ブックタイトルメカトロニクス10月号2015年
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メカトロニクス10月号2015年
42 MECHATRONICS 2015.10日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力里地里山について(8)~最近の「森・里・川・海プロジェクト」~【第163回】■「国際生物多様性の日シンポジウム」 冒頭に紹介したシンポジウムは、以下のような内容であった(写真1)。(1)行事名: 「国際生物多様性の日シンポジウム~(副題)つなげよう、支えよう森・里・川・海~」(2)目的・森里川海を豊かに保ち、恵みをひきだすため、「国と地方」、「都市と地方」、「行政、NPO、企業、市民」の役割について考え、それぞれの取組をつなぎ、広げていくための新たな仕組みを考える。(3)主催・環境省・国連大学サステイナビリティ高等研究所・地球環境パートナーシッププラザ(4)協力・国連生物多様性の10年日本委員会(5)日時・2015年5月30日(土)13:30~16:30(6)「つなげよう、支えよう森里川海プロジェクト」の概要 私たちの暮らしは、自然からの恵みに支えられています。きれいな空気、豊かな水、食料や資材をはじめ、自然が持つ防災・減災機能、自然の上に成り立つ生活文化やレクリエーションなど、その種類は数えきれないほどです。 こうした自然を象徴するのが「森」「里」「川」「海」です。これらは本来、互いにつながり、影響し合っています。しかし行き過ぎた開発や、利用・管理の不足などによって、そのつながりが絶たれたり、それぞれの質が下がってしまったりしています。この傾向は、気候変動が進むことによっても拍車がかかります。日本の人口が減り、高齢化も進む中、私たちはどうやって森里川海を管理し、地方を創生していけるでしょうか。 このような現状を受け、環境省は2014年12月に「つなげよう、支えよう森里川海」と銘打って省内にプロジェクトチームを立ち上げました。森里川海の保全・管理の費用や労力をどう確保するか。近年は、地方公共団体や企業、民間団体での意識の高まり、自発的な取り組みも進みつつあります。このため環境省だけではなく、地方公共団体、有識者、先進的な取り組みを実施している方々と対話や議論を行いながら、森里川海の恵みを将来にわたって享受し、安全で豊かな国づくりを行うための基本的な考え方と対策の方向を取りまとめることとしています。(7)講演者・武内和彦(国連大学 上級副学長/東京大学サステイナビリティ学連携研究機構長・教授)・涌井史郎(東京都市大学 教授/UNDB-J注)委員長代理)・吉沢保幸(一般社団法人 場所文化フォーラム 名誉理事)・粟井英朗(富士山の銘水株式会社 代表取締役社長)・遠藤寛子(横浜市 環境創造局政策課 環境プロモーション担当課長)・高木美保(タレント・芸農人)・中村文明(多摩川源流研究所 所長)・井上恭介(NHK 報道局チーフ・プロデューサー)(8)生物多様性条約事務局長からのメッセージ このシンポジウムには、生物多様性条約事務局長であるプラウリオ・フェレイラ・デ・ソウザ・ジアス氏からメッセージが届き、会場で紹介された。以下はその抜粋である。 “生物多様性は地球の生き物を支える重要な基盤であり、その基盤の上に私たちや次の世代の人々の発展と幸福が成り立っています。国連の「ポスト2015年開発アジェンダ」注4)の文脈の中でも優先度の高い事項である「持続可能な開発と生活」に対しても、生物多様性やそれによる生態系サービスは欠かせないものです。注4)ポスト2015年開発アジェンダ:Post-2015 Development Agenda そのため、2015年の国際生物多様性の日のテーマは「持続可能な開発のための生物多様性」となりました。 生物多様性は我々にとって欠かせないもの‐例えば、食料や繊維、燃料に薬品‐を供給することを私たちは知っています。また、こうした生態系の諸機能や恵みは、私たちの経済だけでなく、健康、食料安全保障、自然災害の防止、さらには文化の起源をも支えるものであります。 21世紀、生物多様性を保全・復元・強化しつつ持続可能な形で利用することは、私たちが現在また今後数十年に直面する諸課題‐とりわけ、貧困削減、食料安全保障、持続可能な精算と消費、災害リスクの軽減や気候変動‐の解決につながります。より具体的には、先ず、生態系を保護するとともに貧しく脆弱な人々が生態系サービスを利用できるようにすることが、貧困問題の対処に欠かせません。 次に食料供給を確実なものとする持続可能な農林水産業にとって、生物多様性はその基盤となります。第三に、森林や水源を保護することは、水資源を確保し自然災害に対する脆弱性を軽減することに貢献します。 さらに、森林破壊や生態系劣化を抑制すること、生態系の復元を促進すること、森林、乾燥地、放牧地や農耕地における炭素蓄積を促すことは、気候変動を和らげるのに経済的に効果的な方法であり、またこれらは社会的かつ経済的な利益をもたらします。私たちは生物多様性とその保全にとってだけでなく、人類の福祉にとっても重要な岐路に立っていると言っても過言ではありません。 今年の後半、ニューヨークにおいて開催されるハイレベルの国連総会では、ポスト2015年開発アジェンダが採択される予定です。2012年6月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)において承認された事項に従い、今度の新しいアジェンダには、持続可能な開発目標注5)が含まれる予定です。注5)持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals、SDGs 幸運にも、持続可能な開発に関連して生物多様性の問題に取り組むことは多くの賛同を得ています。生物多様性戦略計画2011-2020及び生物多様性愛知目標が、2010年に192の政府によって合意され、さらにリオ+20の成果文書においても再確認されたのです。 さらに、国連総会のポスト2015年開発アジェンダに関する最近の議論において、愛知目標を達成し生物多様性の損失に対しより広範に取り組むことは、地球規模の遊園的課題の対処に大きく貢献し得るという見解が確認されています。 今こそ、政府、企業、市民社会、先住民、そして個人それぞれが地球規模の行動を起こすべき時なのです。もし私たちが生物多様性戦略計画を実行しなければ、持続可能な開発目標を達成することはできないでしょう。同様に、もし私たちが開発政策に対して生物多様性の主流化ができなければ、生物多様性を保護・復元し、それを持続可能な開発形で公平に活用という国際的な目標を達成することはできないでしょう。 私は、日本政府が新しいプロジェクト「つなげよう、支えよう森里川海」を始めていると聞きました。私は、「持続可能な開発のための生物多様性」のアイデアを示すのに重要な一歩となりうるこのプロジェクトを 2015年5月30日、環境省は国連大学サステイナビリティ高等研究所注1)、地球環境パートナーシッププラザ注2)とともに、国際生物多様性の日(5月22日)注3)を記念して、「つなげよう、支えよう森里川海」公開シンポジウムを開催した。国際連合が設定した国際デーの一つである「国際生物多様性の日」には、世界中で生物多様性保全のメッセージを伝えるイベントが行われているが、今年の国際テーマは「持続可能な開発のための生物多様性」とされており、生物多様性の問題は、本年度の「環境白書」においても、過去の里地里山問題という表現から変わって、“森・里・川・海のつながり”、“森は海の恋人”、“SATOYAMA イニシアティブ”など各種のキーワードを使って、その活動内容が巾広く紹介されている。 今回は、本シリーズ「ものづくりと地球環境」で過去に“里地里山問題”として取り上げた話題を1)、“森・里・川・海のつながり”と“生物多様性”にまつわるトピックスとして、事例についても、漁業における生物多様性の重要性を追求し、更には東日本大震災からの復興を目指す新しい成果を紹介する。注1)国連大学サステイナビリティ高等研究所:(University of United Nations, Institute for the Advanced Study of Sustainability、UNU-IAS)。2014年に従来のサステイナビリティと平和研究所(東京、2009年開設)と高等研究所(横浜、1996年開設)を統合する形で開設。サステイナビリティとその社会的・経済的・環境的側面に注目しながら、政策対応型の研究と能力育成を通じて、持続可能な未来の構築に貢献することを目指している。注2)地球環境パートナーシッププラザ:(Global Environmental Outreach Centre、GEOC)。環境省と国際連合大学が共同で運営する環境パートナーシップの拠点。注3)国際生物多様性の日:UN International Day for Biological Diversity、UN-IDB。<写真1>国際生物多様性の日シンポジウムのプログラム2)