ブックタイトルメカトロニクス2月号2015年

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概要

メカトロニクス2月号2015年

42 MECHATRONICS 2015.2<写真1>IPCC第3作業部会報告書(気候変動の緩和策)2)日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力気候変動に関する政府間パネル(IPCC)~(3)完成した第5次評価報告書:第3作業部会報告書~【第155回】■ IPCC 第39回総会:第3 作業部会報告書 (気候変動の緩和)の公表 IPCC 第39 回総会が2014 年4 月7日~12日、ドイツ・ベルリンにおいて開催され、会期中に開催された第3作業部会第12回会合において審議されたIPCC第5次評価報告書第3作業部会報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認・公表されるとともに、第3作業部会報告書の本体が受諾された。 本報告書は、2007年の第4次評価報告書以来7年ぶりとなるもので、この間に出された新たな研究成果や政策実行に基づく、地球温暖化に関する最新の知見がとりまとめられている。第3作業部会は特に温室効果ガス排出の抑制・削減(気候変動の緩和)のための政策や施策に関する評価を扱っており、政策評価の基礎となる排出シナリオ分析、経済的評価等の分野横断的事項の検討も同部会で行われた。第3作業部会報告書は、様々な行政レベルや経済セクターが利用できる選択肢を評価し、種々の緩和政策が社会に及ぼす影響を評価するものであるが、特定の選択肢を勧告するものではない。■前回報告書からの主な変化 第4次評価報告書では、温室効果ガスの排出削減について、目標とする濃度別のシナリオ分析の結果を提示し、濃度安定化レベルが低いほど排出量のピークと減少が早く起きる必要があるだろうとの分析結果を提示していた。今回の第5次評価報告書では、第4次評価報告書後の世界排出量の増大により、低い濃度目標レベル(二酸化炭素(CO2)換算注5)で約450ppm)を達成するためには、目標濃度を一時的に超える濃度レベルを経ながら2100年頃に向けて濃度を低減していく必要(オーバーシュートシナリオ注6))のあるシナリオも多くの分析で示されている。オーバーシュートシナリオは、特定の濃度目標を超える可能性を高め、早期の排出削減の重要性や技術開発・導入の重要性をより強調する内容となっている。注5)全ての温室効果ガスやエーロゾルの濃度を、地球温暖化係数(第2 次評価報告書(SAR)の地球温暖化係数(100年値))を用いて二酸化炭素に換算した濃度注6)オーバーシュートシナリオ:安定化目標からの一時的な超過を許容するシナリオ。 また、緩和政策・措置について、第4次評価報告書では、京都議定書体制や炭素税、キャップ・アンド・トレード、再生可能エネルギー、技術開発など、導入間もないものも含む種々の緩和オプションにつき、主に経済学の理論的見地からその効果につき評価していたが、第5次評価報告書では、第4次評価報告書以後のそれらの緩和政策・措置の実行や実証の蓄積を踏まえた検証、評価を行っている。■ IPCC 第39 回総会及び第3 作業部会  第12回会合の概要・開催月日:2014年4月7日(月)~12日(土)・開催場所:エストレル ホテル&コンベンションセンター(ベルリン、ドイツ)・出席者:55ヵ国以上の代表、世界気象機関(WMO)、国連環境計画(UNEP)等の国際機関等から出席。我が国からは、文部科学省、経済産業省、環境省などから計16名が出席。■第3 作業部会報告書の主な結論 以下は、環境省のホームページに紹介された「第5次評価報告書(AR5)気候変動の緩和に関する第3作業部会(WGIII)報告書・政策決定者向け要約(SPM)」のポイント(速報版)である。SPM.1 序論●本報告書は、様々な統治レベルや経済セクターが利用できる緩和選択肢を評価し、種々の緩和政策が社会に及ぼす影響を評価するものであるが、特定の緩和選択肢を推奨するものではない。SPM.2 気候変動の緩和のアプローチ●各主体が各々の関心事を個々に進めていては、効果的な緩和は達成されない。温室効果ガス(GHG)のほとんどは長期にわたって蓄積し、世界的に広がり、またあらゆる主体からの排出が他の主体に影響を及ぼすことから、気候変動は世界的な集団行為問題という性質を有している。このため、GHGの排出を効果的に緩和し、その他の気候変動問題に対処するため、国際協力が必要である。緩和を支援する研究開発は知識の波及効果をもたらす。国際協力は知識と環境に適した技術の発展、普及、移転において建設的な役割を果たしうる。SPM.3 温室効果ガスのストックとフロー及びその排出要因のトレンド●人為起源のGHG排出量は、1970年から2010年の間にかけて増え続け、10年単位でみると最後の10年間(2000~10年)の排出増加量がより大きい。(確信度:高い)。●1970 年から2010 年の期間における全GHG 排出増加の78%は化石燃料燃焼と産業プロセスにおける二酸化炭素(CO2)が占めており、2000年から2010年の期間でもそれらがほぼ同じ割合を占めている(確信度:高い)。●この40年間に排出された人為起源CO2は、1750年から2010年までの累積排出量の約半分を占めている(確信度:高い)。●世界的には、経済成長と人口増加が、化石燃料燃焼によるCO2排出の増加の最も重要な推進力である状態が続いている。2000年から2010年までにおいて、人口増加の寄与度は過去30年と比べほぼ同じである一方、経済成長の寄与度は大きく伸びている。(確信度:高い)● 2000年から2010年までの間、経済成長と人口増加はエネルギー強度の改善による排出削減を凌駕した。他のエネルギー源と比べて石炭の使用量が増加したことにより、世界のエネルギー供給が徐々に低炭素化していく長期にわたる傾向は逆転した。●追加的な緩和策のないベースラインシナリオでは、2100年における世界平均地上気温が、産業革命前の水準と比べ3.7~4.8度(中央値。気候の不確実性を考慮すると2.5~7.8度の幅)上昇する(確信度:高い)。SPM.4 持続可能な開発を背景とした緩和への経路及び緩和策SPM.4.1 長期的な緩和経路●様々な緩和水準に整合する幅広い技術的・行動的選択肢を伴う複数のシナリオがあり、それらのシナリオには様々な特徴と持続可能な開発に与える影響がある。本評価のために、公開された統合モデルに基づき、データベースに約900の緩和シナリオが集められた。その幅は、2100年において、大気中のGHG濃度がCO2 換算で430ppm から720ppmを超えるレベル(RCP2.6~RCP.6.0の間の2100年放射強制力に相当する)に至る。人為起源のGHG排出による気温上昇を産業革命前に比べて2℃未満に抑えられる可能性が高い(66%以上の確率)緩和シナリオは、2100年に大気中のCO2換算濃度が約450ppmとなるものである(確信度:高い)。2100 年にCO2換算で500ppm程度の濃度に達する緩和シナリオでは、2100 年までに一時的にCO2換算でおよそ530ppmの濃度に「オーバーシュート」しない(期間中、一時的に濃度がおよそ530ppmを超えない)場合は、どちらかといえば(可能性が高い)(50~100%の確率)産業革命前からの温度上昇を2℃未満に抑えることができる。なお、「オーバーシュート」する(期間中に濃度がおよそ530ppmを超える)場合は産業革命前からの温度上昇を2℃未満に抑えられるかどうかはどちらも同程度(33~66%の確率)である。● 2100年まで大気中のGHG濃度をCO2換算で約450ppmに達するシナリオ(産業革命前に比べて2℃未満に抑えられる可能性が高い(66%以上の確率)) 本シリーズの第141回および第154回の継続として、今回は第3作業部会報告書(気候変動の緩和策)を紹介する(写真1)。紙面の都合で図表を割愛せざるを得ず、是非参考資料を参照されたい1、2)。また、前号までの目次の概略は表1に示す。<表1>前回の目次1)<第141回>(1)IPCCとその第5次評価報告書■設立の目的と組織■第5次評価報告書の作成予定■IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書 (自然科学的根拠)の概要<第154回>(2)完成した第5次評価報告書:第2作業部会報告書■IPCC第5次評価報告書の発表に至る経緯■第5次評価報告書における可能性と確信度の 表現について■IPCCメンバーによるシンポジウム■IPCC第36回総会:第1作業部会報告書 (自然科学的根拠)の公表■IPCC第38回総会:第2作業部会報告書 (影響・適応・脆弱性)の公表