ブックタイトルメカトロニクス10月号2013年

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メカトロニクス10月号2013年

50 MECHATRONICS 2013.10日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力「2013年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」~(その2)“グリーン経済”に関する話題(1)~【第139回】■“グリーン経済”について(1)語句の説明 “グリーン経済(Green Economy)”という言葉について、同書巻末の「語句説明」の欄では、“環境問題に伴うリスクと生態系の損失を軽減しながら、人間の生活の質を改善し社会の不平等を解消するための経済のあり方”(p389)と説明されている。 また、“経済のグリーン化”については「語句説明」の欄で、“経済活動により自然資源や生態系などの地球環境が回復不能なほど損なわれることがないような経済システムへといこうしていくこと”(p390)と説明されている。(2)経済社会の変革への動き “産業革命以降の資本主義経済の発展の中で、多くの国は経済成長を目標に掲げ、金銭的・物質的な「豊かさ」を求めてきた。その陰で、環境問題等をはじめとした人々の生活を脅かすさまざまな問題が起きてきた。そのような状況を受けて、40年ほど前からそれまでの経済社会のあり方に警鐘を鳴らす動きが見られるようになった。 近年、国際社会でも持続可能な社会の実現に取り組む「グリーン経済」を築こうとする動きが始まっている。また、自然環境や生活環境の状態を示す指標を検討する動きも広がっている。こうした潮流の根幹には、前節で概観したように経済的な豊かさの追求から、良好な環境や幸福感などを含むより広い意味での豊かさを求める意識の変化があると考えられる(p33)。”■“グリーン経済”に関する問題提起と 分析の経緯 同白書では、“グリーン経済”という考え方の萌芽となった研究報告書をまず紹介することから始まり、以後その思想の体系化される過程を、考え方に影響を与えた刊行物と活動を年代を追って紹介している。(1)ローマクラブの「成長の限界」による問題提起 1970年に世界中の有識者が集まって設立されたローマクラブは、1972年に「成長の限界」と題した研究報告書を発表し、人類の未来について、「このまま人口増加や環境汚染などの傾向が続けば、資源の枯渇や環境の悪化により、100年以内に地球上の成長が限界に達する。」と警告した(写真1)2,3)。 “この「成長の限界」では、「地球と資源の有限性」や「その社会経済的影響」を明らかにすると同時に、将来の世界の状況について起こり得る複数のシナリオをまとめている。再生する速度以上のペースで地球上の資源を人間が消費し続けると仮定したシナリオでは、世界経済の崩壊と急激な人口減少が2030年までに発生する可能性があると推定し、当時の世界各国に衝撃を与えた(図1)”(p34)1)。(2)ブルントラント委員会の報告書「我ら共有の未来」(Our Common Future) 環境と開発のあり方について検討するために、国際連合は1984年に「環境と開発に関する世界委員会」(WCED=World Commission on Environmentand Development)を設置した。この決定は日本の提唱によるものであり、後にノルウェーの首相となったブルントラント女史が委員長となって検討を開始した(そのためブルントラント委員会とも呼ばれている)。この委員会は、21人の世界的な有識者により構成され、日本からは大来佐武郎が参加した。 設置の経緯は、1982年に開催された国連環境計画(UNEP)管理理事会特別会合(ナイロビ会議)において、日本政府が21世紀における地球環境の理想の模索と、その実現に向けた戦略策定を任務とする特別委員会の設置を提案し、これを受けて、国連総会で承認されたものである。 1987 年にまとめられた報告書"Our CommonFuture”(“我ら共有の未来”あるいは“地球の未来を守るために”)注3)では、環境保全と開発の関係について「将来世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズを満たすこと」という「持続可能な開発」(Sustainable Development)の概念を打ち出した。注3)同書の日本語訳は、“地球の未来を守るために”の表題で出版された(写真2)。(3)“持続可能な開発” ブルントラント委員会の報告書で示された概念“持続可能な開発”はその後の地球環境保全のための取り組みの重要な道しるべとなった。この概念が初めて紹介されたのは、1980年に国際自然保護連合(IUCN)注4)、国連環境計画(UNEP)などがとりまとめた「世界保全戦略」注5)であるといわれている。注4)国際自然保護連合:International Union for Conservation ofNature and Natural Resources、IUCN注5)世界保全戦略:World Conservation Strategy、WCS(世界環境保全戦略とも訳されている)。1980 年に国際自然保護連合(IUCN)が国連環境計画(UNEP)の委託により、世界自然基金(WWF)などの協力を得て作成した地球環境保全と自然保護の指針を示すもの。副題は「Living Resource Conser vation for SustainableDevelopment(持続可能な開発のための生物資源の保全)」となっている。さらに、1991年10月にその改訂版「新世界環境保全戦略」が“Caring for the Earth(かけがえのない地球を大切に)”の副題で発表された。 その後、1992年ににリオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議(地球サミット)」の国連地球サミットでは、中心的な考え方として、「環境と開発に関するリオ宣言」や「アジェンダ21」に具体化されるなど、今日の地球環境問題に関する世界的な取り組みに大きな影響を与える理念となった。 1992年には、アジェンダ21などをフォローアップする組織として、国連経済社会理事会のもとに、「持続可能な開発委員会」(Committee on SustainableDevelopment、CSD)が設置された。 日本では、1993年に制定された環境基本法でも、第4条等において、循環型社会の考え方の基礎となっている注6)。注6)環境基本法において、第4条(環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等)では、以下の条文がある。 前回は、「平成25年(2013年)版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」について、特に副題でうたわれた“真に豊かな社会を子供達へ~震災復興の中でともに考える持続可能な未来~”をテーマに関連する話題を紹介した。 今回(2012年度)の環境白書の中で特に国際的な動きで特筆すべきニュースは、「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」の開催であった。同会議は、2012年6月20日~22日に、リオデジャネイロ(ブラジル)で開催されたが、それは国際連合が過去2回開催した環境会議を受けたものであった注1)。注1)「リオ+20」は、1992年にリオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議(地球サミット)」、および2002年にヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(リオ+10、ヨハネスブルグ・サミット)」を受けて開催された。 同会議では、この数年間に議論が高まってきた“グリーン経済”が主要なテーマの一つとなっていた。その会議を反映して、同白書は、“近年、国際社会でも持続可能な社会の実現に取り組む「グリーン経済」をきずこうとする動きが始まっている”として、本文の随所で関係する説明を加えて“リオ+20”、“グリーン経済”、“経済のグリーン化”等のトピックスが多数紹介されている。今回はそれらの情報について、主要な議論については出来るだけ原典にさかのぼって紹介する注2)。注2)同環境白書からの引用は、文言を簡略したものもあり、図表の説明も多くは省略している。原書をぜひ参照して頂きたいので、該当のページを引用句の末尾に付した。<図1>「成長の限界」で予測されたシナリオ1)第138回「2013年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」真に豊かな社会を子供達へ~震災復興の中でともに考える持続可能な未来~■白書の全体構成■子供達に残す遺産(第1 部の“はじめに”) ①日本特有の自然観 ②近代化・経済成長への反省 ③東日本大震災による価値観の見直し ④子供達への遺産 ⑤東日本大震災からの復旧 ⑥子供達を育てる環境教育 ■第1 章の構成■未来を担う子供達を育てる環境教育の取組 (第2章第7節)■真に豊かな社会を子供達へ(第1 部のむすび)※本テーマの連載の前回の目次は以下の通り。資料:「成長の限界」(D.Hメドウズら、1972)1900 2100