ブックタイトルメカトロニクス9月号2014年
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メカトロニクス9月号2014年
44 MECHATRONICS 2014.9図2-224 直射型レンズを用いた直下照明方式 2-138)《第65回》2 設計から始めよう(その63)6.直下型 ( ダイレクト) 照明装置(3)直射レンズによる直下型照明方式(つづき) 直射レンズを用いて液晶板の直下から照明する方式を特許文献に基づいて紹介する。今回は最新の技術出願に係わり、これらの事件には未だ査定が下りていない(図2-224)。 このうち特許事件?と?とを注目してみた。まず、特許事件?は、筒状の照射面を内側から照明する装置に関する技術で、あたかも和風行燈(あんどん)に似ている。行燈では点火された蝋燭(ろうそく)を下方に配置しているが、この発光装置では内側上部に発光素子を設置し、フレネルレンズを被覆して光線束を放散させながら、光軸と直交する方向を照明しているのが特徴である。散水ホースの先端にシャワーノズルを接続した状態とも表現できる(図2-225)。 こうしたフレネルレンズ構造ではなく、この側方照明方式にも直射レンズ形式を適用することはできないものであろうか。とはいえ、従来の特許文献を見る限りでは、レンズ設計手法が完成しているとは感じられない。ソフトウエアを利用するには、光学原理の予備知識が必要だ。ソフトウエアは自動設計してくれて最適化された回答を示してくれると期待してはいけない。教訓として、著名な企業でさえ高価なソフトウエアを用いながら導光板の開発ができなかった事実がある。さらに留意すべきは、照明光学系は結像光学系とは異なる原理から成立していることだ。結像光学系は光線束を媒体として物点を像点に転写する技術である。照明光学系は光線束を媒介として光源の光束を照射面へ伝達する技術である。 事件?の構造に適応する照明するレンズを設計してみよう(図2-226)。まず、発光素子O の光軸L に対して照射面の位置H を設定する。光軸方向に光線束を照射する場合(既出図2-220)と同様に座標を決めてゆくのであるが、光源から光軸に真直ぐな方向への照射は必要がなく、レンズ放出光線束は或る値の傾角Θから始まる。この照射面に均等な照度分布E(Θ)を仮定し、レンズの放出光線束の光度I(Θ)へと逆算してゆく。光源の光束φとレンズ放出光の光束Φとを媒介因子として、光源の射出光度I(θ)とレンズ放出光度I(Θ)とを対応させると、光源光線の傾角θとレンズ放出光線の傾角Θとの関係が求められる。境界面で屈折したとき偏角δ=α-βであるから、レンズの内面と外面との2 回の偏角が δ 1 +δ2≡Θ-θ と置く。光線照射角αおよびβにより光線追跡してレンズ面の形状曲線が描出できる。 設計したレンズ内面の形状は先端尖りの形状になり、外面では中央部で光線束が通過しない不要な領域になった。光線束を全反射させるように、中央部を円錐状凹面に形成しても好い。またレンズ外側境界面で発生しがちな全反射現象を回避するために、光線束の偏角を小さくするとよい。 直射レンズは外径15mm 以下の小型で、樹脂成形は精密な金型による生産になる。レンズ外面が接触する雌型の金型は、寸法精度が出し難い穴加工になるので、単純な形状にする。レンズ内面は精密加工が可能な雄型の金型に接触するので、自由曲面に形成できる。 特許事件?は、特許明細書の要約項の選択図のみでは内容が理解できないので、特許明細書に記載されているすべての図面を整理整頓してみた(図2-227)。発光素子に配置すべきレンズの形状に呼応して、照明効果がそれぞれ相違している特徴が理解できる。こうした先人が多くの費用と時間、労力を傾倒した賜物を後続の私達が比較的容易に入手できて精読できるとは、なんと有難いことか。【参考文献】2-138)特許電子図書館(IPDL)2 設計からはじめよう(その64)