ブックタイトルメカトロニクス1月号2015年

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概要

メカトロニクス1月号2015年

10 MECHATRONICS 2015.1 御社の概要と設立した経緯について お聞かせ下さい馬場:当社は、1988 年8月に設立し、CAD / CAMソフトウエアの開発を主体とした事業展開を行っており、今年で27 期を迎えています。私は以前、プリント基板関連の会社に勤務しており、当時はCADというものがなかったためアートワークでプリント基板の回路図を作成し、実際のパターンを実装するような状況で、その会社ではプリント基板の回路作成するための材料などを製造/販売していました。当時私は、その材料販売を行う営業を担当しており、高度成長期ということもあって飛ぶように売れていました。しかし、このままアートワークを使うことが主流のような状況が続くとは考えていませんでした。 その後、アメリカでプリント基板用のCADが開発され、徐々に日本にも浸透してきましたが、最初は日本の文化や環境に合わない状況でした。また、価格的にも高価なものだったので国内の大手メーカーは、アメリカ製のCADを参考に日本の文化や環境に合うようなツールの開発を社内で行い始めました。ただ、その社内で開発したツールは、他社に販売するとノウハウが流失してしまう恐れがあったため、あくまで社内ツールとして使われるケースがほとんどでした。しかし、国内の経済状況が悪化してくると、その社内ツールに携わっていたエンジニアが主力の事業や新規の事業に回されてしまい、社内ツールに変わって外販のCADを導入するようになっていきました。そのため、今まで使用していたフォーマットなどが使用できなくなり、社内ツール 設立以来、CAD/CAMソフトウエアの開発に力を入れ、常に新市場の創出に目を向けてきた株式会社ファースト。「1種類の製品に集中したい」という思いから、主力製品となるプリント基板設計用CADシステム『START』を開発した同社の概要と製品の特徴などについて、代表取締役 馬場 一春 氏、営業部カスタマーサポート課 セールスエンジニア チーフ 斉藤 和之 氏にお話を伺った。株式会社 ファースト代表取締役馬場 一春 氏営業部カスタマーサポート課セールスエンジニア チーフ斉藤 和之 氏設計から製造まで高効率を実現するワンパッケージデザインツール~CAD/CAM融合で統合設計環境を構築~で作成したプリント基板や部品のデータが継承できない状況になってしまい、改めてつくり直すような事態になっていました。 そこで私は、高価なCADがこんなにも融通が利かないのなら、このような問題を解消できるCADをつくりたいと考えました。ただ、アートワークの材料を販売していた会社にいましたので、まだ材料が売れているのにCADを取り扱うとアートワークの市場を侵食してしまうことになるため、会社の社長やオーナーから猛反対を受けていました。しかし、材料の販売もあと4、5年経つと減少していくと予想していたので、今のうちから次の主力製品を考えていかないと間に合わなくなると思い、私は営業でしたが個人的にプリント基板設計用CADシステムの開発を始めました。もちろん、営業として課せられたノルマは達成していたので、会社としても目をつむる形にはなっていましたが、協力などは仰げなかったので、外部の知人などに協力して頂きました。 そして、開発を進めながら営業先のクライアントなどに興味を示してもらえるか製品のリサーチを行いました。そうした所、完成したら購入したいといったお話も頂き、最終的には主力のクライアントから会社のオーナーにその製品の話が届き、会社の事業として開発を進められるようになりました。ただ、実際に興味を示して頂いたクライアントはほんの一部で、まったく新しい製品を世に普及させるのは非常に難しいことを痛感させられました。それでも、試行錯誤しながら新しいプリント基板設計用CADシステムを開発し、高価なものではありましたが順調に売り上げを伸ばしていくことができました。 その後も改良などを行い、次のプリント基板設計用CADシステムを開発しましたが、その時期に会社を独立したいと考え始めるようになりました。それは私自身、好奇心が強く、独創的になにかをやってみたいと思ったからです。会社からは引き留めて頂きましたが、すでに意志は固まっていたので新会社の登記を済ませてしまい、それで納得して頂くような形になりました。それが、当社を設立した経緯になっています。 そして、以前の会社にいた時から温めていたプリント基板設計用CADシステムの開発を進めたのですが、そう簡単には製品化できるものではなく、それに掛かる開発費や開発期間に掛かる会社の資金なども必要になるため、すぐにでも売り上げの見込めることをやらなくてはなりませんでした。それには、以前CADシステムを開発した時に協力して頂いた方々が心配して駆けつけて下さり、また色々と協力して下さいました。そこで開発したのが、プリント基板用のトータルツール『道具箱』です。この製品は、会社を立ち上げてCADの開発以外でやりたいと思っていた、プリント基板に関するMTデータを読み書きがしたい/紙テープを読み書きがしたい/ガーバデータをすぐみたい/ドリルデータをプロットしたいといったことが盛り込まれています。この製品の販売や私が今まで培ったノウハウなどを提供することで、家族2 人でスタートした会社でしたが、優秀なエンジニアも入社して徐々に成長していきました。 そして1991 年に、プリント基板設計用CADシステム『START』をリリースしました。この製品名は、“ 初心忘るべからず”ということわざから「常に初心に返ってスタートする」という気持ちと、「ART(アート)」という言葉を入れたかったことから付けました。また、開発期間も以前の会社で開発した製品よりも大幅に掛かり、約3 年の期間を費やしています。私は会社を立ち上げた時に、「1 種類の製品に集中したい」ということを決めていたので、道具箱の販売などは協力会社に譲渡し、現在はSTARTを主軸に事業展開を行っています。写真1 STARTの概要写真2 デバイス設計の一例