ブックタイトルメカトロニクス11月号2013年

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メカトロニクス11月号2013年

60 MECHATRONICS 2013.11日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力「2013年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」~(その3)“グリーン経済”に関する話題(2)~【第140回】■“グリーン経済”に関する問題提起と 分析の経緯(続)(11)地球規模の天然資源消費 人口の増加と経済の拡大に伴い、地球規模の資源消費が今後も増え続けると予測されている。国別では、経済発展のレベルや天然資源の埋蔵量等によって違いがあるが、BRICS 諸国注11)を中心に消費が増えていく見込みである。注11)BRICS(ブリックス):2001 年に当時の新興国であったブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)を新興四大国として総称して使われ始め「BRICs」と記された。2011 年には南アフリカ(South Africa)が加えられ「BRICS」となった。 IEA注12)によれば、2035 年の化石燃料の需要は、各国が現在の政策をそのまま続けた場合2010 年比で、石炭が59 %、石油が23 %、天然ガスが60 %増加すると予測されている。注12)IEA(国際エネルギー機関、International EnergyAgency):第1次石油危機後の1974 年に、キッシンジャー米国務長官(当時)の提唱を受けて設立された。経済協力開発機構(OECD)の下部機関。(12)都市化に伴う環境負荷の増大 国連によれば、経済成長と社会の発展は都市化を引き起こし、2050 年には、世界人口の約70 %が都市部に居住すると予測されている。特に、上下水道や廃棄物処理施設など人間の健康や環境を支えるための基盤が整備されていない発展途上国で都市化が拡大すると見込まれている。都市化の結果、大気汚染、交通渋滞、廃棄物管理などの都市部が抱える課題がさらに深刻になると考えられる。 大気汚染は、急速な都市化や自動車の普及に伴って拡大し、住民の重大な健康被害や生活環境の悪化の原因となることがある。 大気汚染物質の1つである微小粒子状物質(PM2.5)注13)は、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器系への影響に加え、循環器系への影響も懸念されている。このため、環境省では、2009 年9月に環境基準を設定した。その後、2010 年3月には常時監視の実施方法等を示す事務処理基準などを改正し、2011 年7 月にはPM2.5の成分分析のガイドラインを示すとともに、常時監視体制の整備を図ってきた。その結果、2013 年3 月末現在で、全国600 個所以上においてPM2.5のモニタリングが実施されており、環境省では常時監視体制のさらなる整備を地方公共団体に要請している。注13)微小粒子状物質(Particulate Matter、PM):大気中に漂う粒径10 μ m(1 μ m=0.001mm)以下の粒子を浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter)と呼ぶが、そのなかで粒径2.5μ m 以下の小さなものを微小粒子状物質と呼んでPM2.5 あるいはPM2.5と表示する。 2013 年1 月には、中国の北京市を中心にPM2.5等による大規模な大気汚染が断続的に発生し、我が国においても、西日本で広域的に環境基準を超えるPM2.5濃度が一時的に観測された。粒子状物質の濃度上昇が離島でも確認されたことやシミュレーションの結果から、大陸からの越境汚染の影響があったものと考えられた。このため、環境省では、2013 年2月に当面の対応を取りまとめるとともに、注意喚起のための暫定的な指針を示し、また、PM2.5に関する情報サイトを環境省ホームページに開設するなど、情報提供に努めている。今後、PM2.5の常時監視体制を強化するとともに、成分分析による発生源寄与割合の把握や科学的知見の集積、排出削減等、国内対策の一層の推進を図っていく。 また、中国等と連携した取組を通じ、東アジア地域における大気汚染防止対策を積極的に推進していくこととしている。2013 年5 月に開催された日中韓3 ヵ国環境大臣会合でも、新たに3 ヵ国による政策対話を設置することに合意した。”(p37)■“グリーン経済”の拡大に向けて 1987年に提唱された「持続可能な開発」は、「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」を意味している。こうした持続可能性を実現するための新たな経済のあり方として、“グリーン経済”という概念が登場した。2012年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議(リオ+ 20)」では、「持続可能な発展及び貧困根絶の文脈におけるグリーン経済」が主要議題の1 つとなった。 同白書ではその間の経緯を、「グリーン経済の拡大に向けて」と題して以下のような解説を行っている。(1)UNEPの「グリーン経済報告書」 2011年に発表された国連環境計画(UNEP)の「グリーン経済報告書」注14)では、グリーン経済を「環境問題に伴うリスクと生態系の損失を軽減しながら人間の生活の質を改善し社会の不平等を解消するための経済のあり方」であると定義している(写真5)。注14)UNEP:「Green Economy Report = Towards a GreenEconomy : Pathway to Sustainable Development andPoverty Eradication」(2011)(国連環境計画:「グリーン経済報告書 = グリーン経済をめざして:持続可能な開発と貧困根絶への道筋」)1) グリーン経済は、環境の質を向上して人々が健康で文化的な生活を送れるようにするとともに、経済成長を達成し、環境や社会問題に対処するための投資を促進することを目指している。また、気候変動、資源の枯渇、生物多様性の損失等の問題に直面している世界情勢の中で、国家間・世代間での貧富の格差をも是正し、持続可能な開発を実現することにも焦点が当てられている。 グリーン経済では、社会全体の富を考える際に、物質的な富と人的資本に加えて、生態系などの自然資本が考慮される。また、グリーン経済を実現するには、環境分野への投資促進や、自然資本の評価、消費今回は、前回に引き続いてグリーン経済に関する話題について、「平成25年(2013年)版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」で紹介されているトピックスを紹介する注10)。<図1>環境対策に年GDPの2%を投資した場合の世界全体のGDP成長率の予測2)第138回「2013年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」真に豊かな社会を子供達へ~震災復興の中でともに考える持続可能な未来~■白書の全体構成■子供達に残す遺産(第1 部の“はじめに”) ①日本特有の自然観 ②近代化・経済成長への反省 ③東日本大震災による価値観の見直し ④子供達への遺産 ⑤東日本大震災からの復旧 ⑥子供達を育てる環境教育 ■第1 章の構成■未来を担う子供達を育てる環境教育の取組 (第2章第7節)■真に豊かな社会を子供達へ(第1 部のむすび)第138回「2013年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」~(その2)“グリーン経済”に関する話題(1)~■子供達に残す遺産(第1 部の“はじめに”) (1)語句の説明 (2)経済社会の変革への動き■“グリーン経済”に関する問題提起と分析の経緯 (1)ローマクラブの「成長の限界」による問題提起 (2)ブルントラント委員会の報告書   「 我ら共有の未来」(Our Common Future) (3)“持続可能な開発” (4)ハーマン・デイリーの3 原則 (5)「成長の限界」の30 年後の問題提起 (6)OECD による未来予測 (7)IPCC による地球温暖化の予測 (8)国連難民高等弁務官事務所による   環境難民の予測 (9)地球温暖化に関する経済学的な分析 (10)森林の減少と生物多様性の損失注10)本テーマの連載の第1 回と第2 回の目次は以下の通り。