ブックタイトルメカトロニクス1月号2014年
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メカトロニクス1月号2014年
MECHATRONICS 2014.1 456.不思議遊星歯車減速機(つづき)6. 3 速比 ピニオンz1を入力、内歯歯車z3を固定し、内歯歯車 z4を出力とする場合の減速比を求める。この場合キャリア軸は必ずしも必要でなく、3個の遊星歯車は全体を精度良く作れば干渉しないようにできる。図6.2に噛合い状態と速比の図を示す。 図6.2において、図が煩雑になることを避けるため、歯形は示していない。それぞれの歯車は基礎円で代表させて示す。二つの内歯歯車のうち、rb3の方を固定し、rb4の方を回転させることにする。今の場合、z3=39, z4=36なので、歯数の多い方を固定し、歯数の少ない方を出力に取っていることになる。しかし、逆に取る場合もある。歯数の少ない方を固定し、歯数の多い方を出力軸に取った方が速比uの絶対値を僅かながら大きくできるので、この方が好まれるかもしれない。以下の式では、歯数の大小に関係なく、固定する方をz3としている。 歯数の大きい方が基礎円半径は大きくなるが、噛合いピッチ円半径の関係は逆転する。噛合う歯車の双方の基礎円に接するように作用線を引くと、その作用線が中心線を切る点が噛合いピッチ点となるが、図に示したようにrp24の方がrp23よりも大きくなる。すなわち、歯数の小さい方が噛合いピッチ円半径は大きい。この関係さえ間違わなければ速比の計算は図(b)の速度ベクトル図を用いて行なうことができる。以下に式を示す。 (6.3) 今の場合、固定内歯歯車z3=39、出力内歯歯車z4=36なので、上式による1/u の符号はマイナスになる。このことは出力軸の回転方向が入力軸と逆になることを示している。2枚の内歯歯車のうち、36枚の方を固定し、39 枚の方を出力とする場合にはz3=36, z4=39となるので、1/uはプラスとなり、回転方向は入力軸と同じである。減速比は少し変わる。 不思議遊星歯車減速機は、比較的簡単な構造でありながら、高い減速比が得られるので、近年多用されるようになってきた。宇宙用のロボットアームなどにも用いられている。それぞれの歯車の転位係数を上手に選ぶことによって安定した性能を得ることができる。6. 4 心間距離 不思議遊星歯車減速機は多くの歯車の組み合わせでありながら、心間距離と言える寸法のものは一つしかない。この一つの心間距離aから3対の歯車の転位係数を妥当な値に設定しなければならない。その手順を一例として下記に示す。 ①減速比を仮定し、これからz1, z2, z3, z4 の歯数を決 める。 ② z1からx1を、z2からx2を決め、これにより、心間距 離aを決める。 ③ aにもとづいてx3, x4の値を決める。歯数差が3 もあるので、x3とx4には大きな値の差(約1.5)が 必要であり、この両者を許容範囲に収めるのはや や難しい。 ④妥当な値が得られなければ、z2, x1, x2 の値を変更 して再度試みる。 ⑤最終的には、シミュレーションによって、歯形および その噛合いの状況を確認しながら判断するのがよ いであろう。 図6.1および図6.2に示した減速機の計算結果は以下の通りである。 (6.4) この例では、x4 の値が大きいのが気になる。図2.6を参照すれば、この値は尖り限界を超えている。尖り限界を超えないようにしたい。 上記手順③において、aからx3, x4を求めるには、式(4.1)を変形して、下式によって求めることができる。この式にはinv関数の逆解は含んでいない。 (6.5) (完)インボリュート歯車の設計牧野オートメーション研究所長 山梨大学名誉教授 牧野 洋第9回(最終回)以上でこの連載を終了します。この連載についてのご質問、ご意見、ご感想のある方は、下記にEメールをお寄せください。makino@comet.ocn.ne.jp図6. 2 不思議遊星歯車減速機における噛合い(a)噛合い状態(b)速比