ブックタイトルメカトロニクス9月号2013年
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メカトロニクス9月号2013年
MECHATRONICS 2013.9 51 これまで私たちが目指してきた社会は、地球に存在する有限な天然資源を採取し、エネルギーや製品の形にしてこれを消費し、便利な生活を享受しようとするものでした。しかしそれは一方で、地球環境に負荷をかけ続けるものであり、そのような社会のあり方は持続し続けられるものではないことがわかってきました。1970年代の二度のオイル・ショックと軌を一にして、それまでの社会のあり方に対して警鐘を鳴らす動きも出始めました。人々の意識も徐々に変化し、多くの人々が自然環境や生活環境にも目を向けるようになってきました。 実際、例えば1980年代頃には地球温暖化の問題が注目され、温室効果ガスの排出量を抑えるためのさまざまな取組が行われるようになり、構築すべき社会として「低炭素社会」が位置付けられるようになりました。また、自然環境を人類の生存基盤として捉え、その保全と持続可能な利用を確保することにより将来にわたり自然のめぐみを享受できる「自然共生社会」の構築の必要性が世界に浸透しつつあり、その実現に向けた取組が進められています。さらに、地球に存在する資源の効率的な利用を図り、3Rの取組によって物質が健全に循環する「循環型社会」を目指した取組も進められています。 このような地球環境を守る取組の結果、構築される社会はどのような社会でしょうか。低炭素社会・自然共生社会・循環型社会の実現に向けた取組は、結局のところ地球上に存在している生物や物質を含めた自然全体に働きかけるものであり、それぞれの取組が相互に関連しあいながら一つの目指すべき社会を形作っていくと考えることができます。このような低炭素社会・自然共生社会・循環型社会を構築することで実現した持続可能な社会は、いわば「真に豊かな社会」と呼ぶことができるのではないでしょうか。 私たちは、永年にわたって先人たちが残してくれた自然環境の下で文明を育み、経済成長を実現し、現在の社会を築きあげました。私たちも、先人たちと同じように、子供や孫、その先の将来の世代に対し、このような真に豊かな社会を築き上げ、残していく義務があります。そのように考えれば、東日本大震災からの復旧・復興に取り組んでいく際にも、将来の子供達に対して残す社会をこれから構築していく、という視点も必要になってくるのではないでしょうか。 また、私たちが社会を引き継ぐ子供達の世代で、真に豊かな社会が途切れることのないよう、さらにその先の子供達にこの社会を引き継いでもらうことが重要です。そのためには、未来を担う子供達が、地球環境が守られた真に豊かな社会の価値を認識し、自らもその社会の維持のために積極的な行動を行うよう促す環境教育は重要です。一人ひとりが自発的に自らの行動の環境に与える影響を考え、必要に応じて修正していくことが社会全体の持続性にとって重要です。 今、私たちの社会は岐路に立っています。その行き先を決めるのは私たち一人ひとりの考え方と行動にかかっているのではないでしょうか。”(2013.7.16記)<参考資料>1)環境省編:「平成25年版 環境白書・循環型社会 白書・生物多様性白書」日経印刷(株)(2013.6)http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/2)小田切 力:「ものづくり地球環境(第117回) 国連持続可能な開発のための教育の10年 ~その活動経緯と今後の予定~」メカトロニクス,Vol.36,No.12,p50-51(2011年12月号) ・内閣府(2012)「環境問題に関する世論調査」 ・内閣府(2012)「国民生活に関する世論調査」 ・みずほ情報総研(株)(2013)「豊かさの価値観変化に係る意識調査」 その図表の中から一例として、内閣府の「国民生活に関する世論調査」から、「今後の生活において心の豊かさと物の豊かさのどちらを重視するのか」を質問した結果を紹介する(図1、27ページ1))。 人々の意識の変化からも見られるように、私たちは今、これまでのようなライフスタイルや社会経済の構造を見直し、地球環境に負荷をかけない持続可能で真に豊かな社会を築いていけるような新たな生き方を選択すべき時を迎えているのではないだろうか。”③子供達への遺産 “私たちは、先祖から脈々と受け継がれてきた自然環境を基盤にして現在の社会を築き上げてきた。現代を生きる世代として、未来を生きる子供達に負の遺産を残すことがないよう、環境汚染などの問題をできる限り解決するとともに、経済的な豊かさに加えて、自然環境や生活環境の豊かさをも包含する持続可能で真に豊かな社会を築き上げ、未来の子供達に繋いでいかなければならない。”④東日本大震災からの復旧 私たちは今、当面の最重要課題である東日本大震災からの復旧・復興に国を挙げて取り組んでいる。この取組を進める上では、地域の人たちの安全安心を確保し、地域の人たちとともに未来を見据え、自然と共存した持続可能な地域をともに考えて創っていくという視点が重要である。このような視点から、この白書では、原子力災害の影響を受けた地域で安心して生活できる環境を取り戻すための放射性物質の除染等や、震災により発生した膨大な災害廃棄物の迅速な処理に加えて、三陸復興国立公園の創設や地域の再生可能エネルギー資源の活用など、地域の人たちをはじめとした多様な主体の方々とともに持続可能な社会の再構築を目指したグリーン復興の取組を取り上げた。また、本文に関連する特徴的な事例も多数コラムで取り上げている。”⑤子供達を育てる環境教育 “さらに、持続可能で真に豊かな社会を築き上げるために、地球温暖化対策、生物多様性の保全、資源の循環利用などの取組や環境共生型の地域づくりが重要なことはいうまでもないが、未来を担う子供達を育てる環境教育も重要である。政府としては、関係省庁間のみならず、地方公共団体や民間事業者、NGO・NPOなど多様な関係者と連携してこれらの取組を推進していく。”■第1章の構成 第1章は“東日本大震災からの復興の先に目指す豊かな地域社会の実現に向けて”と題し、以下の3つの節からなる。・第1節 放射性物質に汚染された地域の復興に向けた 取組・第2節 災害廃棄物を処理するための取組・第3節 環境保全を織り込んだ復興の取組■第2章の構成第2 章は“真に豊かな社会の実現に向けて”と題し、以下の7つの節からなる。・第1節 一人ひとりの豊かさや環境に対する意識の 変化・第2節 経済社会の変革への動き・第3節 地球温暖化を防止する低炭素社会を目指して・第4節 自然のしくみを基礎とする真に豊かな社会を 目指して・第5節 人間社会と地球の循環システムが調和した 社 会を目指して・第6節 環境共生型の地域づくり・第7節 未来を担う子供達を育てる環境教育の取組■未来を担う子供達を育てる環境教育の取組 (第2章第7節) 第2章第7節では、“未来を担う子供達を育てる環境教育の取組”として、以下のようにESDを取り上げている。 “2002年のヨハネスブルグサミットでの我が国の提案をきっかけに、2005 年(平成17 年)からの10 年は、国連「持続可能な開発のための教育の10年」とされた注4)。現在、持続可能な開発のための教育、いわゆるESD(Education for SustainableDevelopment)に、世界中が取り組んでいる。私たち一人ひとりが、世界の人々や将来世代、また環境との関係性の中で生きていることを認識し、行動を変革することが必要であり、そのための教育がESDである。ESDでは、環境分野だけでなく、貧困、人権などさまざまな問題を扱っている(図2)2)。 2012年に開催されたリオ+20においても、ESDを一層推進していくことなどが合意された。環境教育の分野では、2011年に改正法として成立した「環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律」及び同法に基づく基本方針において、学校教育における環境教育の充実や、さまざまな主体が適切な役割分担の下で相互に協力して行う協働取組の重要性などが明記され、現在、国内各地でこれらに基づく取組が行われている。また、海外においても国連大学が中心となって、世界各地でのESDに関する地域拠点(RCE: Regional Centre of Expertise on ESD)の整備等を推進している。”注4)2005年1月からの10年間を「国連持続可能な開発のための教育の10年」とし、ユネスコにその国際実施計画を作成するよう要請し、各国政府がその実施のための措置を国内の教育戦略及び行動計画に盛り込むよう呼びかけた第57回国連総会決議に基づく取組。2005年9月にユネスコ執行委員会において国際実施計画が承認され、日本では、同年12月、関係省庁連絡会議を内閣官房の下に設置し、各方面から寄せられた意見等にも十分に配慮しつつ検討を進め、2006年3月、関係省庁連絡会議において、わが国における「国連持続可能な開発のための教育の10年」実施計画を定めた。■真に豊かな社会を子供達へ(第1部のむすび) 第1部の「むすび」として、「真に豊かな社会を子供達へ~震災復興の中でともに考える持続可能な未来~」と副題を付した一文が加えられている。以下にその全文を紹介する。 “東日本大震災が発生してから、本年6月で2年3ヶ月が経過しました。我が国観測史上最大の地震と津波は、私たちが長い時間をかけて築いてきた地域の社会基盤を一瞬にして崩壊させ、多くの尊い人命を奪いました。また、東京電力福島第一原子力発電所の事故は、大量の放射性物質を自然界に拡散させ、多くの人々がいまだに避難を余儀なくされています。 少しでも早くこのような状況から脱し、安心して生活できる環境を取り戻すことが、今を生きる私たちの喫緊の課題です。私たちは全力で震災からの復旧・復興に取り組まなければなりませんが、その結果作り上げられる社会は、かつて存在したそれと全く同一のも<図2>ESDの考え方のなのでしょうか。