ブックタイトルメカトロニクス8月号2015年
- ページ
- 10/52
このページは メカトロニクス8月号2015年 の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは メカトロニクス8月号2015年 の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
メカトロニクス8月号2015年
10 MECHATRONICS 2015.8 御社の概要についてお聞かせ下さい白川:当社は、高齢化が進む中、予防医学でのビジネスチャンスを予見し、主に業務民生用の血圧計をはじめとする医療機器の研究開発を手掛ける目的で、1981 年に設立しました。その後、中国のメーカーなどが安価な製品を量産し始めたことから、日本ならではの高機能な病院向けの製品開発を目指すようにしていきました。例えば血圧計にしても、ただ血圧を測るだけでなく、血管の硬さが測定できる機能を装備した製品を提供していました。 その後、複数の医科大学との共同研究を行った結果、1993 年に「動脈硬化の計測装置」の開発に着手し、1997 年に製品化を行い、2007 年には「痛みの計測装置(痛み計)」の開発に成功しています。そして、このようなものづくりへの取り組みが高く評価され、2008 年に中小企業庁が推進する「元気なモノ作り中小企業300 社2008 年版」と、独立行政法人中小企業基盤整備機構が推進する「中小企業産学官連携成功128 社」に選定されました。 また、元々海外志向が強かった当社は、日本での販売に好影響を与えることを見込んで、米国市場をターゲットに事業展開を進めていきました。当初は、当社独自の販路でスタートしましたが、製品の評価は高かったものの、輸出の拡大には思うように繋がっていきませんでした。そこで、ジェトロ(独立行政法人日本貿易振興機構)の貿易投資相談を利用し、さらにセミナー参加や海外ミニ調査サービス、海外コーディネーターリテイン事業などを通じて、ターゲットとした国/地域の産業情報や企業情報を入手していきました。 医療機器の開発/研究/製造/販売などで事業を展開している株式会社オサチ。主力となる痛み計や血圧計といった独自の生体測定技術を活かした製品群のほかに、新たな製品開発や市場拡大を目指すため、業務提携を行いグループ企業として連携を進めていく同社の概要や製品などについて、代表取締役 白川 太 氏にお話を伺った。株式会社 オサチ代表取締役白川 太 氏生体測定技術を活かした高機能製品を開発~グループ企業との連携で市場拡大を目指す~ それにより、2013 年にはジェトロの推進する輸出有望案件支援企業に採択され、専門家による個別支援を受けながら、展示会や商談会に参加したほか、専門家のネットワークも活用しながら候補企業との商談を重ねていきました。また、ジェトロのサービスなどを利用することで懸念事項の1つであった、信頼できる企業の見分け方や海外企業からの急なオファーへの対応方法についてもノウハウを得ていきました。こうした取り組みの結果、2013 年に韓国向け、2014 年には香港向けの輸出を実現し、現在では当社の全売上に占める輸出の割合は6 割に達するなど、海外での事業展開も順調に進められています。 国内の事業においては、2013 年に山陽精工株式会社、2014 年には宇喜多白川設計株式会社と業務提携を行っています。当社は医療機器のメーカーではありますが、自社の工場がないので製造に関しては外部に委託していました。今回の業務提携により、製造に関しては山陽精工株式会社を中心に行い、設計に関しては宇喜多白川設計株式会社の方で行うといった仕組みを構築し、グループとして事業展開を進めていきます。 御社が開発した痛み計について 開発背景などお聞かせ下さい白川:人体の感覚である視覚、聴覚、味覚、嗅覚等の五感については、物理的に存在する大きさ等と比較することで、客観的な評価が行われています。しかしながら、体性感覚の1つである痛みについての評価は十分に行われていません。医療が高度化している中、病院に行く最も強い動機である「痛み」を、病院ではVAS(Visual Analog Scale)といった自己申告による主観的な評価で行われていました。そのため、ガンにより終末期を迎えた患者が痛みを医師に訴えたとしても、その痛みの大きさを正確に医師に伝えることが難しく、痛みを緩和するための投薬が十分に行われていない現実を、我々は医師との対話および医療現場において目にしてきました。痛み計は、こういった医療現場の実情を踏まえ、痛みを客観的な数値で表示することで、患者様のもつ痛みを医師と共有することを目的として開発されました(図1)。 この痛み計は、痛みの定量評価のために、痛みに対する感受性の差(内的な要素)と測定環境の違い(外的な要素)の影響を受けないような測定を行います。それは、被験者が感じる最小の電気刺激量を測定する方法(基準値となる電流知覚閾値の測定)と、被験者のもつ痛みと同等な電気刺激量を測定する方法(痛み対応電流値)で、これらの測定により得られた結果を数値処理して、痛み量を評価する指数を表示するという原理になっています。 また測定方法としては、被験者の評価部位に専用の単回使用電極を装着します。そして、被験者にハンドスイッチを準備してもらい、Startボタンをクリックすると測定が開始され、被験者が何らかの刺激を感じた時にハンドスイッチを押してもらいます(写真1)。非常に微弱な感覚のため、電極装着部位への注意を集中させて「何か」を感じた時に押してもらい、それが基準値となる電流知覚閾値として測定されます。また、痛みと同等の大きさとなる感覚を感じた時に、ハンドスイッチを押してもらい、それが痛み対応電流値として測定されます。 これらの測定方法により、痛みの大きさを表す指数として「痛み度」や「痛み指数」という値が算出され、医師の治療と診断を幅広くサポートすることが可能になるのです。 御社の主力製品となる 痛み計や血圧計について 特徴などをお聞かせ下さい白川:まずは、痛み計からご紹介します。当社が開発した痛み計は、知覚・痛覚定量分析装置『PainVisionPS-2100』という名称で病院に販売されています(写真2)。ただ、この装置を開発した当時は、まだ当社の販売体制が確立されていなかったので、どこかに販売をお願いするような戦略を考えていました。そこで、図1 痛み計の開発経緯写真2 知覚・痛覚定量分析装置写真1 痛み測定の様子 『PainVision PS-2100』