関する現状の分析と今後の対策について、長期にわたってその推移を概観するには、日本政府および関係機関が公的に発表する定期的な報告書を過去にさかのぼって検索する必要がある。 環境省が毎年発表する「環境白書」は、年度毎に発表される報告書の代表的なものである。その前身は1969~1971年に厚生省が発行した「公害白書」であったが、同書は、環境庁が新しく発足した時点より「環境白書」と名を変え、1972年版より環境庁が発行することとなった。 また、2001年版以降は環境庁から改称された環境省が発行し、2007年版からは「循環型社会白書」と合本になり、さらに2009年版からは「生物多様性白書」も加えた三種類の白書の合本となっている。 本連載の前回では、国際連合の特別行事「国際デー」の一つとして、久しぶりに成層圏オゾン層問題の話題を取り上げる機会を得た。最近のオゾン層問題は、気候変動問題に包含されて議論されることが多く、「環境白書」での取り上げ方にも変化が認められる。今回は最新の白書「2015年版環境白書」1)において4個所に分けて記載されているオゾン層問題を、以下にまとめて紹介する(通読がしやすいように、法律名等を「」でくくり、略称を付記し、年号を西暦とする等、手を加えた)。<図表1>南極上空のオゾンホールの面積の推移1)