ブックタイトルメカトロニクス3月号2016年
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メカトロニクス3月号2016年
12 MECHATRONICS 2016.3 御社の概要についてお聞かせ下さい河島:当社は、ベアリングの新しい仕様を普及させていくため、2006 年9月に設立しました。私自身、以前は大手ベアリングメーカーにエンジニアとして勤務していましたが、ある程度年齢がいったところで知財部へ異動になり、主にベアリングに関する特許出願を調査する業務に従事していました。ベアリングには、転動体同士が接触して摩擦が大きくなるのを防ぐ役割をもつ保持器というものがあり、その保持器の特許を調べたところ、当時2,000件ほどの改良などに関するものが大手企業を中心に出願されていました。 その反面で、保持器なしで似たような機能を動作させる特許が1 件しか出願されておらず、その1 件についても理屈が明確ではなかったので、保持器なしの研究開発を進めてみても良いのではと思い、個人的に ベアリングの技術開発/製品販売などを中心に事業展開している株式会社空スペース。約500年前から続けられている保持器を使用したベアリングの手法から、新たに保持器を必要としないタイプの自律分散式転がり軸受け(ADB)を開発し、ベアリングの市場に普及させようとする同社の概要と技術などについて、代表取締役 河島 壯介 氏にお話を伺った。株式会社 空スペース代表取締役河島 壯介 氏保持器を必要としない新しいタイプのベアリング技術を開発~油に頼らず玉同士を非接触として滑り摩擦を解消~色々と研究開発を行って新しい仕様を考え出し、技術部の方に話を投げかけてみました。しかし、結果として当時勤務していた会社では、保持器なしの研究開発は行わないということになったので、私個人で引き続き研究開発を進め、その技術を世に広めたいと考えたことが当社を設立するきっかけになっています。 そして、個人的に研究開発を進めていき、保持器を必要としない自律分散式転がり軸受け(ADB:Autonomous Decentralized Bearing、以下ADB)を開発し(写真1)、特許の出願も私の個人名で行っています。その後、勤めていた大手ベアリングメーカーを退社し、若干の改良を行って再度特許を出願した時は、当社の社名で行っています。また、当社の社名は、ADBを使用することで、玉と玉の間に滑り摩擦を解消するスペースが空くことから、この新たなベアリング技術を世に広めていきたいという想いで付けたものです。 そして当社は、ADBの開発/販売を中心に事業展開しています。 御社が開発した ADBについてお聞かせ下さい河島:ベアリングは、日本では転がり軸受けともいわれていますが、玉同士が接触すると凸と凸により傷が付きやすく、従来はそれを防ぐために保持器を使用して機械的に玉を囲っていました。この手法は、約500年前から続けられていますが、玉同士が離れることを機械的手段に頼らなくても、縦走する玉列の先頭の玉が加速すれば、必ず後の玉との間にスペースが空きます。この動作を自動車に例えてみると、先行車が加速すれば後続車との間に車間距離が空くという現象が起こるので分かりやすいと思います。そのために、まずは玉を加速させることから始めました。 ベアリングの玉は、自動車と違って一周回ってまた戻ってくるため、同じ速度で回すにはどこかで減速させなくては加速させることはできません。減速させて加速させることが重要になってきます。そのために、外輪軌道の一部で玉の回転半径を小さくします。 玉の運動には自転と公転があります。その場で回転するのが自転で、玉が真っすぐというか大きく輪を描いて動くのを公転といい、地球の自転と公転と同じです。そして、玉が回転半径が小さくなる部分に侵入すると、玉の公転運動に対する自転運動の割合が増加します。例えば玉が10mm 公転する間に180°自転する従来のベアリングの玉の回転半径rは、r=10/π≒3.2mmです(πr=10mmより)。このベアリングの外輪軌道(玉が通過する部分)における一部の玉の回転半径を1割ほど小さく2.9mmにすると、198°自転する計算になります。計算はどうでも良いのですが、この自転を早めるエネルギーによって玉の公転が減速し、逆に玉の回転半径が元に戻ると公転が加速します。この自転を速くすると公転が遅くなり、公転が速くなると自転が遅くなるという現象は、エネルギーの保存則によるものです。 つぎに、玉の回転半径を一部で小さくする方法を説明します。具体的には、ベアリング外輪軌道の一部に小さな凹みをつくることで、玉を減速させた後で加速させることができます(写真2)。この小さな凹みを“分散起点”と呼びます。これによって、保持器を使用しないで玉を分散させたベアリングがADBです。 この製品は、従来の保持器を使用したベアリングとどのような違いがあるのかといいますと、必ずしも油を必要としないことが挙げられます。ベアリングはカタログなどを見てみると計算できる寿命が記載されていますが、それ以外に計算できない寿命というものがあります。計算できる寿命は、メーカーの理想とする使い方をしていてもいつかは壊れてしまうという寿命で、それ写真1 従来のベアリングとADB写真2 ADBの原理写真3 保持器滑りの概要