ブックタイトルメカトロニクス1月号2015年
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メカトロニクス1月号2015年
MECHATRONICS 2015.1 43や疾病のリスク[懸念の理由2、3] 極端に暑い期間においては、特に脆弱な都市住民や屋外労働者に対する、死亡や健康障害のリスクがある。v)気温上昇、干ばつ等による食料安全保障が脅かされるリスク[懸念の理由2~4] 気温上昇、干ばつ、洪水、降水量の変動や極端な降水により、特に貧しい人々の食料安全保障が脅かされるとともに、食料システムが崩壊するリスクがある。vi)水資源不足と農業生産減少による農村部の生計及び所得損失のリスク[懸念の理由2、3] 飲料水や灌漑用水への不十分なアクセスと農業の生産性の低下により、半乾燥地域において、特に最小限の資本しか持たない農民や牧畜民の生計や収入が失われる可能性がある。vii)沿岸海域における生計に重要な海洋生態系の損失リスク[懸念の理由1、2、4] 特に熱帯と北極圏の漁業コミュニティにおいて、沿岸部の人々の生計を支える海洋・沿岸の生態系と生物多様性、生態系便益・機能・サービスが失われる可能性がある。viii)陸域及び内水生態系がもたらすサービスの損失リスク[懸念の理由 1、3、4] 人々の生計を支える陸域及び内水の生態系と生物多様性、生態系便益・機能・サービスが失われる可能性がある。●気候変動の速さと大きさを制限することにより、その影響による全般的なリスクを低減できる。一方、温暖化が大規模になれば、深刻かつ広範で、不可逆的な影響が起る可能性が高まる。C. 将来のリスクの管理とレジリエンスの構築C-1.効果的な適応のための原則●適応は、地域や背景が特有であるため、すべての状況にわたって適切なリスク低減のアプローチは存在しない。●限られた証拠によると、世界全体の適応ニーズと適応のための資金には隔たりがある。世界全体の適応に要する費用を算定する研究には、データや手法、適用範囲が不十分という特徴があり、更なる研究の向上が必要である。●重要なコベネフィット、相乗効果、トレードオフは緩和と適応の間や異なる適応の反応の中に存在する。相互作用は地域内及び地域をまたいで起こる(確信度は非常に高い)。C-2.気候に対してレジリエントな経路と変革●経済的、社会的、技術的、政治的決定や行動の変革が、気候に対してレジリエント(強靭)な経路を可能とする。(3)我が国の貢献 同報告書の取りまとめにあたっては、関係省庁が連携しIPCC 国内連絡会を組織するとともに、活動の支援を行ってきた。我が国の研究成果論文が数多く同報告書に引用されたほか、多くの研究者が執筆者として同報告書の執筆活動に参加した。また同報告書の最終取りまとめにおいて積極的な貢献を行っている。(2014.11.26記)<参考資料>1)小田切力:「ものづくりと地球環境(第141回)IPCC~(1)IPCCとその第5次評価報告書~」メカトロニクス、Vol.38, No,12、p50-51(2013)2)IPCCのホームページ http://www.ipcc.ch/3)環境省:「(報道発表資料)IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書の公表について」(2013年9月27日)4)環境省:「(報道発表資料)IPCC第5次評価報告書第2作業部会報告書の公表について」(2013年3月31日)5)環境省:「(報道発表資料)IPCC第5次評価報告書統合報告書の公表について」(2014年11月4日)6)環境省:「(報道発表資料)IPCCシンポジウム「気候変動の科学とわたしたちの未来」の開催について」(2014年11月18日)(2)第1作業部会報告書の概要(省略、本シリーズ第141回1)を参照下さい。)■ IPCC 第38 回総会:第2 作業部会報告書 (影響・適応・脆弱性)の公表 IPCC の第38回総会が2014 年3 月25日~29日、神奈川県横浜市において開催され、同期間に開催された第2作業部会第10回会合において審議されたIPCC第5次評価報告書第2作業部会報告書(影響・適応・脆弱性)の政策決定者向け要約(SPM)が承認・公表されるとともに、第2作業部会報告書の本体が受諾された4)。IPCC総会が日本において開催されたのは今回が初めてである。 第2作業部会は、気候変動がもたらす悪影響と好影響、気候変動への適応のオプション、並びに気候変動に対する社会経済及び自然システムの脆弱性等についての評価を扱っている。2007年にとりまとめられた第4次評価報告書では、観測された影響と将来の影響及び脆弱性について地域・分野別に評価し、影響の軽減のために適応が重要であることが示された。 今回取りまとめられた第5次評価報告書では、新たな知見をもとに、観測された影響と将来の影響及び、脆弱性について地域・分野別に、より具体的に評価するとともに、適応策についても実際の適用を念頭に整理された。また、世界全体の気候変動による主要リスクの抽出とその評価が行われた。加えて、地域別の主要リスクとそれに対応した適応の有無によるリスクの変化について評価された。 現在すでに温暖化の影響が広範囲に観測されていることが示されるとともに、気候の変動性に対する生態系や人間システムの著しい脆弱性や曝露を明らかにしている。 将来に関しては、温暖化の進行がより早く、大きくなると、適応の限界を超える可能性があるが、政治的、社会的、経済的、技術的システムの変革により、効果的な適応策を講じ、緩和策をあわせて促進することにより、レジリエント(強靱)な社会の実現と持続可能な開発が促進されるとしている。(1)IPCC第38回総会及び第2作業部会 第10回会合の概要・ 開催月日:2014年3月25日(火)~29日(土)・ 開催場所:パシフィコ横浜(横浜市)・ 出席者:約110ヵ国の代表、世界気象機関(WMO)、国連環境計画(UNEP)等の国際機関等から計約400名が出席。・開会式に石原環境大臣が出席し、開会の挨拶を行ったほか、我が国からは、第38回総会及び第2作業部会第10回会合に文部科学省、経済産業省、気象庁、環境省などから計約50名が出席した。(2)第2作業部会報告書SPMの概要 同報告書SPMの主な結論は以下の通りである。(今回承認された第2作業部会報告書のSPM全文の日本語訳(暫定訳)は、環境省ホームページに公開されている4)。)A.複雑かつ変化しつつある世界において観測されている影響、脆弱性、適応A-1.観測されている影響●ここ数十年、気候変動の影響が全大陸と海洋において、自然生態系及び人間社会に以下のような影響を与えている。気候変動の影響の証拠は、自然生態系に最も強くかつ包括的に現れている。i)水文システムの変化による、水量や水質の観点からの水資源への影響ii)陸域、淡水、海洋生物の生息域の変化等iii)農作物への負の影響が正の影響よりもより一般的●熱波や干ばつ、洪水、台風、山火事等、近年の気象と気候の極端現象による影響は、現在の気候の変動性に対するいくつかの生態系や多くの人間システムの著しい脆弱性や曝露を明らかにしている。A-2. 適応経験●適応は一部の計画に組み込まれつつあり、限定的であるが実施されている適応策がある。例として、アジアにおいては、一部の地域で、適応が、早期警戒システムや統合的水資源管理、アグロフォレストリー、マングローブの植林を通じて促進されている。●気候変動に関連したリスクへの対応は、気候変動の影響の深刻さや起こる時期の不確かさ、また適応の有効性の制限という不確実性がある中で、変わりつつある世界において意思を決定していくということを含意している。B. 将来のリスクと適応の機会B-1.複数の分野地域に及ぶ主要リスク●主要なリスクは国連気候変動枠組条約第2条に記載されるような、「気候システムに対する危険な人為的干渉」による深刻な影響の可能性である。確信度の高い複数の分野や地域に及ぶ主要なリスクとして、以下の8つがあげられている。それぞれが1つあるいはそれ以上の「懸念の理由」に寄与している。なお、該当する「懸念の理由」の番号は、本文末尾のボックスの記載に対応している。i)海面上昇、沿岸での高潮被害などによるリスク[懸念の理由1~5] 高潮、沿岸洪水、海面上昇により、沿岸の低地や小島嶼国において死亡、負傷、健康被害、または生計崩壊が起きるリスクがある。ii)大都市部への洪水による被害のリスク[懸念の理由2、3] いくつかの地域において、洪水によって、大都市部の人々が深刻な健康被害や生計崩壊にあうリスクがある。iii)極端な気象現象によるインフラ等の機能停止のリスク[懸念の理由2~4] 極端な気象現象が、電気、水供給、医療・緊急サービスなどの、インフラネットワークと重要なサービスの機能停止をもたらすといった、社会システム全体に影響を及ぼすリスクがある。iv)熱波による、特に都市部の脆弱な層における死亡<表2>第5次評価報告書における可能性と確信度の表現について3)