ブックタイトルメカトロニクス2月号2016年

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概要

メカトロニクス2月号2016年

MECHATRONICS 2016.2 351. はじめに 2016 年1月号に引き続き、和歌山アイコム(株)の取り組みをご紹介する。 前回までに、アイコム(株)の業務用・マリン用・アマチュア用の各種無線機器、並びにネットワーク機器を生産している同社の概要、並びに、独自の生産方式について述べたが、今号からは、和歌山県有田川町にある同社の有田工場(写真1)の、おもに実装工程を概観しながら、同社を特徴づける生産方式の特徴についても説明していきたいと思う。2. 工程間を縦横に行き来するロボット <その①>でもご紹介したように、同工場の敷地面積は26,000m2で、基板実装から製品の組み立て・梱包までを一貫して行うことができる設備を有している。 工場に入荷された材料は、徹底的な受け入れ検査を受けた後、厳密な情報システムによって倉庫で一元管理され、そこから、各工程に必要な材料が出庫されることになる。 同工場内では、各工程間のあらゆる物品を搬送するロボットが稼働している。移動時に音楽を流して作業者にその存在を知らせること、前方に障害物や人の存在があると自動的に停止することに加えて、この有田工場は3 階建ての建物であるため、自分でエレベータを呼ぶ機構が取り入れられている(写真2)。有田工場では6 台のロボットが稼働している。3. 品質を保つために さて、材料の管理にあたっては、もちろん倉庫内だけ配慮すればよいというわけではなく、各工程でのさまざまな注意が当然必要である。その大敵のひとつが静電気である。 有田工場の実装フロアの天井には、ミストを自動噴射する装置(写真3)が備え付けられている。同じフロアにリフロー装置が設置されているため、輻射熱によって空気が乾燥してしまうことになる。そこで、湿度を保つために??季節に応じて、だいたい45 %から60 %に保つように設定されている??温湿度制御ユニットで制御され、自動的にミストが発生するようになっている(写真4)。 また、全作業員は、それぞれの作業にかかる前に、帯電防止のためにテスタで、帯電防止靴のチェックを行っている(写真5)。 このテストについては、作業員が出社時に通すバーコードで一元管理されており、テストのし忘れや漏れがないことが徹底されている他、履歴がPCに残される。なお、テスタの基準をクリアできなかった場合は、備え付けの「帯電防止靴洗浄場」(写真6)で靴の洗浄をし、靴の状態を専用の鏡で確認するなどした後、再度、テスタでチェックを行う。そして、始業時までに責任者が、全員がクリアしたことを確認する。4. 段取り替えの効率化① 実装工程ではまず、クリーナによる基板の清掃が行われる。 近年、生の基板は密封された状態で納品されるため、粉などが基板に付着していることが多いという。 その後、高速スクリーンはんだ印刷機による基板への印刷が行われ、その後、ソルダペースト印刷検査機による検査が実施され、次の工程に送られる。 数多くのモデル・機種に使用される、数百種類に及ぶプリント基板を小ロット生産するためには、段取り替えの効率化は至上命題である。段取り替えを、月に数百回行っている同社では、その効率化のためにモジュラマウンタを導入しているが、この装置についても、ただ導入するだけで満足することなく、「段取り替えに要するタイムロス」を限りなくゼロに近づけるために機械の停止時間を見える化し(写真7)、原因などを分析するしくみを回すことで、稼働率のさらなる向上を図っている。ここにも同社の、徹底的な「課題」の洗い出しと改善に向けた取り組みの姿勢が垣間みえる。独自の生産ラインを構築し、高い生産性と高品質な製品づくりを実現する、和歌山アイコムの取り組み(その③)写真2 搬送ロボット写真4 温湿度制御ユニット写真7 STOP 時間を示す時計写真1 和歌山アイコムの有田工場の建物の外観写真3 ミスト噴射装置写真6 帯電防止靴洗浄場写真5 帯電防止のためのテスタ工場レポート