ブックタイトルメカトロニクス8月号2015年
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メカトロニクス8月号2015年
42 MECHATRONICS 2015.8日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック~平成24年度集計結果から~(その3)【第161回】■第Ⅳ部 化学物質による環境リスク低減のために1.市民・事業者・行政のそれぞれの役割 PRTR制度は、個々の物質を規制するのではなく、化学物質の排出に関する情報を公表することにより、地域全体で化学物質による環境リスクを減らしていくことを目指した仕組みである。この制度では、国や地方自治体などの行政と事業者、そして市民や専門家などが、それぞれの役割を果たしていかなければ、公表された情報は活かされない。PRTR制度におけるそれぞれの役割は<図表8>のように示される。 市民は、まず身の周りの化学物質に少しでも関心を持ち、公表されたデータを見ることが期待される。 PRTR制度で情報が公表されるようになっても、私たちが関心を持ってそれを見なければ制度を活かすことができない。毎年一人でも多くの市民がPRTRデータに目を通し、それをきっかけに自らの暮らしを見直したり、事業者や行政とコミュニケーションを図ったりすることが、社会全体で化学物質による環境リスクを減らしていく取組につながる。2.リスクコミュニケーション PRTR 制度による「化学物質に関する情報」を市民、事業者、行政が共有し対話することにより、化学物質による環境リスクを減らしていくことが期待されている。一人一人が生活を見直し、少しでも化学物質の使用や排出を削減するように心がけることと併せて、地域全体で化学物質による環境リスクを減らす取組を進めるためには、市民、事業者、行政の間でコミュニケーションを図ることが欠かせない。(1)リスクコミュニケーションとは 化学物質による人や動植物への影響を把握するには、科学的な知見が必要である。影響の度合いがわかったら、次は化学物質の量が人や動植物に悪影響を及ぼすレベルにならないよう、適切に管理することが必要になる。より合理的にリスクを管理し削減するためには、市民、事業者、行政が化学物質に関する情報を共有し、意見交換を通じて意思疎通を図ることが必要である。これを「リスクコミュニケーション」と呼んでいる。 市民や事業者、行政がそれぞれ自分たちの都合だけを主張していては、化学物質による環境リスクを削減する取組がなかなか進まない。そこで、お互いの考えていることを理解しあい、力を合わせて取組を進めようとするものである。(2)近隣の工場とリスクコミュニケーションしたいときは 近所の工場で万が一事故が発生してその影響が住民にも及ぶようなことがあった場合、感情的な対立が先行して、建設的な話し合いや有効な対策の推進が困難であったり遅れたりすることになりかねない。日頃から住民、事業者、行政が情報を交換し、信頼関係を築いておくことが必要である。①住民からアクションを起こす まず事業者が化学物質についてどのような取組をしているかを知ることから始めるとよい。事業者には必ず問い合わせ窓口があるので、そこに「PRTR届出状況について説明してほしい」「環境報告書に掲載されている情報について解説してほしい」などと要請すれば対応してもらえることが多い。個人レベルでも良いが、お互いに関心のあるグループ単位で要請した方が、事業者としても対応しやすい。 また、市役所等の環境担当部署に「リスクコミュニケーションしたいので仲介してほしい」と依頼する。さらに、事業者と話し合う前に、個別事業所のデータを入手したり、他の事業所と排出量を比較したりして予習しておくと効果的である。 最初から難しい議論をしようとせず、まずは「わからないことを聞く」、「自分たちが何を考えているか知らせる」、また「事業者の取組を知る」ことから始めるとよい。②事業者からアクションを起こす 事業者は、地域清掃への協力、お祭り等のイベントへの協賛など、地域社会との関わりを持っていることもあり、総務部門が担当しているので、環境安全部署の担当者はすでに地域住民との信頼関係がある部署のチャネルを通じてコミュニケーションを始めれば、テーマを化学物質に移しても、比較的すんなりとコミュニケーションが進められる。 また、市役所等に相談すれば、町内会長など地域住民の核となる方を紹介してくれる場合もある。③行政からアクションを起こす 行政は、市民と事業者が協力して、自主的にリスクコミュニケーションが推進されるよう支援することが求められる。事業者や市民に「リスクコミュニケーションの考え方」「実践方法」「得られるメリット」などを説明しリスクコミュニケーションを促すとともに、事業者や市民から「リスクコミュニケーションしたい」という手が上がったら、積極的に協力することが望まれる。前回に引き続いて「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック」の紹介を行う。前回までに紹介した部分の目次を参考までに(図表5)に示す。<図表8>PRTR制度におけるそれぞれの役割2)<図表5>前回までの目次■第Ⅰ部 暮らしの中の化学物質1.暮らしの中の化学物質2.暮らしの中でできること■第Ⅱ部 PRTR制度とは1.PRTR制度の仕組み (1)化学物質の排出・移動に関する情報を 国が1年ごとに集計し、公表する制度 (2)本制度は、化学物質の情報を共有し、 協力して取組を進める2.対象となる化学物質 (1)第一種指定化学物質 (2)特定第一種指定化学物質 (3)第二種指定化学物質3.対象となる事業者4.対象事業者が届け出るもの5.排出量・移動量の把握、届出6.対象事業者以外からの排出(国の推計) (1)国が推計する排出量 (2)その推計方法 (3)家庭用殺虫剤の具体的な推計例■第Ⅲ部 PRTRデータ1. PRTRデータの概要 (1)PRTRデータの構成 (2)基本となる集計表 (3)PRTRデータでこんなことがわかる (4)PRTR データの取扱い上の留意点2. 平成24 年度PRTR データの集計結果 (1)平成24 年度PRTR データの概要 (2)2012 年度PRTR データをグラフや表で見る3. 2003年度~2012年度PRTRデータの集計結果4. ホームページ上でPRTR データを見る