ブックタイトルメカトロニクス7月号2015年

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概要

メカトロニクス7月号2015年

44 MECHATRONICS 2015.7表3-1 片方向照射方式における放出率の算出手順《第75回》3 製造をみてみよう(その1)1.導光板の放出素子の敷設(1)片方向照射方式の放出率を設定 前回まで長きにわたり、バックライトの仕組みや設計方法を思案してきた。いよいよ試作から製作の過程に入る。 まず導光板の製作工程に着手しよう。導光板の機能は非常に繊細である。その性能を円滑無難に発揮させるためには、導光板の光学性質を優しく理解してかからない限り、たいていは失敗する。単なる平らな板だとかシートだと侮って、自社保有の設備に自信を抱いた製造者が、いきなり成形作業に着手し、途中で開発や製作を中断した実例には事欠かない。さりとて難しい理論の技術書を紐解き、あるいは高価な計算ソフトウエアで駆使しようとしても、不成功に終わった事業所もあった。事前の調査に入念な人を、実際の現場を知らない者だと皮相的に観察される気の毒な場面もあった。光学技術分野に馴染みがない者にとって、この導光板は不可解な代物でしか見えない。 バックライトは照明光学技術の分野である。レンズなど結像光学の技術書を熟読しても、このバックライトに適応する記述はない。この観点に気付かなくて、衒学な知識を振りかざした論説や高価な計算ソフトウエアに従ったところで、バックライトの開発に活路は見出せない。 この誌面の表題“バックライト”で記述してきた内容は、高度な論説ではない。ただ導光板やシートの中を走り抜ける光線束の挙動に我が身を置き換えることにより、光線束の性質を理解して、光線束を円滑に誘導できるようになる。 導光板の端面から入射した光線束は、導光板の中に進入し、表面と裏面で多重反射しながら進行する。このとき導光板の表面または裏面に放出素子を敷設しておくと、進行中の光線束は屈折または反射して導光板の表面から放出される。多重反射している光線は、進行方向がばらばらであるから、表面から脱出しても射出方向は纏まっていない。放出された光線束の方向は導光板の屈折率の割合だけさらに拡張する。たとえば放出素子に45°の傾斜角を設けた形状にすれば、放出光線の放出角が直角になり、したがってプリズムシートは不要になるであろうと期待して、試作実験したが成功しなかった。 放出素子が導光板内を進行している光線束の光束Φが導光板から放出する光束φの割合(放出率γ)は、導光板に敷設した放出素子の大きさAとその放出機能αおよび放出素子が敷設されている個数nに比例し(または敷設密度に比例し)、並びに導光板の板厚Tに逆比例する。   γ=φ/Φ∝αA・n/T この数式を認識した後に、導光板を製作工程に入る。まず自社の製造設備や製造目的に適合する放出素子の種類を選択する。放出素子には導光板の表面を切削するものや貼付するもの、もしくは導光板の内部に混入させるものなど多様な種類がある。それぞれの素子の大きさや敷設密度がどの程度の放出機能が有るのであろうかを知るには、液晶板に適応したサイズの板を選択し、希望の素子を同一密度で試供の板に敷設してみる。そして端面からの照射光線束を照射し、導光板の距離に対応して放出光束φによる輝度分布を測定すれば、算出できる(図3-1)。 次に誘導光線束の減衰現象を思索し理解し(表3-1)、導光板の端面からの距離に呼応した密度で放出素子を敷設してゆく。均等放出を得るには、φx=φ0=一定と設定する。γx=φ0/Φx の数式を微分して γx=φ0・Φx/Φx2 を計算するが、この解は導光板の終端に近づくに従って急激に増加する関数であって、取り扱いしにくい。思い切って、放出率の逆数1/γxを一つの従属変動とみなせば(1/γx)= Φx/φ0となり、誘導距離xに対応した直線関係 1/γx=K-x が得られる(図3-2)。導光板の長さを100とした場合、K=100のときに放出総合効率はη=100%であり、K=125のときη=100%、K=200のときη=50%になる。 この現象は導光板の終端に与える放出率γLからも推定できる。導光板の終端では放出素子に最大の放出率γmaxを与えておくと、放出効率ηmaxが最大になり得る。ここで、放出素子の放出率γmaxに高値を望めないときには、導光板としての放出効率ηがどの程度に低下するのであろうか(図3-3)。計算すると、意外にも放出率が理想の半分に削減されても放出効率は80~90%に止まる。 この数式に従って放出素子の敷設密度を設定しながら、導光板の表面または裏面に放出素子を加工してゆく。ほぼ均等に放出素子を敷設した導光板の場合では、板厚Tを漸減してゆくと、板厚Tに反比例して放出光線束φが増加する効果はある。しかし気泡や屈折率の異なる粒子を均等に混合した材料で導光板を形成した場合、板厚Tを始端側から次第に薄くしてゆく形状にすれば、板厚変化の法則にしたがって放出率γが増加してゆくだろうと直感しても、粒子の存在も同時に減少してゆくので、放出率γにはなんらの変化ももたらさない。 こうした片方向照射形式において、均等放出状態の場合と集中放出状態の場合とを比較してみる(図3-4)と、敷設する放出素子に設定する放出率γxの分布は、導光板の始端で大きな差異があり、誘導距離xが20%を過ぎた辺りからほぼ同値になる。比較する数値は倍率であって絶対数値ではないので、放出素子に与える放出率γを分布させるには、慎重であるべき事を教えている。 放出素子の放出率γは高値であるのが理想であるが、理想の70%以上を有していれば容認できることが、以上の算定手段を吟味すると理解できる。大切なことは放出率の敷設分布の滑らかさにあるようだ。本格製造の前に、機能や性能を吟味するために、試作の作業が必要とされる。3 製造を見てみよう(その2)