ブックタイトルメカトロニクス11月号2013年
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メカトロニクス11月号2013年
8 MECHATRONICS 2013.11 御社の概要についてお聞かせ下さい一井:当社は、1963 年6 月に北川ゴム工業株式会社という商号で名古屋市において設立し、主に工業用ゴム/ビニール製品の製造、販売を行っていました。そして、1971 年3月に現在の社名である北川工業株式会社に商号を変更しています。 1984 年6月には、いち早く電磁波問題に対応するため、電磁波環境コンポーネントの販売を開始しました。開始当初は、商社的な立場で海外から製品を輸入していましたが、その後、自社のコア技術を活かすとともに、国内や中国に工場を新設して自社で開発するようになり、オリジナル製品として事業展開を行うようになっていきました。また、基板を留めるスペーサや配線を束ねるバンドなどのナイロン成形品の販売も行うようになり、電磁波環境コンポーネントと同様に始めは海外から輸入して、最終的には自社で開発を進めていくような流れで、事業の拡大を図っていきました。このように当社は、商社的な立場からメーカーへと変貌を遂げていきました。 現在では、電磁波対策に有効な電磁環境適合性をもたらす製品とソリューションを提案する「EMC 設計」、強度や耐熱性など必要に応じた機能を備え、パーツを留める/ケーブルを結束する/金属のエッジから保護するなど様々な用途に適した各種製品を用意する「ファスニング」、各種材料にスパッタリング加工で成膜する「機能性薄膜製品」、高減衰特性のロストマーなどの機能性素材と計算された形状で振動伝達を減衰することにより共振を防止し静音性を高める「振動/衝撃製品」、電子機器の小型/高速化によってクローズアップされている“ 熱”に対応する「熱製品」、1 個からの小ロットに対応し、金型を必要としないため短納期・低コストでデザイン/機能性に優れた樹脂製筐体を製作できる「MEFS(メフズ):Moldless EnclosureFabrication System」(以下、MEFS)、粘着力と振動吸収性に優れたスチレン系ポリマー素材の「地震対策製品」、といった7 つの製品群で事業展開を行っています。 その中で、私が担当しているMEFSは、筐体をつくる際に必要とされる金型を使わずに樹脂製の筐体をつくる新たな樹脂筐体生産システムで、多彩な加工プロセスと複合技術により、様々なニーズに対応することができます。当社の中でも、特に力を入れている事業の一つになっています。 電磁波環境コンポーネントなどを中心に産業分野の幅広い業界に事業展開する北川工業株式会社。その中でも、金型を使わずに樹脂製筐体を製作する樹脂筐体生産システム「MEFS 『メフズ』」事業に力を入れる同社の概要と同事業の特徴や導入事例などについて、営業本部 MEFS担当マネージャー 一井 孝久 氏にお話を伺った。北川工業株式会社営業本部 MEFS 担当マネージャー一井 孝久 氏金型を使用しない多品種小ロット生産に最適な樹脂筐体生産システム『MEFS』~多彩な加工プロセスと複合技術でユーザーニーズに対応~ MEFS事業を立ち上げた経緯と 特徴/製造プロセスなどについて お聞かせ下さい一井:MEFSは、今から15年程前に、金型を使わずに樹脂製筐体をつくる海外の樹脂筐体メーカーと独占でライセンス契約を結んだことにより開始した事業です。元々は、海外で開催された産業関連の展示会を視察した時に、その樹脂筐体メーカーのブースに目が留ったことがきっかけになります。金型を使わない樹脂成形の手法は、私の知るかぎり日本にはなく、そういった技術などから需要が見込めるのではと考えました。その後、そのメーカーから設計システムや加工機などを、愛知県にある当社の春日井工場に導入して事業を展開しています。 MEFS の主な特徴としては、金型がいらないということで、「金型/治具/工具への投資が不要」「金型/治具/工具の維持/管理費が不要」「設計変更/モデルチェンジが容易」ということと、「一個から少ロットの量産に最適」ということが挙げられます。例えば、通常試作をつくるとその1 個で終わりになりますが、試作でも量産したいというニーズは樹脂製筐体を使用する業界でも増えています。また金型を使用した量産は、中国など海外に生産拠点が移っているため、国内には少量多品種の製品しか残っていないという現状もあります。さらに最近では、3Dプリンタが注目されていますが、3Dプリンタは試作品がすぐにつくれるというところまでで、量産はやはり金型を使用している状況です。3Dプリンタの需要はかなり伸びていると思いますが、その中には試作だけでなく小ロットの量産を希望されるユーザーもいると予想されるので、その場合にはMEFSをお勧めするように3Dプリンタとの差別化も図れています。このようなことからも、十分需要が見込めて市場にマッチした樹脂筐体生産システムだと考えています。 MEFS の製造プロセスについては、このシステムをお勧めすることが適切なのかどうかの審査を最初に行います。MEFSをお勧めする目安としては、量産する製品が1,000 個以上つくるかつくらないかで判断を行っています。1,000個以下の場合は、MEFSをお勧めした方がコスト的にもメリットを出しやすいですが、1,000 個以上の場合は金型を使用する方をお勧めしています。 そして採用が決まったら、まずは設計から始まります。設計は、データ作成からすべて当社の方で行っており、ユーザーとの打ち合わせの段階で製品のイメージや案、または筐体に入れる現物などを送って頂いて、組み立てや設置までの流れを提案するとともに図面を起こしていきます。基本的には、メールなどのやり取りで打ち合わせを行いますが、最終的にはユーザーの所にお伺いしてフェイスtoフェイスでお話しさせて頂きます。設計が終わったら、次は加工データを作成します。筐体自体はプラスチックの板材から製作していきますので、NCの加工データを作成して加工を行います。加工後は、溶着/接着と塗装/印刷などを行い、組み立てをして完成といった流れになっています。 現在では、1,500 社を超える採用実積があり、そのうち約7 割はリピートのユーザーになっています。また、樹脂の板を折り曲げたりするので、イメージ的には板金と同じような感じになり、今までは金型を使用しない少ロットに対応するには、ほとんど板金が使われていました。そのようなことで、現在採用頂いている1,500 社のほとんどが板金で対応されていたユーザーになります。板金では、錆びやデザイン性の問題などがありますが、樹脂化することによりこの問題を解消することができるため採用されていきました。 MEFSの導入事例を いくつかご紹介下さい一井:それでは、代表的な製品をいくつか紹介します。当初、拡張ボードのみを販売していたユーザーから、自社ブランド製品として差別化して販売するために筐体が必要ということで、小ロット対応が可能なMEFSを選択して頂き、小型ボードコンピュータの筐体を製作しました(写真1)。この製品は、「構造がシンプルで基板に写真1 小型ボードコンピュータへの導入事例