ブックタイトルメカトロニクス9月号2013年
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メカトロニクス9月号2013年
MECHATRONICS 2013.9 493.外歯歯車対3.1 噛合い圧力角 一対の外歯歯車がかみ合っている状態を図3.1に示す。 図において、両歯車の歯数z1, z2と転位係数x1, x2が与えられると、これによって心間距離aを求めることになる。図の場合には、歯と歯の間に??間が無くなるような値に選ばれている。 両歯車の基礎円半径は歯数が決まれば決まるので、両基礎円に接する直線として作用線が定まる。両歯車の歯面が接する点(噛合い点)はこの作用線上を移動し、作用線が中心線を切る点が噛合いピッチ点である。作用線は両歯面のインボリュート曲線の共通法線となっており、両歯車の押し合う力はこの方向にはたらく。 中心線に直交する方向と作用線の方向とのなす角を噛合い圧力角といい、αbで表わす。噛合い圧力角の値は心間距離の値によって変化する。 外歯歯車対の場合、噛合いピッチ点は心間距離を歯数比によって内分する点である。両歯車のそれぞれの中心から噛合いピッチ点までの距離を噛合いピッチ円半径といい、それぞれ、rp1 およびrp2で表わす。 以上の関係を式(3.1)に示す。ただし、式中rb1、rb2は基礎円半径、αcは工具圧力角(=20 °)である。 (3.1)3.2 速比 通常歯車は減速装置として使われることが多く、出力軸回転数の入力軸回転数に対する比を減速比という。減速比は1/u の形で表現されることが多いが、uで示されることもある。1/30と30では900 倍も値に違いがあるが、ここでは不問にしよう。要は自分が何を求めようとしているのかが分っていればいい話である。 歯車対の速比を1/uで表わすことにする。減速であるか増速であるかを問わない。歯車z1を原動節、歯車z2を従動節とする。両歯車の回転角速度をそれぞれ、ω1=dθ1/dt、および、ω2=dθ2/dtとすると、 (3.2)となる。ここで、ω1,ω2は回転が正方向(反時計回り)であるか、負方向(時計回り)であるかによって正、負の符号をもつので、uまたは1/uも正、または負の値をもつ。 この関係を図3.1(b)で調べてみよう。図において、歯車z1が正方向(反時計回り)に回転するとき、噛合いピッチ点Opは左方にv=ω1rp1 の速度をもつ。z1 歯車の半径rの点はそれぞれvr=ω1rの速度をもつ。ピッチ点の速度は両歯車において等しいので、これを歯車z2 の中心O2から見ると、歯車z2 は-ω2= v/rp2の角速度をもつ。ここで、ω2にマイナスの符号が付いているのは、この回転が負方向(時計回り)だからである。時計回りの回転では角速度ω2はマイナスであるが、vやrp2は正の値を取るのが習わしなので、式にはマイナスが必要である。したがって、外歯歯車対の速比は負となる。これを式(3.3)に示す。 (3.3) 速比として絶対値z1/z2を取る場合には、「速比はz1/z2であり、回転方向は逆転する」と表現すれば良いであろう。 速比は両歯車の歯数のみによって決定される。心間距離にも、転位係数にもよらない。3.3 背?? 歯車にトルク(torque、回転モーメント)が掛かっている状態を考える。1枚の歯の前面が相手の歯を押している時、その歯の背面と相手の次の歯との間にできる??間をバックラッシュ(backlash、背??)という。背??があると、歯車の回転が逆転したとき、相手の歯は背??をキャンセルしてから動き始めることになるので、その分だけ動作遅れが出る。サーボ機構に用いる歯車などでは回転方向がたびたび変わるので、ノン・バックラッシュ(non-backlash、無背??)にしなければならない。 双方の歯車の歯数と転位係数が決まると、これに対応した無背??の心間距離を計算で求めることができる。この状態で歯車を回転させることは、歯車の精度が良くなければできないが、近年の加工技術の進歩によって、それは可能になったと考える。 無背??の状態から、さらに心間距離を縮めることは、幾何学的にはできない。しかし、実際の装置では、歯の撓み変形や、軸受の??間や変形によって、僅かな量であれば許容できると考えられる。心間距離を詰めることによって背??をゼロにすることを予圧(preload)を掛けるといっている。必ずしも圧力を加えなくても、背??を寸法的にゼロにすれば良い。 背??をなくすことによって、背面が常にこする状態になるので、効率は悪くなると考えられる。インボリュート歯車の設計牧野オートメーション研究所長 山梨大学名誉教授 牧野 洋第5回図3.1 外歯歯車対(a)噛合い状態(b)速比