ブックタイトルメカトロニクス7月号2015年

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概要

メカトロニクス7月号2015年

42 MECHATRONICS 2015.7日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック~平成24年度集計結果から~(その2)【第160回】(4)PRTRデータの取扱い上の留意点 PRTRデータを見たり、活用したりする上で留意すべき点は次のとおりである。①届出排出量・移動量の限界・一定の要件を満たした事業者が届出を行うため、全国すべての事業者からの排出量等を網羅しているわけではない。・事業者が届け出た排出量等は、必ずしもすべてが実際に測定した値に基づくものではないことからデータの精度には限界がある。②届出外排出量の限界・届出外排出量については、想定される主要な排出源を対象に国が推計を行っているが、推計を行った時点で利用可能な信頼できる知見が存在する排出源のみが対象となっており、すべての排出源を網羅したものとはなっていない。・届出外排出量については、推計時点で利用可能な信頼できる知見に基づき推計を行っているものの、あくまで推計であり、データの精度には限界がある。また、排出源の種類によっても推計方法が異なるため、精度に開きがある。③公表データによるリスク評価注5)の限界注5)リスク評価:人の健康や動植物への影響などを科学的に予測するために、化学物質の有害性と暴露の程度を評価することをいう。・公表されるPRTR データはあくまで排出量・移動量であり、環境中の濃度や、人や動植物が実際にさらされる化学物質の量(暴露量)ではない。また、化学物質が人の健康や動植物に影響を及ぼすおそれ(リスク)の大小を直接表すものでもない。・化学物質による環境や人への影響については、PRTR データに加え、それが環境中にどのように分布しているのか(環境中の濃度)、実際に人や生物にどれくらい取り込まれるのか(暴露可能性)、化学物質の有害性の程度、といったさまざまな要因と併せて分析することが必要である(図表5)。・PRTR制度で公表される排出量・移動量のみで人の健康や動植物への影響を検討することはできないが、排出量の多い物質や地域の特定等、リスク評価あるいはそのための暴露評価注6)の際の着目点が把握できる。注6)暴露評価:人が皮膚や口、肺などを通じて体内に取り込む化学物質の量を推定し、評価することをいう。 ・なお、ダイオキシン類については、届出量の単位がmg(ミリグラム:1/1000グラム)と、他の物質と比べて極端に小さいため、図表中でも単位を区別して表している。また、ダイオキシンにはいくつもの種類があり、それぞれに毒性が異なるため、毒性の大きさを統一した量(TEQ)に変換されて届出がされる。2.平成24年度PRTRデータの集計結果(1)平成24年度PRTRデータの概要 2014年3月に公表されたPRTRデータの結果は、①全国の事業者から2013年4 月1日から7 月1日までに届出のあった、2012 年4 月から翌年3 月までの1年間の化学物質の排出量・移動量②届出の対象にならなかった事業所や家庭、自動車等の移動体などからの国が推計した化学物質の排出量を集計したものである。・PRTR制度の届出対象である第一種指定化学物質(462物質)のうち、事業者から排出量・移動量について届出があった物質は436物質。・事業者から全国36,504事業所の届出があり、1事業所あたりの平均届出物質数は6.8物質。・届出を行った事業者以外からの排出は、届出の対象とならない事業者からの排出や、家庭で使用される 防虫剤や塗料、洗剤などの排出、自動車等の移動体から排出される332物質を推計した。(2)2012年度PRTRデータをグラフや表で見る 「本市民ガイドブック」では、2012 年度データについて、図および表により、分析を行っている。ここでは9項目に分けて記載されている図および表の表題を紹介する(現物を参照されたい)。①全国の届出排出量・届出外排出量・(図)届出排出量・届出外排出量の構成・(図)全国で排出量が多かった上位10物質(図表6)・(表)排出量の多かった上位5物質の主な用途と有害性②都道府県別に見る・(表)2012年度の都道府県別届出排出量および届出外排出量・(図)都道府県別の届出排出量と届出外排出量の合計・(図)都道府県別のエチルベンゼン排出量③排出先別割合・(図)排出先別排出量の割合④大気・水・土壌に多く排出されている物質・(図)排出先別(大気、公共用水域、埋立処分、事業所内土壌)の排出量(上位5物質)⑤排出量の多い業種・(図)排出量の多い上位10業種(図表7)・(図)製造業種別(化学系、機械系、金属系)の排出物質の種類と量⑥家庭から排出される物質・(図)家庭から排出される物質の種類と量⑦身の周りの気になる物質・(表)特定第一種指定化学物質届出排出量・移動量(排出先、移動先別)・(表)特定第一種指定化学物質届出排出量・届出外排前回に引き続いて「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック」の紹介を行う。前回で紹介した部分の目次を参考までに(図表4)に示す。<図表5>リスク評価の模式図2) <図表6>全国で排出量が多かった上位10物質2)<図表4>前回の目次■第Ⅰ部 暮らしの中の化学物質1.暮らしの中の化学物質2.暮らしの中でできること■第Ⅱ部 PRTR制度とは1.PRTR制度の仕組み (1)化学物質の排出・移動に関する情報を   国が1年ごとに集計し、公表する制度 (2)本制度は、化学物質の情報を共有し、   協力して取組を進める2.対象となる化学物質 (1)第一種指定化学物質 (2)特定第一種指定化学物質 (3)第二種指定化学物質3.対象となる事業者4.対象事業者が届け出るもの5.排出量・移動量の把握、届出6.対象事業者以外からの排出(国の推計) (1)国が推計する排出量 (2)その推計方法 (3)家庭用殺虫剤の具体的な推計例■第Ⅲ部 PRTRデータ1.PRTRデータの概要 (1)PRTRデータの構成 (2)基本となる集計表 (3)PRTRデータでこんなことがわかる