ブックタイトルメカトロニクス7月号2015年
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メカトロニクス7月号2015年
10 MECHATRONICS 2015.7 御社の概要についてお聞かせ下さい白川:当社は、1963 年に山梨県大月市賑岡町で設立し、当初は光学製品の精密部品加工を行う、光学メーカー専門の下請け会社としてスタートしています。社名の“ 山陽”は、以前私が勤務していた工場の先輩が、私が独立する門出に「山梨から陽が昇る」という意味で付けて頂いたものです。そして、1973 年に大月市猿橋町に小沢工場を建設し、1991 年には小沢工場に第二工場を建設して、本社も現在の所在地となる大月市猿橋町に移転しました。 その後、バブル経済の崩壊により当社の経営も悪化し、このまま下請けの仕事を続けるだけでは厳しい状況になり、企業として将来のビジョンを明確にしていく岐路に立っていました。当時、取り引きのあった光学メーカーからは、「海外に生産拠点を移すので、そちらに来てくれないか」というお話も頂きましたが、既に国内にこだわったビジネスを行っていくという方針は固めていました。しかし、どのような会社にしていきたいのかについては、私と当時の社員30 名ほどで話し合いを行っていきました。結論が出るまでに一年ほど掛かりましたが、「自分の子供たちをこの会社に入れたいと思うような会社にしていきたい」というスローガンが決まり、これが現在、当社の経営理念にもなっています。 そして、それを実現するためにはどうしたら良いかということを話し合い、まずは社員が満足することであり、次にお客様が満足されること、また我々だけでは仕事ができないのでパートナー企業にも満足してもらいたい、さらに地域や社会も満足させたいという4つの満足が必要であると考えました。それからもう一つ、他社に劣らぬような優れた独自技術をもつべきであると 精密部品加工だけでなく、高温観察装置などを製造販売するメーカーでもあり、また最近では医療分野にも事業を展開する山陽精工株式会社。技術も何もないところから、チャレンジの積み重ねで得た技術とノウハウを活かし、ITを利用した独自の取り組みなども行う同社の概要や事業展開、製品などについて、代表取締役社長白川 寿一 氏にお話を伺った。山陽精工株式会社代表取締役社長白川 寿一 氏幅広い加工技術で独自の生産体制を確立~チャレンジ精神から生まれた優れた技術とノウハウ~考えました。 この5つの方針を基に、1996 年頃から当社の第二創成期がスタートしています。まずは、独自技術を社内で開発するため新たに開発部門を設置し、自社オリジナル製品の開発を行いました。そして、1999 年にオリジナル製品第1 号となる高温観察装置を開発し、下請け企業からの脱却を図り、メーカーへの第1歩を歩み始めました。2000 年には、販売拠点となる営業所を東京都八王子市に設置し、事業展開を開始しています。2003 年からは、海外への輸出を開始し、韓国をはじめとして、台湾、中国、インド、マレーシアなどのアジア各国ほか、欧米にも販売を行うなど、幅広く海外展開を行っています。 一方で、元々の精密部品加工の社員にも、最初に開発部門に選ばれた社員の奮起に刺激され、何か新たな取り組みを行わなくてはいけないという意識改革が芽生えていきました。メーカーという顔もあるので加工だけでなく、電気の部分や組み立てなどもできるようになりたいと考えました。ただ、一つの製品をつくり上げていくには当社だけでは難しい部分もあるので、当社のできない部分をフォローしてもらうパートナー企業が必要不可欠であり、そこで考えたのが「製造支援隊」の立ち上げでした。 「製造支援隊」は、当社が提案するITを活用し、設計から組立までの一貫生産を行なう技術ネットワークサービスです(写真1)。自社工場を一つの製造会社と位置づけ、現在は100 社を超える協力会社と連携し、設計・加工・組立までの一貫生産体制でお客様の要望に対応しています。この取り組みは2007 年から開始しており、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」も受賞し、これにより製品開発の事業だけでなく、下請けの事業の売り上げも予想以上に伸びていきました。 さらに、最近では医療業界にも参入し、2013 年には株式会社オサチ、2014年には宇喜多白川設計株式会社と業務提携を行い、本格的に医療業界での事業展開を開始しています。そして、2014 年より組織変更を行い、精密部品加工/組立/製造支援隊を行うものづくり事業、高温観察装置の開発/販売を行いメーカー部門を担うSMT事業、医療機器設計から販売を行う医療関連事業の3 本柱で事業を展開しています。 御社の技術とその技術を活かした「製造支援隊」についてお聞かせ下さい白川:現在、当社のコアとなる技術は切削加工で、一般的に切削加工は旋盤加工とフライス加工の2つに分かれますが、当社はその2つが混ざり合った複合的な加工を得意としています。また当社は、光学関連をはじめ様々なものづくりにおいて50 年の実績がありますが、その間技術も何もないところから独自に行い、他社の系列にも属さず、営業活動もそれほど力を入れて行っていませんでした。そのため、高度成長期と呼ばれた時には、積極的に営業を行っている企業に比べると、仕事的に効率のあまり良くない難しい案件や手間の掛かる案件などしか回ってきませんでした。しかし、このような案件にチャレンジしていたことが、当社の技術向上やノウハウになっていき、そして誰よりもものづくりの目利きができるような知識を得ていきました。 それにより、初めて訪問する外注先の雰囲気や設備、経営者の話などを聞くだけで、大体どれくらいの仕事が行えるかという見極めができるようになりました。これは私だけでなく、当社の技術に携わっている社員は写真1 「製造支援隊」のミーティング写真2 ギ酸濃度の違いによるSAC305ぬれ性比較